コロナ禍で急増!児童虐待を防止するには ~児童養護施設 かずさの里訪問~

何らかの事情により親と一緒に暮らせない子どもたちを養護する児童養護施設。全国に600以上の施設がある。その中のひとつ、ミッドナイトミッションのぞみ会(千葉県富津市)が運営する望みの門かずさの里を訪ねた。施設長の戸波宏幸さん、児童指導員で日本基督教団木更津教会の信徒、滝瀬茂さんに話を聞いた。

子どもたち、職員らが親しみを込めて「さと」と呼ぶ児童養護施設望みの門かずさの里。運営母体であるミッドナイトミッションのぞみ会の社会福祉施設が並ぶ富津市の小高い丘の一角に「さと」はあった。以前、学校だったというその施設は、広大な土地に遊具のある園庭、体育館、居住棟は「マルコ」「パウロ」など聖書から名付けられた部屋がいくつかある。別棟にはログハウスが2棟。ここでは、幼い子どもから高校生までが家族のように一つ屋根の下で暮らしている。

子どもたちが暮らすログハウス

「今まで大変だったな。いろいろあったと思う。私たちは、君のお母さんやお父さんの代わりにはなれない。でも、お母さんやお父さんが君に対してするはずだったことを精一杯やっていこうと思うから、一緒にがんばろうな」
戸波さんは一時保護を経て、ここにたどり着く子どもたちにこう声をかけるのだという。知らない土地にたどり着き、不安げな表情を浮かべる幼い子ども達でも、「ママー!!」と泣き叫ぶ子は一人もいない。それが、この子たちの短くも過酷だったそれまでの人生を物語っている。
「さと」に住む子ども達は、現在32名。定員は35名だが、最近では発達や知的障がいのある子どもも多く、「手がかかる」のではなく、あえて「手をかける」ために満員まで子どもたちを入れていないのだという。
最近の特徴として、傷あざのない虐待、いわゆるネグレクト(育児放棄)をされている子ども達が目立ってきている。それに加え、性的虐待も少なくない。そうした子ども達を最長で18歳まで受け入れ、まずは人間性の回復をはかり、他人とコミュニケーションを練習して、最終的には社会へと送り出すことが児童養護施設の役割だ。
「少子高齢化の時代になぜ、虐待が起きるのか。核家族の問題、スマホなどによる人とのコミュニケーション手段の大幅な変化などさまざまな社会の歪みの代償を子ども達が負っているような気がします」と戸波さんはいう。
特に今年はコロナ禍もあり、虐待相談件数も急増した。失業、社会生活の中断などにより精神疾患が悪化する親も多い中、家庭内で虐待が起きてしまうという悪循環が起きているのだ。
しかし、児童福祉には「待った!」も「一時休止」もなく動き続けている。
「私たちの仕事は、子ども達の前に立って旗振りをすることではない。すぐ後ろにいて、倒れそうになったときに支えてあげることだと思う。以前、卒業生の結婚式に父親代わりに出席したことがあった。『なぜ、自分のお父さんが戸波さんじゃなかったんだろう』と言われたときは、嬉しさもあったが何とも言えない切なさも感じた」と話す。
成人した卒業生は、時折「さと」に帰ってきては、職員とお酒を酌み交わすこともあるのだという。卒業をしても、まさにここが「さと」なのだ。

かずさの里のシンボルとも言える十字架のある建物

東京神学大学出身で、児童指導員の滝瀬茂さんは8年前に入職した。毎週おこなわれる礼拝は、牧師と隔週で説教を担当。聖書の言葉を解いたり、お誕生日会などでも話をすることがあるのだという。心に大きな傷を負った子どもたちにキリストを伝える難しさをこのように語っている。
「まさか、児童福祉施設で聖書の言葉を語る者になるとは、想像もしていませんでした。しかし、この子達にこそキリストが必要なのだと感じています。この世に生を受け、家庭で健康に育つはずの子が、犯罪を犯したわけでもないのに、いきなり集団生活をすることになったという事実は子ども達にとって、どこか『自分が悪いことをしたから』と考える側面があるようです。そこで、私が『私たちは、神の目から見た罪人である』という言葉を語ったときに、彼らには受け入れられないのでしょう。それも当然だと思います。一方で神様の愛と救いを語るのも、親の愛を知らない子ども達には信じがたく、伝えるのが難しいと感じています。しかし、私の想像をはるかに超えた計画が神様にはあったことを思い、日々、祈りつつ働いています」
厚生省のまとめによると、親に虐待を受けたとされ、全国の児童相談所が対応した件数は今年1月からの半年間で約9万8千件以上で過去最悪のペースとなっている。
「虐待をなくすには、家庭だけではなく、社会全体の育児参画が必要」と戸波さんは話す。コロナ禍の影で苦しむ子ども達の叫び声がかき消されないよう祈りとともに注視が必要だ。

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