【夕暮れに、なお光あり】 飼い葉桶の救い主 渡辺正男 2020年12月25日

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国分寺教会の牧師の時、近くの府中にある関東医療少年院をよく訪ねました。毎年12月には、クリスマス会をしたのものです。

ある年のクリスマス会で、「みんなで行こうベツレヘム」という小さな絵本を紹介しました。ベツレヘムの馬小屋で救い主が生まれたと聞いて、3人の羊飼いがお祝いにやってくる絵本です。子どもを病気で亡くしたおじさん羊飼いが、「馬小屋で生まれるなんてかわいそうだ。亡くなった子どもの暖かい服を持って行ってあげよう」と語る場面があります。

私は、「みなさんは、馬小屋で生まれ、飼い葉桶に寝かされた赤ちゃんをどう思いますか。なにかやさしい気持ちになりますね。そのやさしい思いを大切にしましょう」と、クリスマスの話をしました。

何日かして、少年院の皆さんが、感想文を書いて送ってくれました。こういう感想文がありました。「まわりから見ると、オレがやさしい心なんていうと、ふざけるな、と思うかもしれない。でも、俺にもやさしい心はある。俺の中にあるやさしい心も、悲しい心も、誰も知らない。イエスさまだけは、分かってくれそうな気がする。今日のクリスマス会、よかったよ」――そう書かれていました。

彼は、心の痛みを知っているがゆえに、飼い葉桶の乳飲み子がどんな救い主なのか深く見抜いている、と言えないでしょうか。

歳を重ねた私たちにとって、馬小屋の主イエスはどんな救い主でしょう。クリスマスの季節になると、来し方行く末に思いをめぐらすことが多くなります。先日、新聞の歌壇に、「間違った 電車に乗って 降りられず そんな人生 まだまだ続く」の短歌が目に留まり、ドキッとしました。そんな心許無い者をも、飼い葉桶の主イエスは、分かってくれるのでしょうか。悔いの思いも温かく分かってくれるのでしょうか。

クリスマスには、少年院の若者のように、「オレの中にあるやさしい心も、悲しい心も、誰も知らない。イエスさまだけは、分かってくれそうな気がする」と、そっと自分に言い聞かせたい――そう思うのです。

 「今日ダビデの町に、あなたがたのために救い主がお生まれになった」(ルカによる福音書2:11)

わたなべ・まさお 1937年甲府市生まれ。国際基督教大学中退。農村伝道神学校、南インド合同神学大学卒業。プリンストン神学校修了。農村伝道神学校教師、日本基督教団玉川教会函館教会、国分寺教会、青森戸山教会、南房教会の牧師を経て、2009年引退。以来、ハンセン病療養所多磨全生園の秋津教会と引退牧師夫妻のホーム「にじのいえ信愛荘」の礼拝説教を定期的に担当している。著書に『新たな旅立ちに向かう』『祈り――こころを高くあげよう』(いずれも日本キリスト教団出版局)、『老いて聖書に聴く』(キリスト新聞社)、『旅装を整える――渡辺正男説教集』(私家版)ほか。

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