神さまが共におられる神秘(16)稲川圭三

個人的で濃密な関わりで「開け」と言われる

2015年9月6日 年間第23主日
(典礼歴B年に合わせ3年前の説教の再録)
イエスはその人に向かって「エッファタ」と言われた。
マルコ7章31~37節

説 教

イエスさまは「耳が聞こえず舌の回らない人」に向かって、きわめて個人的で濃密な関わりを示しておられます。

人々がその人を連れてくると、イエスさまはその人だけを群衆の中から連れ出します。そして、指をその両耳に差し入れ、手に唾(つば)をつけ、天を仰いで深く息をつき、その人に向かって「エッファタ」と言われました。

今日の福音を通して私たちが知るのは、神さまはそのように一人ひとりに個人的に関わり、そのような濃密な交わりを持ってくださるお方だということです。

「あの時に私に関わってくださったあの出来事は、確かに個人的なことだった」と思い起こされる方も大勢おられると思います。「あの時にそこで働いてくださったのはあなたでしたか」。そのように気づくことを通して、私たちは神さまとの関係をまた新たに深めさせていただくように思います。

実際、神さまは私たち一人ひとりを愛しておられます。それは、「何となく人間全体を愛している」などというものではなく、私たち一人ひとりをそういう愛し方で愛しておられるのです。

今日、イエスさまが福音書の中でなさっているようなことを、私たちにいつもされているのですが、そのことに私たちが気づいていないのです。「ああ、あの時のあのことはそういうことだったのか」と気づき、「そうだったのでしょうか」と問いかけていくならば、その出来事の意味が深まってきます。

イエスさまは「深く息をつき」とあります(34節)。ギリシア語では「ステナゾー」という単語で、聖書のほかの箇所では「うめく」と訳されています。

有名なのは次の箇所です。「わたしたちはどう祈るべきかを知りませんが、“霊”自らが、言葉に表せないうめきをもって執り成してくださる」(ローマ8:26)

私たちは何をどう祈っていいか、何が本当に自分に必要なのかさえ知らないのです。そして、苦しんだり、もがいたりしています。しかし、イエスの霊ご自身が私たちと一緒に生きて、私たちの苦しみと悩みやうめきを、一緒にうめいてくださるのです。

イエスさまは、私たちと一緒にうめいて、一緒に沈んでしまうようなお方ではありません。一緒にうめきながら、同時にご自分の内に父なる神さまのいのちがあって、共に生きておられる真実を私たちに執り成してくださるのです。

どんな苦しみにあっても、決して変わることのない「神さまが共にいてくださる」真実があります。その真実に向かって私たちが開かれるように、私たちに向かって「エッファタ」と言われるのです。「開け」と言われ、神さまが一緒にいてくださる真実に私たちが深く結ばれるようにと関わってくださるお方なのです。

イエスさまが開いて出会わせたかった真実とは、「神さまが共におられる」ということです。神さまは、ご自分だけでなく、すべての人に共におられるのです。その真実に私たちを出会わせるために、イエスさまは今日も私たち一人ひとりに、きわめて個人的で濃密な関わりをもって働きかけておられるお方なのです。

イエスさまは今日、私たちの耳に指を入れ、唾をつけて舌に触れておられるでしょうか。いいえ、それ以上の関わりで私たちに関わってくださっています。聖体拝領という交わりを通して、ご自分の体を私たちに食べさせるという、決定的に濃密な交わりに私たちを招いておられるのです。

私は思います。「キリストの体」と言って神父がご聖体のパンを差し出す時、本当はイエスさまご自身が「これは私の体」と言ってパンを差し出しておられるのです。そして、イエスさまはおっしゃっているのではないでしょうか。「これは私の体。これを食べて、私はあなたになる。あなたは私になる。そういう交わりに入るけれど、いいか」。それに「アーメン」と答えて食べるのが、キリストの聖体拝領です。

英語では「コムニオン」といいます。ラテン語では「コンムニオ」といいます。「一致」「交わり」という意味です。これ以上の「交わり」があるでしょうか。

その神さまからの真実を、私たちはいろいろ理由をつけて、第1番にしない。「まあ、理屈ではそうだけど」と言って2番や3番にしているのではないかと思うのです。私たちの理屈や人間的な知恵が「共にいてくださる神さまの真実」を覆いふさいでしまってはならない。だからイエスさまは、「エッファタ」「開け」と言われたのです。

私たちは今日、「エッファタ」と言っていただく必要がないでしょうか。もし開いていただく必要があることに気づいたなら、今日、心の中でイエスさまに、「私にも『エッファタ』と言ってください」とお願いしましょう。そうすれば、想像を超える親密さで私たちに働きかけてくださるはずです。

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