インタビュー 音楽

【インタビュー】ジャズ・ピアニスト出口誠さん、美樹子さん夫妻(前編) ニューアルバム「Ave Maria」への思い

投稿日:2018年11月14日 更新日:

Print Friendly, PDF & Email

 

ジャズ・ピアニストの出口誠さん(49)がアルバム「Ave Maria」(ライフ・クリエイション)をリリースした。今年、プロ・デビュー30周年を迎えた出口さんと、妻でプロデューサーの美樹子さんに、同アルバムへの思い、これまで歩んできた道のりについて話を聞いた。

出口誠さん(左)と美樹子さん

出口さんは1969年、和歌山県生まれ。5歳からピアノとエレクトーンを習い始め、高校時代にミュージシャンになることを決意した。クラシックの作曲法を学ぶため大阪音楽大学に進学するが、学生時代に大阪のジャズ・クラブでプロ・デビューする。関西有数の人気バンドで活躍した後、94年に活動の拠点を東京に移し、96年、オペラ歌手中島啓江のツアー・メンバーに参加。2005年に初のリーダー・アルバム「WILL」、10年に「Don’t Be At A Loss」、15年に「Duologue」を発表している。カトリック古屋教会(和歌山市)で幼児洗礼を受け、現在はカトリック百合ヶ丘教会(神奈川県川崎市)に所属。

出口誠「Ave Maria」(ライフ・クリエイション)

今回発売されたアルバム「Ave Maria」には、カッチーニ、グノー、サンサーンス、ミハウ・ロレンツ、シューベルト、ピアソラ、チマッティ、グレゴリオ聖歌による「アヴェ・マリア」8曲のほか、最後に出口さんのオリジナルも収録されている。

「アヴェ・マリア」は、ラテン語で「おめでとう、マリア」という意味で、カトリックの私的な祈禱文を指す。天使ガブリエルがマリアの受胎告知のとき述べた、「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」(ルカ1:28)という挨拶(あいさつ)と、エリサベトの言葉、「あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子さまも祝福されています」(42節)を組み合わせたもの。マリアを神として崇拝しているとよく誤解されるが、兄弟姉妹にとりなしを願うのと同じと考えたら分かりやすいかもしれない。

──違う作曲家による「アヴェ・マリア」が並ぶアルバムは珍しいと思いますが、アルバムのアイデアはどのように生まれたのですか。

昨年、佐世保の黒島にある黒島天主堂でのコンサートが実現し、電子ピアノ一式を車に積んで、東京から妻と二人で運転を交代しながら17時間かけて行きました。黒島天主堂は明治時代に建てられた聖堂で、その壮大な佇(たたず)まいは、国の重要文化財に指定されていることもあり、外観だけでなく内観も素晴らしいんですね。そのような聖堂で、土曜日の夜と翌朝のミサの後に演奏させてもらいました。終了後、「アヴェ・マリア」をジャズで演奏したアルバムを作ろうということになりました。

黒島天主堂でのコンサート

同じ曲名で違う作曲家が並ぶアルバムはクラシックでも珍しいと思いますが、世の中に「アヴェ・マリア」は4000曲くらいあるんですね。その中からお馴染みのグノーやシューベルトをはじめ、これまで演奏をして人気の高かったカッチーニなど8人の作曲家を選んで、1年かけてアルバムを作りました。

──最後の9曲目は、出口さんがこのアルバムのために書き下ろしたオリジナルですね。

「アヴェ・マリア」を作曲した世界の作曲家の一人に加わりたいという思いで、9曲目に入れさせていただきました。最初、カトリック教会で毎日祈られる口語訳の「アヴェ・マリアの祈り」にメロディ-をつけたのですが、やはり違和感があるんですね。特に僕は関西人なので、自分の内面の声で歌うと、関西弁のイントネーションになってしまう。そこで、まずラテン語の「天使祝詞」にメロディーをつけてから日本語にしたのですが、かっこよく演奏するのは本当に至難のわざでした。

──そんなたいへんな思いをされたとは、まったく感じませんでした。

最終的には、メンバーの力を借りていい演奏をすることができたからだと思います。テナーサックスの右近茂さん、トロンボーンの池田雅明さん、ベースの安ヵ川大樹さんは共に、クラシックにも傾倒する音楽家なので、力をお借りすることができました。実は、ジャズは難しい曲を演奏するほうが簡単で、逆にメロディーが普遍的でシンプルなもの、たとえばグノーの「アヴェ・マリア」のように子どもでも知っている曲を演奏することはハードルが高いんです。なので、このアルバムはかなりチャレンジングでした。

──美樹子さんは、今回のアルバムについてどのような感想をお持ちですか。

これまで3枚アルバムを出させていただいているのですが、どれもジャズの好きな方が聴いてくださるような作品でした。今回は、ふだんジャズに触れない方にも聴いていただける作品になったと思います。先日も、「初めてジャズのCDを買いました」というクラシックのファンの方から感想をいただきました。また、「こんなにたくさんの『アヴェ・マリア』があったのですね」と、驚きのメッセージや、これまでにない反応をいただき、たいへんうれしく思っております。

──確かにピアソラの「アヴェ・マリア」はなかなか聴く機会はないと思います。

サンサースは5曲も「アヴェ・マリア」を作っているんですよ。アルバムでは、ジャズにアレンジできそうな「アヴェ・マリア」を選びました。ライブで熱い演奏することも考慮して、メロディーがどうしても4小節単位で割れない曲や、やはりジャズで演奏しづらい「アヴェ・マリア」もあって、選曲にも苦労しました。(後編

-インタビュー, 音楽
-

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
坂本直子(さかもと・なおこ)

坂本直子(さかもと・なおこ)

善隣キリスト教会(東京都足立区)会員。これまで主にミッションスクールや福祉関係を中心に取材を行いつつ、聖書の観点から美術展や音楽会などの紹介も。

Copyright© クリスチャンプレス , 2018 All Rights Reserved.