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日本カトリック映画賞 「ぼけますから、よろしくお願いします。」の信友直子監督 娘が撮った老老介護の日々

 

第43回日本カトリック映画賞(シグニス・ジャパン〔カトリックメディア協議会〕主催)の授賞式・上映会が6月22日、なかのZERO大ホール(東京都中野区)で開かれた。今回受賞したのは信友直子(のぶとも・なおこ)監督(ドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」)。会場には約1000人が集まった。

授賞式での信友直子監督=6月22日、なかのZERO大ホール(東京都中野区)で

「ぼけますから、よろしくお願いします。」は、広島県呉市で暮らす認知症の87歳の母と、耳の遠い95歳の父の「老老介護」の日々を、娘であるテレビ・ディレクターの信友監督が1200日間にわたり撮影・編集したドキュメンタリー映画。2016年、フジテレビ「Mr.サンデー」で放映されて大反響を呼び、その後、追加取材と再編集を行った劇場版が、全国のミニシアター系の劇場で拡大公開された。

受賞式には、シグニス・ジャパンの土屋至(つちや・いたる)会長、顧問司祭の晴佐久昌英(はれさく・まさひで)神父、顧問司教の菊地功(きくち・いさお)東京大司教区大司教、そして信友監督が登壇した。

🄫「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

晴佐久神父は言う。「自分の弱いところを隠して、競い合っているような世の中で、『こんな私ですけれども、よろしくお願いします』と互いに言い合えることの素晴らしさに改めて気づかせてくれました」

菊地大司教もこう称賛する。「厳しい状況の中で父母の愛情が深まり、それがまた家族の絆(きずな)となっていくことに魅了され、惹(ひ)きつけられました。見終わって信仰が深められる思いがします」

土屋会長から表彰を受けた信友監督も、次のように喜びを語った。「この映画は父母と私の共同作品。今日は多くの人に足を運んでもらい、こんなに素敵な賞をいただき、とても光栄です」

上映後に行われた対談。晴佐久昌英神父(左)と信友直子監督

授賞式後、信友監督と晴佐久神父との対談が行われた。まず、ユーモアあふれる題名について信友監督は、「映画の中で母親が言った言葉をそのまま使った」と明かした上で、次のように話した。

「そこには、もともと自虐ネタで人を和(なご)ます母らしさと、『本当は本人がいちばんつらいことを自覚している』という認知症の本質が現れていると思っています」

また、いつも穏やかだった父親が母に対して激怒するシーンを使っていいものか、最後まで悩んだという。

「編集していて気づいたのは、父は感情的に怒っているのではなく、母のことをちゃんと叱(しか)っているということでした。『もう認知症になったのだから』と何もかも諦(あきら)めるのではなくて、ちゃんと母に人として向き合って、『悪いことは悪い』と叱っている父はすごいと思ったんですね。ここは絶対に必要なシーンだと思いました」

🄫「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

認知症になった母は、誰にはばかることなく父に甘え、そんな母をまんざらでもないというふうに受け止める父。「まるで恋人同士のような二人を見て、改めて父母の絆の深さが分かりました。これは認知症にならなければ分からなかったことで、認知症は悪いことばかりではありません」と信友監督は力を込めた。

「好きな道を進めなかった父の気持ちを私は受け継いでいる」という信友監督に、晴佐久神父は自分の姿を重ね合わせてこう話す。「すでに亡くなっている自分の父母が生きていたら、どういうふうだったろうと思い、切ない気持ちで映画を見ていました。父も、私が神父になると打ち明けたとき、『自分は好きなことができない人生だったが、お前は好きな道へ行け』と言って、おいおい泣いていました。父がいちばん弱さを見せた時の気持ちを私は継いでいると思っています」

「自分の好きなことをさせるというのが唯一の教育方針でした」と話す信友監督。母親が認知症になった時も、その教育方針の延長で、「東京から帰ってきたりしないで、お前は好きなことをやりなさい」と言ってくれていたと思っているという。その一方で、「今も父の思いを引き継いでここにいますが、そうは言っても、近くで世話をすることが親孝行ではないかと、すごく気持ちは揺らいでいます」と複雑な胸の内をのぞかせた。

これを聞いて晴佐久神父は、「親のいろいろな犠牲の上に私たちがいて、今度は私たちが犠牲になるという大きな流れがこの映画にはあると思います」と述べた。

🄫「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

最後に今後の作品の予定を尋ねられ、信友監督は近況を語った。

「映画公開は昨年の11月だったのですが、その1カ月前に母が脳梗塞になって、現在も入院しています。父は98歳になって一人暮らしをしているので、この頃はこまめに呉に帰るようにしています。親には本当に世話になっているので、今は娘として、父と母をちゃんと見てあげることが使命だと思っています。ですから、次に何をやるかは決めていません。ただ、この映画の書籍化を進めていて、今年中には本になると思います」

シスターの娘に教えられて来たという女性(80代)は、「身につまされる思いでしたが、監督が父母の姿をありのままに撮った強さに感心し、感動しました」と感想を語った。

日本カトリック映画賞は、前々年の12月から前年の11月までに公開された日本映画の中で、カトリックの精神に合致する普遍的なテーマを描いた優秀な映画の監督に毎年贈られるもので、今回で43回目となる。昨年は「ブランカとギター弾き」(長谷井宏紀監督)、一昨年は「この世界の片隅に」(片渕須直監督)が受賞した。

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