新松戸教会 エアコン火災 8年にわたる法廷闘争に終止符 大企業相手に奇跡の勝訴 2021年1月11日

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「霊的な戦い」でもあった裁判
〝教会がしなければ誰がやるのか〟に奮起

2012年10月にエアコンの室外機が原因で起きた火災を巡る裁判は、2020年12月1日、最高裁判所が製造元であるダイキン工業株式会社の上告を棄却。ダイキン工業の過失と、火災が起きた日本基督教団新松戸教会(千葉県松戸市)の訴えが認められた。

「本当に長かった。8年かかりました。少年ダビデが巨人ゴリアトに立ち向かっていくような戦いでした」

同教会の津村一志牧師=写真左端=は言う。多くの人々の献金によって、新会堂が献堂されたのは2011年1月のこと。西(イスラエル)向きの会堂は、明るく心地よい空間だ。2階には一志牧師夫妻と2人の子どもが住んでいる。出火したのは、その2階のベランダにあるエアコンの室外機からだった。

火災が起きたのは10月9日深夜。日中は秋季修養会が行われ、教会は多くの信徒たちでごった返していた。充実した1日を振り返り、一志牧師は布団に入った途端に熟睡したという。火災に気づいたのは、室外機から一番近い部屋で寝ていた、当時高校1年生の長男だった。

「火事だ! 火事!!」

切羽詰まった長男の声に飛び起きた妻は、彼に導かれるままリビングに足を踏み入れた。一目見た途端、部屋に引き返し、長女を起こして避難させるとリビングからトイレ、階下の洗面所を往復して消火を始めた。遅れて目覚めた一志牧師は、火の手とは反対にある窓からホースを中に入れてもらい、リビングからベランダに向かっての消火を始めた。隣に住んでいる父・友昭牧師=写真中央=も消火器を持って消火活動に加わり、出ているようにと説き伏せられた長男は外からの消火を試みた。

見る見るうちに火は燃え広がった。真っ黒い煙で前が見えなくなった。友昭牧師や妻が先に避難する中、最後まで必死の消火にあたった一志牧師だったが、身の危険を感じ避難せざるを得なかった。牧師館のあった2階はほぼ全焼、約73平方メートルを損傷した。避難して数分後、火の勢いが一層増しているのを見て、「あと2分、判断が遅かったら、一家全員死んでいたかもしれない」と思ったという。

一志牧師一家と友昭牧師は、その後、救急搬送された。一志牧師は熱を帯びた煙を多量に吸ったため、気道を損傷。ICUに数日間入院し、生死をさまよったという。しかし、その後、奇跡的な回復を見せ、医師が止めるのを振り切って退院した。一志牧師夫妻や友昭牧師も、そして最初に火を確認した長男も、火災がベランダにある室外機周辺=写真下=であることは目視していた。消火した後の焦げ跡を見ても、室外機周辺が一番激しく燃えたことは一目瞭然だった。それにもかかわらず、当初、消防と警察は「原因不明の火災」とした。

「室外機の辺りの焦げ方が、何よりの証拠。それなのに、なかなかそれが認められない。ここからが私たちの苦悩の始まりでした」と一志牧師。火災後に、「この教会は呪われている」と言って教会を離れてしまう信徒もいた。しかし、皆は真理を求め、必死に祈った。すると自然と心に平安が与えられたという。

また、水損した会堂での礼拝は、一度も休むことなく守られ続けた。さらに、この火災の半年後に、当時小学6年生だった長女が受洗をした。火災で多くの物を失ったが、本当に大切なものは神様に守られて、何一つ失っていないことに気づいたからだという。次第に「これは災いではない。神様の特別な計画だ」との確信に変わっていった。しかし、この火災の原因を追究しなければならない。2014年、弁護士を通してダイキン工業と話し合いの場を持とうと打診をしたが応じてもらえず、やむなく裁判に踏み切ることになった。

裁判を起こす際にも、「人が人を裁く場に行くことは、神を信じる者として、正しい行いなのか……。仮に相手に過失があったとしても、それを赦すのが、クリスチャンなのではないか」と大いに葛藤した。

だが、エアコン火災の裁判で訴えが受け入れられることはほとんどなく、個人消費者は泣き寝入り、企業側の勝訴に終わることが多いことも弁護士から聞かされた。実際、教会側の弁護士は5人、企業側の弁護士は20人に及ぶ大弁護団を組んでいた。一志牧師たちも思わず怯(ひる)んだという。しかし、弁護士の「教会が裁判をしなければ、誰がやるのか!」という声に奮起し、裁判を決意した。

2018年9月、初の裁判となった東京地裁の法廷に立った友昭牧師は証言台で、裁判官が正しい判決を出すために祈りを捧げたという。結果、教会側の訴えが認められ、企業側に496万円の支払いが命じられた。しかし、すぐさまダイキン工業は上訴してきた。2020年2月27日、東京高裁でも勝訴。この時、裁判官から和解を勧められたが、ダイキン工業は上訴することを選択し、全面対決の姿勢を見せた。

「これは、法的な戦いというより、私たちにとっては霊的な戦いでした」と一志牧師。共に祈る人々がいたから、奇跡を起こせたと振り返る。

そして、2020年12月1日、最高裁判所はダイキン工業の上告を退ける決定をした。これにより教会側の勝訴が決定し、同社に約750万円の支払いが命じられた。この損害賠償金の中には、牧師が所持していた神学書などの金額も加味されたという。

「私たちの想像をはるかに超えた神様のご計画がこの教会にありました。さまざまな苦難はありましたが、そのたびに祈りました。すると、神様がまるでモーセが海を開いて民を導いたように、私たちに道を示してくださったのです。神様は生きておられます。またこの判決は、私たちだけのものではありません。今後、この結果をもとに、ダイキン工業がより安全で安心な製品を世の中に送り出してくれることを祈っています」と友昭牧師は話した。

 「神を愛する者たち、つまり御計画に従って召された者たちは、万事が益となるように共に働くということを、私たちは知っています」(ローマ8:28)

(ライター 黒岩さおり)

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