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【CHRISTIANITY TODAY】ゴスペル歌手であり続けたアレサ・フランクリンの信仰

投稿日:2018年8月27日 更新日:

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アレサ・フランクリンが今日(16日)召天したので、伝説的な2枚組ライブCD「ゴスペル・ライブ」(原題「ひとりの主、一つの信仰、一つの洗礼」One Lord One Faith One Baptism、1987年)を出してきた。言うまでもなく、同じく2枚組ライブCD「至上の愛──チャーチ・コンサート」(Amazing Grace、72年)のほうがもっと有名で、もっと充実したコレクションだ。しかし「ゴスペル・ライブ」には、メイヴィス・ステイプルズと共演した力作「オー・ハッピー・デイ」のように、超絶的な美と力を感じさせる瞬間がある。

アレサ・フランクリン、1968年

「ゴスペル・ライブ」には注目すべき曲がほかにもある。アレサ・フランクリンのピアニスト兼共作者を長年務めたジェームス・クリーブランド師の手による「あまりにも長く嵐の中にいる私」(I’ve Been in the Storm Too Long)だ。フランクリンはこの曲を、保守派ゴスペル最後のシャウター、ジョー・リゴン(ゴスペル・グループ「マイティー・クラウズ・オブ・ジョイ」のリード・シンガー)とのデュエットで歌っている。

ジョー・リゴンはおそらく、オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット亡き後、フランクリンと一対一のどんなステージでもこなすことのできた最後のソウル・シンガーだった。「あまりにも長く嵐の中にいる私」は、それぞれのアーティストが1節ずつソフトに優しく歌うバラードとして始まる。シャウトというより、むしろ祈りに近い。

あまりにも長く嵐の中にいる私に
あまりにも長く嵐の中にいる私に
主よ、持たせてください
もう少し祈る時間を

あまりにも長く嵐の中にいる私に
あまりにも長く嵐の中にいる私に
主よ、与えてください
もう少し祈る時間が
私には必要なのです

この後、「低空飛行で始め、まずはゆっくり。そして飛び上がり、燃え上がる」という昔からの本物のゴスペル(黒人の説教も同じだ)が始まり、旧友同士である二人は、8分間にわたって燦然(さんぜん)たる歌を聴かせるのだ。

歌詞を聞くと、アレサ・フランクリンが単なる「ソウルの女王」ではなく、本物の才能の力で「ものごとを変えた」ごく少数のアーティストになったエッセンスが分かる。

フランクリンは、マヘリア・ジャクソンやステイプルズほど公のかたちで積極的に黒人公民権運動に関わったわけではなかったが、特に60年代半ばから70年代初めにかけて、黒人コミュニティーから深く崇敬されてきた。オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット、ニーナ・シモンらと並んで、フランクリンはソウル・ミュージック時代の先頭に立って活躍した。この時代はゴスペルとR&Bが融合し、ダンス音楽でありながら、同時に文化的に意義深い音楽を創り出した特に豊かで創造的な時代だった。

アトランティック・レコード、そして共感してくれる(大半は)白人の南部のミュージシャンと共にフランクリンは、かつてないほど音楽的にも社会的にも大きな影響力を持つアルバムを続けてリリースした。「貴方だけを愛して」(I Never Loved a Man the Way I Love You、67年)、「レディ・ソウル」(Lady Soul、68年)、「アレサ・ナウ」(Aretha Now、68年)、そして「ヤング・ギフティッド・アンド・ブラック」(Young, Gifted and Black、72年)だ。これらのアルバムの中の「リスペクト」、「チェイン・オブ・フールズ」(Chain of Fools)、「ナチュラル・ウーマン」(〔You Make Me Feel Like a〕 Natural Woman)、「シンク」(Think)といった曲は、公民権運動を結集する力になり、若い黒人米国人を力づけ、私のような多くの白人の若者をダンスフロアへと導いた。

フランクリンは、代表曲は自ら編曲して、ピアノを弾きながら歌った。フランクリンが音楽を学んだのは、ゴスペルの巨匠クララ・ワードの横で、父親のC・L・フランクリン師が説教するのを聞きながらだった。また、ピアノの天才ジェームス・クリーブランドとの共演を通しても学んだ。

フランクリンが収録した曲は、ゴスペルへの深い感受性を呼び起こすものだった。ほかのゴスペル・アーティストが世俗的な成功を収めると、聴衆は「罰」を与えたが、フランクリンは聖俗の世界の間を自由に動き回ることができた。あるときフランクリンの父はこう語っている。「アレサが教会を離れたことはない。感じる力と聴く力がある人には分かるだろう。アレサは今もゴスペル歌手のままだ」

フランクリンは後にアトランティック・レコードからアリスタ・レコードに移籍し、その後20年間にわたって数多くのポップスのヒット曲を放ったが、「貴方だけを愛して」に勝るヒットはなかった。この時までには音楽界の王族となっていたフランクリンは、その後も業界の頂点に君臨するスーパースターであり続けた。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の葬儀では、マヘリア・ジャクソンとフランクリンが歌った。その数年後に亡くなったジャクソンの葬儀で〔キング牧師が愛した賛美歌〕「プレシャス・ロード」を歌ったのはフランクリンだった。

近年、体調を崩すにつれ、フランクリンが公共の場に姿を見せることは少なくなっていき、実質的にはほとんどインタビューも受けず、収録も減っていった。故郷デトロイトで行われた最後の公演の一つで、明らかに痩せたフランクリンは、自分のために祈ってくれるよう聴衆に願った。

あまりにも長く嵐の中にいる私に
あまりにも長く嵐の中にいる私に
主よ、与えてください
もう少し祈る時間が
私には必要なのです

若い音楽ファンは、「このアーティストがなぜ」と、〔アレサ・フランクリン死去に伴う〕この大騒ぎをいぶかしく思っているかもしれない。最もよい答えは、2015年12月、ワシントンDCで開催された第38回ケネディ・センター名誉賞授賞式の動画を観ていただくことだろう。

〔優れた芸術家の功績を称える〕この授賞式の会場には、当時のバラク・オバマ大統領とミシェル・オバマ夫人のほか、この晩の受賞者の一人であった伝説的ソングライター、キャロル・キングがいた。キャロル・キングは、フランクリンが登場して〔ジェリー・ゴフィンと共にキングが作曲した〕「ナチュラル・ウーマン」を歌い出すと、明らかに大感激していた。

ユーチューブで何百万人もが再生したこの公演は、感情を揺さぶる素晴らしいもので、聴衆は総立ちになって感涙した。フランクリンが感情を豊かに表しながら、ゴスペルで培った名人芸を披露した、これまでにないパフォーマンスだった。

音楽学者ウィルフレッド・メラーズはかつてフランクリンの「至上の愛」を評して、「『不可思議な』輝きと熱を感じさせる」と書いている。しかし不可思議ではないだろう。後年成功はしたが、フランクリンの一生は楽なものではなかった。

〔父と別れて家を出た〕母親はいないも同然だったし、有名〔な牧師〕だった父親も年中、家を空けていた。在宅していても、大きな教会の牧師が日々こなさなければならない仕事で父親はいつも忙しかった。

フランクリン自身も、若くして未婚のまま子どもを二人産み、不幸な結婚生活や相手からの暴力に苦しんだ。コロムビア・レコードから出した初期のアルバムは、悪くはないものの売れなかった。そして、よくあるように、アルバムが売れなくなると、それに応じて健康も害した。

フランクリンは、ケネディ・センターの熱狂的な聴衆の前に立ち、深いところの痛みを注ぎだすように歌った。歌いながら彼女は、マヘリア・ジャクソンやクララ・ワードのゴスペル音楽に入っていった。また、神聖化された父親の説教に。そして、生涯続いた「ひとりの主、一つの信仰、一つの洗礼」(One Lord One Faith One Baptism)を信じる信仰へと入っていった。そうして彼女は勝利し、救いを得て、〔入っていったのとは〕反対側から出てきたのだ。

「ゴスペル・ライブ」のもう1曲のハイライトは、フランクリンの母親代わりであったクララ・ワードが作曲した有名な「シュアリー・ゴッド・イズ・エイブル」(Surely God is Able)だろう。

巡礼のように私たちは旅する
行くべき道を知らずに
けれども、道を知っている方がおられる
重荷を共に担ってくださる、
共に担ってくださる方が

結局は、信仰なのだ。困難を乗り越えることができるのは、嵐を生き延びることができるのは、信仰のゆえだ。私たちが先の見えない旅を続ける間、私たちを守り、前へと運んでくれるのは信仰なのだ。

アレサ・フランクリンは、いつも自分の曲の歌詞どおりに生きられたわけではなかった。それでも歌い続け、歌詞の語ることを信じたのだ。

2018年8月16日、ロバート・F・ダーデン(寄稿)

本稿執筆者のロバート・F・ダーデンは、ベイラー大学教授(ジャーナリズム、広報、ニューメディア)。同大学の「黒人ゴスペル音楽復元プロジェクト」創設者でもある。『人々を準備する──黒人ゴスペル音楽の新しい歴史』(2005年、邦訳なし)ほか、20冊以上の著作がある。

本記事は「クリスチャニティー・トゥデイ」(米国)より翻訳、転載しました。

出典URL:https://www.christianitytoday.com/ct/2018/august-web-only/aretha-franklin-died-tribute.html

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