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映画「E.T.」、2日満月の夜に放送 スティーブン・スピルバーグによる福音書

スティーブン・スピルバーグ監督の映画「E.T.」が2日午後9時から金曜ロードショー(日本テレビ系)で放送される。

日本では1982年12月4日に公開され、配給収入96億円という歴代1位の記録を作った(97年に「もののけ姫」に抜かれるまで)。そのため、12月4日は「E.T.の日」とされている。

ミケランジェロ「アダムの創造」の手の部分

小さな宇宙人E.T.と少年エリオットが指と指を合わせて「イ~ティ~」というシーンがある。これを使って印象的なポスターを作った配給のユニバーサル・ピクチャーズは、ミケランジェロの「アダムの創造」を連想させて、大きなクリスチャン・マーケットにアピールしたという(ジョセフ・マクブライド『Steven Spielberg: A Biography』)。

実はそれ以外にも「E.T.」とキリスト教の関わりはある。スピルバーグ監督自身は、「この映画を宗教的な寓話にするつもりはなかった」と語っているが、米国人やクリスチャンはこの「E.T.」の物語を見て、どこか懐かしさを感じるのではないだろうか。日本人なら誰しも「浦島太郎」や「桃太郎」、「こぶとり爺さん」や「カチカチ山」など、日本の昔話に馴染んでいるように、スピルバーグ監督も無意識のうちにイエスの物語に影響を受けていてもおかしくはない(以下はストーリーの重要な場面に触れるので、まだ見ていない人は要注意)。

たとえば、エリオットが指を怪我(けが)したので、E.T.が指に触れて治す印象的なシーンがある。イエスも多くの人に触れて病を癒やすという奇跡を行っており、マタイによる福音書だけでも次のようにある。

イエスが手を差し伸べてその人に触れ、「私は望む。清くなれ」と言われると、たちまち規定の病は清められた。(8:3)

イエスが手に触れられると、熱は引き、しゅうとめは起き上がってイエスに仕えた。(同15節)

イエスが二人の目に触れ、「あなたがたの信仰のとおりになれ」と言われ……(9:29)

そして、癒やされた人に共通していたのは、イエスを信じていたこと。「E.T.」でも、エリオットの指を治しているとき、母親のメアリー(Maryはイエスの母マリアの意)が妹のガーディに「ピーターパン」を読み聞かせをしながら、「子どもたちが、妖精は本当にいると信じてくれればきっと助かるって。信じるなら手をたたいて」と言う場面とカットバックされる。

逆に、エリオットがガーティに「E.T.は子どもにしか見えないんだ」と言うと、「冗談でしょ」と一蹴(いっしゅう)されてしまうが、子どもを邪険に扱った弟子たちをイエスはこのように叱っている。

「心を入れ替えて子どものようにならなければ、決して天の国に入ることはできない」(マタイ18:3)

「子どものように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない」(マルコ10:15、ルカ18:17)

宇宙船と交信するため、エリオットは自転車の前かごにE.T.を乗せ、郊外の森へと向かう。そのうち道がデコボコになってきたので、自転車から降りようとすると、E.T.の力で自転車は勝手に走り出し、ガケから飛び降りると、フワッと自転車は浮かび上がる。そして、大きな満月の前を横切りながら森の上空を飛んでいくのだ。

(写真:Alok Kumar)

ちなみに、2日は満月。夜が涼しくなり、空も澄みわたるので月がいちばん美しく見え、「中秋の名月」とも呼ばれる十五夜(旧暦の8月15日)は、前日の1日だ。それに合わせてこれが放送されたのかもしれない。

さて、宇宙服を着た政府機関の科学者たちが突然、E.T.を捕らえるために家に押しかけてくる。これは、キリストが誕生したとき、ヘロデ大王がこの幼子を探し出して殺そうとしたことを思い起こさせる。

ヘロデは博士たちにだまされたと知って、激しく怒った。そして、人を送り、博士たちから確かめておいた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯にいる二歳以下の男の子を、一人残らず殺した。(マタイ2:16)

このときE.T.は、川に落ちたことが原因で瀕死の状態にあった。やがて呼吸が止まり、心臓も停止して、科学者たちは死亡したと判断する。ところが、エリオットが悲しみに暮れながら別れを告げようとしたその時、E.T.の心臓が赤く光りだすのだ。「復活」を思わせる場面だ。

最後の別れで、迎えに来た宇宙船が待っている間、E.T.はエリオットのこめかみを指し、「ずっとここにいるよ(I’ll stay here.)」と言う。聖書が旧約から新約まで一貫して語るメッセージは、「神はあなたと共にいる(インマヌエル)」というメッセージだ。

創世記ではアブラハムの息子イサクと、その子ヤコブに神は語りかける。「私はあなたの父アブラハムの神である。恐れることはない。私はあなたと共にいる」(26:24、31:3参照)

続く出エジプト記でもモーセに語られる。「私はあなたと共にいる」(3:12)。その後継者ヨシュアにも。「強く、雄々しくあれ。……私はあなたと共にいる」(申命記31:23)。「私がモーセと共にいたように、私はあなたと共にいる。あなたを見放すことはなく、あなたを見捨てることもない」(ヨシュア1:5)

そしてイエスは私たちに約束されるのだ。

「私は世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(マタイ28:20)

ヨーゼフ・アントン・コッホ「ノアの献げ物の風景」

その後、E.T.は宇宙船に乗り込み、子どもたちが見上げる中、飛び去っていくが、その空に美しい虹がかかる。この虹は、洪水のあと神がノアと結んだ「契約の虹」を思わせる。E.T.とまた会える日を待つように、私たちも再び来られるイエス・キリストを待つのだ。

「私は雲の中に私の虹を置いた。これが私と地との契約のしるしとなる。私が地の上に雲を起こすとき、雲に虹が現れる。その時、私は、あなたがたと、またすべての肉なる生き物と立てた契約を思い起こす。大洪水がすべての肉なるものを滅ぼすことはもはやない。雲に虹が現れるとき、私はそれを見て、神と地上のすべての肉なるあらゆる生き物との永遠の契約を思い起こす」(創世記9:13~16)

「その時、……人の子が大いなる力と栄光を帯びて天の雲に乗って来るのを見る」(マタイ24:30)

E.T.と主人公エリオットが37年ぶりに再会するショートムービー「A Holiday Reunion」も公開されている。二人の子どもの父親となったエリオットを演じるのは、当時、少年役を務めた48歳のヘンリー・トーマス。Xfinityがプロモーション用に制作したもので、スピルバーグ監督もコンサルタントを務めたという。

 

このショートムービーでも、E.T.が子どもたちと自転車に乗って月夜の空を行くシーンがある。

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