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【インタビュー】ジャズ・ピアニスト出口誠さん、美樹子さん夫妻(後編) 出会いはアメイジング・グレイス

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ジャズ・ピアニストの出口誠さん(49)がアルバム「Ave Maria」(ライフ・クリエイション)をリリースした。後編では、出口さんと妻の美樹子さんに、これまで歩んできた道のりについて話を聞いた。

出口誠さん(右)と美樹子さん

──お二人の出会いについて教えてください。

私が代表を務める音楽教室(現・出口美樹子音楽院)を立ち上げたばかりの頃、夫がピアノ・レンタルに来たのです。自分の家のピアノの調子が悪くなり、仕事前の練習の場として借りに来たということでした。

私は幼い頃から日本基督教団・銀座教会に通っていました。夫はカトリックですが、お互いに日曜の朝は教会に行くというクリスチャン・ホームで育ちました。話を聞くと、家庭環境が自分ととてもよく似ていて驚いたのを覚えています。

──出口さんはいかがですか。

教室に行った時、妻のことを何となくクリスチャンかなと思ってはいたのですが、はっきり分かったのは結婚を決めた時です。お互いクリスチャン家庭に育ったので、雰囲気が似ていたのかもしれませんね。

──美樹子さん、カトリックとプロテスタントのご夫婦は珍しいですね。

実は私は当時、なかなか礼拝に行くことができなかったのです。音楽教室は土曜と日曜に人の出入りやイベントが多く、長い時間、空けられなかったんですね。しかし夫に、「礼拝に行かないと意味がない」と言われ、2014年に自宅近くにある日本基督教団・生田教会に転会させていただきました。

カトリック教会のほうがミサの時間が早いので、ミサが終わると夫はそのまま生田教会の礼拝にもやって来ます。日曜日は、他教会の夕拝に出席したり、教会三昧(ざんまい)です。

──出口さんはどんなご家庭でしたか。

日曜の朝、家族7人でぞろぞろと教会に行くような家庭で育ち、両親は熱心な信徒でした。父は仕事が終わると、赤ん坊の僕をバイクの後ろに乗せ、毎晩、教会のミサに出かけていたんですね。僕が初めて見たものはきっと聖堂の風景で、教会に入ると「帰ってきた」という気持ちになるのはおそらくそのためだと思っています。

ただ、プロになってからはツアーも多く、過密なスケジュールで仕事をする中で、教会になかなか行くことができませんでした。それでも、ツアーに訪れた場所に教会があると、ふらっと入って心を落ち着かせることができました。

──再び教会に通うようになったきっかけは何ですか。

40歳を過ぎた頃、改めてジョン・コルトレーンの演奏をじっくり聴くことがあったのです。その時、他のソリストと何か違うものを感じ、彼についての本を読み漁(あさ)ってみると、彼は1967年に40歳で亡くなるのですが、「至上の愛」(65年)などでは、信仰を持って演奏をしていたことが分かりました。それがきっかけで改めて聖書を開き、キリスト教に関する本も読むようになりました。そして、朝のミサも毎週行けるようになったのです。

──クリスチャンのジャズ・ピアニストと意識したのもその頃なのでしょうか。

若い頃はリーダーやサイド・メンバーがいて、先輩ミュージシャンの下で演奏をしていました。しかし、2005年に初めてリーダー・アルバムを出した時、自分のアイデンティティーを見直すことが大事だと思ったのです。本来の自分であるクリスチャンに立ち返って、ジャズをやっていることの意味を見いだしたというところでしょうか。

カトリック百合ヶ丘教会で演奏する出口さん

今回、アルバムを作っていて気づいたことなんですが、何度も同じ曲を演奏できるほどのクオリティーの高さを持つクラシック音楽は、聖書と共通しています。一方、一つの曲をいろいろな角度から見て音を作り出していくジャズは、聖書にいろいろな翻訳があったり、聖書学者がさまざまに議論したりしていることと似ています。そういう意味でも、このアルバムはクラシックとジャズがクロスオーバーしているのですが、アルバムを発売してくれたのもいのちのことば社(ライフ・クリエイション)なので、カトリックとプロテスタントがクロスオーバーしていることになります。

──確かにこのアルバムを聴いていると、カトリックもプロテスタントも同じ神さまを信じる者同士だと感じます。

20代の頃にはこういうCDを出すことは思いも浮かばなかったでしょう。誰かの心に届く音楽を作りたいという気持ちに切り替わったのは、改めてジョン・コルトレーンを聴き直したことが一つのターニングポイントであり、その気持ちが維持されているのは信仰によると思います。

──音楽家を目指す人は多いと思いますが、成功する人は本当に少ないと聞きます。

ジャズの演奏家になるのも、ピアニストのクリスチャン同士で結婚するのも、確率としたらすごく少ないことです。本当に「アメイジング・グレイス(驚くべき恵み)」だなと感謝せずにいられません。

黒島天主堂でコンサートをやった時に神父様が、「音楽はいいですね、神の国にいるような気分になります」とお話をされました。それを聞いて、音楽のすごさを改めて感じました。これから各地でアルバムの発売記念ライブをたくさんやっていきたいと思ってますが、クリスチャンでない方にも、「神の国ってこんな感じのところなのか」と感じていただけるかなという気がします。

──最後に、メッセージをお願いします。

ジャズの魅力を3つ挙げるとすると、僕は「スイング」「即興演奏」「アンサンブル」だと思います。アルバム「Ave Maria」は、日本を代表する3人のベテラン・ジャズメン(テナーサックス右近茂、トロンボーン池田雅明、ベース安ヵ川大樹)をゲストに迎えて収録しました。ぜひ聖書を読む時やひとりで静かにお祈りしたい時にも聴いていただけたら幸せです。

11月23日(祝)午後1時〜4時、12月15日(土)午後7時半〜10時、Jazz Live Club さくらんぼ(東京都調布市)で「Ave Maria」発売記念ライブを開催する。また、12月16日(日)午後2時~、4時~、12月23日(日)午後2時~、4時~「銀座教会東京福音会センター アフタヌーン・チャリティーライブ」(ピアノ出口誠、ベース安ヵ川大樹のデュオ)がある。詳しくはホームページで。(前編

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坂本直子(さかもと・なおこ)

坂本直子(さかもと・なおこ)

善隣キリスト教会(東京都足立区)会員。これまで主にミッションスクールや福祉関係を中心に取材を行いつつ、聖書の観点から美術展や音楽会などの紹介も。

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