「キリスト教学校フェア」 玉川聖学院中高等部長の櫛田真実先生に聞く

 

都内のプロテスタント系キリスト教学校(中学・高校)15校による合同説明会「キリスト教学校フェア」が7月27日、銀座教会東京福音センター(東京都中央区)で開催される。

参加校(所在地と創立者)は、桜美林学園(町田市、清水安三)、恵泉女学園(世田谷区、河井道)、啓明学園(昭島市、三井高維)、香蘭女学校(品川区、聖公会のE・ピカステス)、頌栄女子学院(港区、岡見清致)、自由学園(東久留米市、羽仁もと子と羽仁吉一)、女子学院(千代田区、長老派のJ・カロザース)、女子聖学院(北区、ディサイプル派のB・F・クローソン)、聖学院(北区、ディサイプル派のH・ガイと石川角次郎)、玉川聖学院(世田谷区、神の教会の谷口茂壽)、東洋英和女学院(港区、メソジストのM・カートメル)、普連土学園(港区、クエーカーの米婦人伝道会)、明治学院東村山(東村山、長老派のヘボン)、立教池袋(豊島区、聖公会のC・M・ウィリアムズ)。資料参加校には青山学院、国際キリスト教大学高校、東京YMCA高校、日本聾話学校、立教女学院がある。

今回の幹事校一つ、玉川聖学院中高等部長(校長)の櫛田真実(くしだ・まさみ)先生に話を聞いた。

玉川聖学院中高等部長の櫛田真実先生

──キリスト教学校が合同でこのような取り組みを始めた経緯を教えてください。

世の中がどんどん変化していく中で、聖書に基づいた教育を行うキリスト教学校ならではの魅力、良さを広く発信したいという思いから、都内複数のキリスト教学校の校長の発案でこのフェアが計画され、2000年に第1回目が開催されました。

キリスト教学校の存在意義、使命を皆さんに知っていただくというのが第一の目的ですが、キリスト教系の学校の教員や生徒同士を結びつけ、互いに励まし合う関係を作ることも目的の一つです。

──記念すべき20年目の今年は、どんな内容となっているのでしょうか。

会場には各学校の個別相談ブースが設けられているほか、生徒たちによる学校紹介や、ハンドベル、弦楽、聖歌隊などの音楽も披露されます。

また今年は特別企画として、参加校の中から有志を募り、さらに被災された地域から仙台の東北学院や熊本のルーテル学院、平和教育に取り組んでいる広島女学院をお招きし、各校代表の高校生(生徒会長、生徒会役員、ボランティア委員長など)による「平和」と「復興支援」をテーマにしたパネル・ディスカッションも行います。キリスト教学校ならではの意見交換が期待されます。この背景には、もともとフェア参加各校が取り組んできた平和教育や、2011年の東日本大震災以降に行われてきた各校の復興支援の働き、フェア参加校の教師と生徒が集まって被災地の方々を覚えて祈る「東京―祈りの輪」の活動があります。

ひと口に「キリスト教学校」といっても、本当に個性豊かです。互いの学校の特色が活かされたフェアになっているので、各校の関係者や進学を検討されている方々にも楽しんでいただけると思います。

──櫛田先生ご自身は、キリスト教学校ならではの良さはどんなところあると思いますか。

私は、大阪府と出身地の香川県の公立高校で12年間、教員をした経験があります。性の問題や生きる意味、学習の目的など、とても大切な問題に対して、公立では「聖書から与えられる答えを十分に提示できない」ということが何度もあり、歯がゆさを感じていました。

キリスト教学校とは本来、「神の愛と義」が伝わる学校です。昨今は偏差値など、数字が判断基準にされることもありますが、本来のキリスト教精神に基づく愛の教育とは、優秀で能力が高い生徒だけを育てるものではありません。「ありのままでいい。人と違ってもいいんだ」という価値観の中で、神様が一人ひとりに与えた賜物(たまもの)を伸ばしていくこと。これこそ、キリスト・イエスご自身の持っていたまなざしであり、キリスト教が担うべき教育の姿であると思っています。

玉川聖学院

──玉川聖学院では、キリスト教精神をどのように授業に取り入れていますか。

毎朝必ず、中等部と高等部に分かれて全員参加の礼拝を行うほか、クラスごとに行う終礼では、生徒たちが好きな御言葉を選び、最近の悩みなどをシェアする時間を持っています。人間学の授業では、生徒がそれぞれ地域の教会の礼拝に出席して、説教の要約や自身の感想をレポートとして提出するなど、自分で考え、自分の言葉で表現することを重点に置いています。

ただし、そうすることによって生徒に信仰を押しつけようとするのではなく、「信じているふりはしなくていいよ。ありのままの自分で御言葉を受け取って、感じたままに答えてくれればいい」と伝えています。

このほか、各学年で行われるキャンプ、性教育や平和に関する講演会など、さまざまな行事がキリスト教の価値観に基づいて行われています。

──今後の取り組みについてはいかがですか。

私たち教師が人の魂を救うことはできませんが、「教育者として本当に伝えなければいけないことは何か」、「正しさの本当の基準とは何か」を常に考えています。

どんなに社会情勢が変化しても、神の前に本当に正しい行動をすること、社会的に弱い立場にある方の視点に立った愛ある行為を行うことは、国の繁栄にもつながります。こうした視点を持つ人が増えていくことが、日本の将来にとっても大切なことではないでしょうか。そう考えると、キリスト教学校が果たさなければならない役割は、これからのほうが大きいかもしれませんね。

また、とても残念なことですが、子どもにとって家庭が安心できる場所ではないというケースも増えています。だからこそ、今の時代を生きる生徒には「愛されている」という実感を得ることが大切なのではないかなと思います。

保護者の方が仕事や家庭の問題でかなりのストレスを抱えておられることもあり、家庭環境はさまざまです。でも、どうしても学校は家庭や親の代わりにはなれないんですね。神に愛されている宝のような生徒たちを一緒に育てていくチームメイトである私たち教師にも、保護者の方々にも、キリストの愛が必要だと感じています。そのためには、学校と教会との協力が不可欠ではないでしょうか。

 






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