東西2人の神父からのメッセージ 『希望する力―コロナ時代を生きるあなたへ 』

上智大学ソフィア会主催「Net de ASF」で、「不安な時代をどう生きるか」をテーマに語られた東西2人の神父による珠玉の対談に、約3万字の書き下ろしを加えた『希望する力ーコロナ時代を生きるあなたへ』がキリスト新聞社から刊行された。コロナ禍という極めて厳しい状況の中で実現した、片柳弘史(かたやなぎ・ひろし、イエズス会司祭)と晴佐久昌英(はれさく・まさひで、東京教区司祭)の両氏によるオンライン対談は、両氏の母校である上智大学(東京都千代田区)で5月31日に開催された。2人による対談はこれが初めてということで、当日は700人が視聴し、現在もユーチューブで配信されている。

同書に序文を寄せている上智大学教授のサリ・アガスティン氏(イエズス会司祭)は、両氏を「日本の人々の心に響く言葉を発信し続けているカトリック司祭」と紹介。両氏は5月の対談で、コロナ禍に伴いオンライン対談というバーチャルな方法を用いながらも、「アナログなまま」でどのようにこの試練に立ち向かうかを教えてくれたと振り返り、2人の優しいまなざしと、温かい希望をもたらすメッセージは不安や理不尽な苦しみの中でも「悩みぬく力」の源になると述べている。

対談では、上智大学での思い出から始まり、コロナ禍の中でどのように過ごしたかなどが語られた。両氏ともミサも奉仕活動もすべてできなくなる中、片柳神父は、教会の先のことではなく、身近で困っている人たちのために何ができるかを考え、晴佐久神父も、身近な一人一人に丁寧に、ちゃんと関わることの大切さに気付かされたことを語った。コロナ禍によって生まれた絆を体験した両氏は、「新しい信仰様式」という言葉を共有し、その中で新しい宣教の形が生まれてくることに期待を寄せた。

後半の書き下ろしでは、片柳神父は「恐るな、愛せよ」というテーマで、自粛期間中に読んだカミュの『ペスト』、聖書のパウロの手紙、マザー・テレサの言葉、フランシスコ教皇の回勅「ラウダート・シ」などを引用しながら、コロナ禍の意味を次のように語っている。

「私たちの心を満たすことができるのは、感謝して受け取るときに生まれる神様への愛、与えられたものを分かち合うときに生まれる隣人への愛だけなのです。もし私たちがコロナ禍の中で、感謝する幸せ、分かち合う幸せに気づくことができたなら、コロナ禍も決して無駄ではなかったと言えるでしょう」(69ページ)

そして、将来のことで思い悩む人に、「空の鳥をよく見なさい」で有名なマタイによる福音書6章25~34節をおくり、「よりよい明日のために何ができるか」だけを考え、先のことは神様に委ね、いまこの瞬間を精一杯生きていきましょうと呼びかける。

一方晴佐久神父は、「コロナの時代の教会論」をテーマに、「恩寵のウイルス」と「新しい信仰様式」という2つをキーワードとして、アフターコロナの教会について語っている。その中で、キリスト教は、個人の救いを説くのではなく、みんなで助け合って一緒に救われようという、共同体の宗教だと伝え、「新しい信仰様式」は、初代教会のように、血縁にとらわれない共同体としての生活様式が基本だと語る。

目指すべきは、全人類の救いに仕えるキリストの教会であり、そこには「個人の救い」は入り込む隙はなく、愛する家族全員がそろっていなければ、天国に喜びはないと力を込める。晴佐久神父は、対談でも紹介した路上生活者の「最寄りさん」のその後を報告しながら、このように締めくくっている。

「『この世』であれ、『後の世』であれ、最寄りさんのいない天国には、たぶんキリストもいない」

晴佐久昌英・片柳弘史著『希望する力ーコロナ時代を生きるあなた」
2020年9月15日初版発行
キリスト新聞社
1200円(税別)

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