東洋英和女学院、深井智朗院長を懲戒解雇

 

東洋英和女学院(東京都港区)は10日、深井智朗(ふかい・ともあき)院長(54)を懲戒解雇とすることを臨時理事会で決めた。深井氏の著書などに不正行為の疑いが指摘されていた問題で、捏造(ねつぞう)と盗用があったことを学内の調査委員会が認定したと同学院は発表した。

同日開かれた記者会見には、同学院理事長の増渕稔(ますぶち・みのる)氏、同大学学長の池田明史(いけだ・あきふみ)氏、副学長で調査委員委員長の佐藤智美(さとう・さとみ)氏、調査委員で弁護士の荒巻慶士(あらまき・けいじ)氏の4人が臨み、深井氏は出席しなかった。深井氏は増渕理事長に一身上の都合でという内容の辞表を渡したが、それは理事会にはかけられず、先に懲戒解雇が決まったという。

調査委員会には、聖学院大学で共に教え、日本基督教団・滝野川教会では深井氏(2000~12年)の後任牧師(12~18年)を務めた阿久戸光晴(あくど・みつはる)氏(福岡女学院大学学長)も入っている。

調査対象になったのは、『ヴァイマールの聖なる政治的精神──ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズム』(岩波書店、2012年)と、雑誌「図書」(同、15年)に掲載された論考「エルンスト・トレルチの家計簿」。調査では、「(深井氏が紹介した)『カール・レーフラー』なる人物は存在せず、当該人物が著したとされる論文『今日の神学にとってのニーチェ』は、被告発者(深井氏)による捏造であると判断する」とされ、またヴォルフハルト・パネンベルク著『組織神学の根本問題』(日本基督教団出版局)の中の「記述とほぼ同一の記述、同様の表現・内容の記述が、引用注が記されないまま計10か所認められたため、被告発者による盗用がなされたものと判断する」、「1920-23年のトレルチ家の借用書や領収書等の資料は実在せず、被告発者による捏造と判断する」と認められた。

「被告発者は、これまで多数の著書、翻訳書を刊行し、その中には受賞の栄に浴し評判になったものもあるなど、研究の業績を積み重ねてきた。その中でも本件著書は、学術書として多くの神学研究者等の関心を集め、広く流通したものであるから、社会的影響度はかなり高いといえる。一方、行為の悪質度については、被告発者は、実在しない人物や論文及び借用書から捏造した。この行為により、世に出された著書及び論考は、根拠なく結論が導き出されており、研究者のみならず一般読者にとっても非常に悪影響を及ぼしていることは明らかである」として、調査委員会は「①学術的・社会的影響度について、『極めて大きい』と認定する。②行為の悪質度について、『極めて悪質』であると認定する」と結論づけた(詳細は同大学ホームページ)。

深井氏は同日、コメントを発表した。全文は次のとおり。

「この度(たび)は、学校法人東洋英和女学院の関係者の皆様、拙著の読者の皆様に対し、拙著に関する問題で、さまざまな混乱をもたらし、多大なるご迷惑をお掛けしましたことを心よりお詫び申し上げます。

今回の調査結果については、真摯(しんし)に受けとめ、速(すみ)やかに必要な訂正や修正を行いたいと思います。

また既(すで)に、平成31年3月11日付辞任届・退職届を学院に対して提出しております。学院の教育と研究に関するすべての立場から退いておりますので、誠に恐縮ではございますが、何らかの形で私宛にお問い合わせ頂(いただ)きましても、これ以上お答えできることはございません。また、自宅等への取材は、厳に差し控えて下さいますようお願い申し上げます」

深井智朗氏(東洋英和学院のホームページから)

深井氏は1964年生まれ。ドイツ思想史の研究者で、2017年から東洋英和女学院院長とともに、同大学人間科学部保育子ども学科教授を務めた。

1989年、東京神学大学大学院修士課程を修了後、92年からアウクスブルク、ミュンヘンで哲学、社会学、神学を修め、96年、アウクスブルク大学哲学・社会学部で哲学博士。2005年、京都大学で文学博士。96年から2012年まで聖学院大学教授。12年から16年まで金城学院大学教授。16年から東洋英和女学院大学人間科学部教授。青山学院大学、東京大学大学院、立教大学大学院、国際基督教大学などで非常勤講師や客員教授も務めた。2018年に『プロテスタンティズム』(中公新書)で読売・吉野作造賞を受賞している。

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