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【宗教リテラシー向上委員会】 クリスティングル 英国のクリスマス 與賀田光嗣 2020年12月1日

キリスト新聞社ホームページ

英国ではサマータイムが終わり、冬が近づいてきた。冬の長いこの国では、冬至近くのクリスマスと春分近くのイースターが待ち遠しくなる。それほどまでに世界が曇天に覆われ、花々の香りは失われ、夜の闇が長くなるのだ。加えてCovid-19が英国で猛威を振るっており、現在2度目のナショナルロックダウン中である。

Covid-19対策の政府発表を聞いて興味深いのは、必ず宗教行為(礼拝、葬式、結婚式など)について触れられることだ。教会やモスクの閉鎖、あるいは開くのならばどういった対応をするべきか、葬儀や結婚式の人数制限など、宗教が身近な国だからこその政府方針である。

今回のロックダウンに関して、ボリス・ジョンソン首相は「クリスマスにまた会えるように」と告げた。本心なのか英国流のタチの悪い皮肉なのか、耳を疑った。というのも今から100年ほど前、第一次世界大戦に出征した多くの英国人兵士たちは「この戦争はすぐに終結する。クリスマスにまた家族と会おう」と言って帰らぬ人となったからだ。

いずれにせよ、100年前も現在もクリスマスは英国人にとって重要であることは変わらない。教会やテレビ中継を通して礼拝に参加したり(24日から25日にかけての深夜ミサがBBCで毎年中継される)、家族や友人とゆったりとした時間を過ごしたり、クリスマスツリーの根元に置いたプレゼントの数々を開封する特別な日がクリスマスだ。

しかしながら、今年のクリスマスは例年のようにはいかないだろう。感染状況によってはロックダウンが延長されうる。そうでなくとも屋内の集会には人数制限はかかる。教会はクリスマスに聖堂を開くのだろうか。

そう思っていたところに、私の子どもが通う小学校からメールが届いた。そのメールは村の教会からのクリスマスの知らせだった。今年の礼拝や降誕劇はネット配信で行う。希望者にはクリスティングル(Christingle)の材料を自宅まで届け、クリスマスを待ち望もうとのことだった。

クリスティングルとは、1968年以来、英国のクリスマスの風物詩となったものである。降臨節(待降節)に作成し、クリスティングルの礼拝が教会や学校で行われる。その献金は困窮した子どもたちへの寄付として使われる。もともとは1747年のドイツで、モラヴィア兄弟団の司牧者から始まった伝統だ。ドイツ語でChristkindl、幼子キリストを意味する。

クリスティングルは次のように作る。オレンジの真ん中にロウソクを、またロウソクの周囲にお菓子をつけた爪楊枝を4本刺す。オレンジの周囲を赤いテープで巻いて完成する。

オレンジはこの世界を、4本の爪楊枝は東西南北と四季とその恵みを意味する。ロウソクはイエス・キリストの光であり、赤いテープは主の御血と愛を示す。クリスティングルは暗闇にある私たちを照らす神の光であり、希望の光の象徴なのだ。

世の光を願うクリスティングルは、芳醇なオレンジの香りと共に、人々の手のひらにクリスマスの出来事と十字架と復活の神秘を想起させる。主は貧しく寂しいところに幼子として来られた。この世の苦しむ人々と共に洗礼の列に並ばれた。十字架を通して人間の痛みや絶望を人間よりも深く知っておられる主は、私たちを復活の光にいざなう。

その光は深い闇の中にて、キリストの香りと共に私たちを照らし暖める。閉ざされた聖堂から、ともし火がパンデミック(すべての人々)の世界に広がることだろう。降臨節(待降節)の間、クリスティングルを見つめながらクリスマスを待ち望みたい。

與賀田光嗣(立教英国学院チャプレン)
よかた・こうし 1980年北海道生まれ。関西学院大学神学部、ウイリアムス神学館卒業。2010年司祭按手。神戸聖ミカエル教会、高知聖パウロ教会を経て現職。妻と1男1女の4人家族。

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