【日本YWCA】 沖縄から遠い場所にいるキミに 今、知ってほしいこと 金井 創(日本基督教団佐敷教会牧師)

本土に住む多くの人は「沖縄が好き」といいます。だけど、基地のことには目を逸らしていたい。そんな人も少なくないようです。6月23日「沖縄慰霊の日」を覚えて、本土の人々にこのメッセージをお届けします。まだ知らない沖縄を見つめてもらえたら。

数字を見ても実感しにくいけれど

最近知った興味深い数字があります。それは「基地密度」というものです。沖縄に米軍基地が集中していることはさまざまな数字で示されてきました。最もよく使われるのは、国土面積が日本全体の0.6%しかない沖縄に日本全国の米軍専用施設(米軍基地)の70%が集中している、という数字でしょう。これを見てひどいと思うか、ピンとこない実感がわかないなど、受け止め方はさまざまだと思います。数字を実感に結びつけるには自分の目で確かめるか、想像力をいっぱいに働かせることが必要になります。「基地密度」はこの70%という数字以上に実感に近づくことのできる数字だと思います。

「基地密度」は本土の400倍!

沖縄の基地負担が過重であることを示すために、同じ面積の上にどれだけの基地があるかを示すのが「基地密度」です。

日本の国土面積と沖縄の面積を比べ、沖縄の米軍専用施設と一時使用施設を合わせると沖縄の基地密度は県外の39倍になります。米軍専用施設だけで計算すると389倍。それぞれ切りのいい数字で約40倍、400倍とおおまかに考えてもいいと思います。どうでしょうか? この数字にどんなことを考えるでしょうか。沖縄の米軍基地密度は内地(本土)の400倍。このように覚えてください。

市街地の真ん中にある普天間基地

ですから沖縄では米軍が訓練をすれば、それはただちに人が住む環境に影響を及ぼします。その米軍訓練は特にこの1~2年激しさを増しています。宜野湾市の真ん中にある普天間基地ではヘリコプター、オスプレイだけでなく大型ジェット機、戦闘機の離着陸訓練もひんぱんになされ、激しい爆音をまき散らしています。私が暮らす南城市は軍用機が滅多に飛ばない地域でした。かつては年に数回程度でしたが、今では週に何度も飛んできます。日中だけではなく夜もです。

豊かな森を壊して青い海を埋め立て

このように米軍基地があるゆえに、日常的に生活が脅かされているうえに、2014年からは北部東海岸に位置する辺野古の海を埋め立てて新たな基地建設が進んでいます。沖縄の自然の豊かさは、そこに生きる多くの命の生物多様性にあります。たとえば北部の森は生物多様性において本土の50倍、海は60倍です。これほどの多様な生き物が本土と比べるととても小さな地域に生息しているのです。

その一部を破壊したり、汚染したりすると全体に大きな悪影響を及ぼしてしまいます。埋め立ては、そこに生きる命を土砂で覆ってしまう「命の生き埋め」です。それが沖縄でいま進められていることです。しかも県民投票で7割の反対があったにもかかわらず、工事は止まりません。

潮が引いた辺野古の海岸

米軍の水陸両用装甲車が爆走

今も土中に眠る沖縄戦犠牲者の遺骨

埋め立て用の土砂は現在、北部の鉱山から採取していますが、これが沖縄全域に広げられようとしています。胸が痛むのは採取地域に南部も含まれていることです。かつて沖縄戦では住民を巻き込んだ地上戦によって多くの命が犠牲になりました。その数は20万人を超えています。当時の沖縄県民の4人に1人が亡くなったという悲劇です。沖縄では身内、親族に沖縄戦犠牲者がいない人はないというくらいに悲惨な戦争でした。

その犠牲者が最も集中しているのが南部です。今なお遺骨が発掘されるのです。それは住民だけではありません。日本兵として全国から集められた若者たち、敵として闘った米軍兵士たち、こうした多くの人々の遺骨が今なお土中に眠っているのが南部です。

政府はこの南部からも基地建設の埋め立て用土砂を採取する計画です。特に南部の糸満市の土砂採取候補地は政府が保護し、沖縄県が管理する沖縄戦跡国定公園内に位置し、土砂が採取された場合、戦没者の遺骨がうずもれた土台の上に新基地を建設することになります。政府がするべきことはこの地を慰霊追悼の場として保全し、丁寧に遺骨を収集し戦争の悲惨さを伝えていく場にすることです。

政治的な問題でなく命の問題なのです

私はこの基地建設に反対し、現場で抗議する活動に取り組んできました。特に船長として海上での行動を続けてきました。豊かな自然を破壊して作られるものは、これまた命を奪う軍事基地です。米軍は沖縄の基地からベトナムへ、アフガニスタンへ、中東へ出撃してきました。

そして今また戦争の道具である新たな基地が作られようとしています。このことに無関心、無言でいることは「賛成」を意味します。私にとって基地建設に反対することは政治の問題ではありません。命の問題です。誰も死んでほしくない。誰も殺してほしくない。誰も殺されてほしくない。だから戦争につながるものに反対するのです。

雲の下では沖縄独特の降雨が多様な命を育む

かない・はじめ 1954年、北海道生まれ。早稲田大学卒業、東京神学大学大学院修士課程修了。日本キリスト教団富士見町教会副牧師、明治学院チャプレンを経て、2006年より現職。抗議船を自ら繰り、辺野古新基地建設抗議の海上行動を続けている。著書に『沖縄・辺野古の抗議船「不屈」からの便り』(みなも書房)など。

写真:金井 創
出典:公益財団法人日本YWCA機関紙6月号より転載
https://www.ywca.or.jp/pdf/2021/ywca_762.pdf


YWCAは、キリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を越えて力を合わせ、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界を実現する国際NGOです。

 






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