クライストチャーチ銃乱射事件 紙の教会などが追悼の祈り

 

ニュージーランド南島のクライストチャーチにある二つのモスク(イスラム教の礼拝所)で15日午後、銃乱射事件が発生し、50人が死亡し、50人以上が負傷。ニュージーランド史上最悪の事件となった。

最初に襲撃されたアルノール・モスク(写真:Abdullah@xtra.co.nz)

この日はイスラム教の金曜礼拝が行われていた。BBCによると、「まだ生きていると思った相手は片端から撃っていた。誰一人として生かすつもりはなかったようだ」と目撃者は話す。犯人はまず男性用の祈祷室を襲撃し、その後、女性の祈祷室へと移動した。銃撃は20分ほど続いたという。

ニュージーランド当局によると、犯人はオーストラリア出身の白人至上主義者で、反イスラム、移民排斥感情を持つブレントン・タラント容疑者(28)。警察はニュージーランド全土で、通知があるまでモスクに行かないよう呼びかけ、クライストチャーチにある学校はすべて閉鎖された。

スコット・モリソン豪首相(写真:Kristy Robinson)

クリスチャンのスコット・モリソン豪首相はツイッターで次のように述べた。「ニュージーランドのクライストチャーチでの深刻な銃撃事件を聞いて愕然としている。……私たちの思いと祈りはニュージーランドの人たちと共にある」

クライストチャーチの英国国教会やバプテスト、メソジスト、カトリック、その他の教派によるエキュメニカルなグループは、イスラム教徒のコミュニティーに愛と支持を広げる声明を発表した。「アブラハムから生まれた二つの信仰の伝統の一員として、私たちはあなたたちと連帯しています」(イスラム教では、イスラエルの父祖アブラハムの子であるイシュマエルをアラブ人の祖先と考えており、異母弟のイサクの系譜からキリストが誕生したとキリスト教では考えられている)

東京新聞によると、第二の事件があったリンウッド・モスク近くにあるバプテスト教会では、日曜の礼拝があった17日、「犠牲者たちが『わが家』と呼ぶ近隣で恐ろしい出来事が起きた。一つのコミュニティーとして悼もう」と牧師が述べた。

また、第一の事件のあったアルノール・モスクから約3キロ離れた英国国教会のクライストチャーチ大聖堂(紙の教会)でも、事件で犠牲になったイスラム教徒に追悼の祈りがささげられた。

共同通信によると、「私たちの国で起こった深い悲しみと恐怖によって、地域社会はまだショック状態にある。イスラム教徒のきょうだいたちに、愛と連帯の姿勢を示すために一つになろう」とローレンス・キンバリー牧師が呼びかけた。

また女性信徒は、「2011年の地震は、互いに手を差し伸べ、支え合うための試練の時だった。いま、同じことをする時が来た」と語った。

2011年2月22日に上空から撮影されたクライストチャーチ大聖堂(写真:ニュージーランド国防軍)

ゴシック様式のクライストチャーチ大聖堂は、2011年2月22日に起きたカンタベリー地震によって北側尖塔部分が崩れ、その後の余震によって建物の約75%が倒壊した。地震では185人が犠牲になり、その中には日本人留学生も28人も含まれていた。

700人を収容できる仮設の「紙の教会」は、世界各国の被災地で仮設住宅などを建設してきた日本人建築家、坂茂(ばん・しげる)氏が設計し、2013年8月に大聖堂跡近くにオープンした。坂氏は、1995年の阪神・淡路大震災の時もカトリックたかとり教会仮設集会所「ペーパードームたかとり」(紙の教会)を手がけている。

紙管を使った仮設大聖堂(写真:Schwede66)

屋根や祭壇、十字架もすべて、大小さまざまな筒状の紙で作られ、シンプルなAフレーム構造で構築されている。防水ポリウレタンや難燃剤でコーティングされた特殊な紙のため耐久性が高く、50年は問題なく使えるという。正面にはステンドグラスがあり、建物の外側も半透明な素材が使われているため、外の光が中まで届き、自然な光で満たされている。2017年9月、倒壊した建物を利用して元の大聖堂を復元することが決まった。

世界福音同盟(WEA)は、ニュージーランド・クリスチャン・ネットワーク(NZCN)と共に、イスラム教徒への襲撃を強く非難した。NZCNは、深刻な影響を受けることになるすべての家族や地域社会のために祈り、可能な限りあらゆる方法で彼らに支援を提供すると発表した。

WEA事務局長兼CEOのエフライム・テンデロ氏(自身のツイッターから)

WEA事務局長兼CEOのエフライム・テンデロ氏は次のように述べる。

「この悲劇的な襲撃で愛する人を失った人々の家族と共に悲しみ、彼らに慰めと癒やしが与えられるように祈ります。『悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい』(ローマ12:21)とあるように、悪に対して悪を返すのではなく、善をもって悪を克服することによって、人間としての最善を最大限に発揮する必要があると確信しています」

世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事も次のように述べた。

「WCCは長い間、世界のイスラム教徒のコミュニティーとの対話と協調に取り組んでいます。私たちはすべてのイスラム教徒の友人やパートナーに誓います。すべての隣人と共に平和と敬意をもって生活し、特に弱い立場の少数民族の保護に取り組むことを求めて、イエス・キリストの道に従うよう、すべてのキリスト教徒に呼びかけることを」

 






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