福島原発事故から10年 日本バプテスト連盟が原子力技術について声明を発表

日本バプテスト連盟(さいたま市南区)公害問題特別委員会は4日、東日本大震災時に発生した福島原発事故から10年となることを受け、原子力(核)技術からの撤退を求める声明を発表した。

同連盟では第54回定期総会において「我が国の原子力行政を憂慮し『無核・無兵』社会を目指すことを求める声明」を採択し、日本の原子力政策に対して否ととなえてきた。今回の声明文は、2011年3月11 日に起きた東京電力福島第一原子力発電所事故(以後「福島原発事故」)以降、福島の諸教会と言葉を交わし、ともに祈りながら歩んできたことを踏まえ、改めて原子力(核)技術からの速やかな撤退を求めるもの。

声明文では、未だ「原子力緊急事態宣言」発令中にある福島の今を伝え、より弱い立場の人々に、より多くのヒバクが強いられている「あってはならない現実」を明らかにする。また、核燃料サイクリが破綻したにも関わらず、日本が原発と再処理、プルトニウムにこだわり続けるのは、「核武装が目的ではないのか?」という世界からの疑念を生み出し、 特に東アジアにおける平和的共存の歩みにとって脅威となるとし、平和と共生を求め続けてきた、我々キリスト者の歩みとも反していることを伝える。

さらに、原子力(核)の技術が、経済を何よりも最優先する今の世代が生み出した「核のゴミ」を後世代に背負わせる、極めて自己中心的で無責任な技術であるとし、他者の、しかもより弱い立場の命の犠牲の上にしか成り立たないこのシステムを明確に拒絶することを訴える。同時に、福島原発事故以後、神が創造したこの地上には、太陽・地熱・風力・水力・波力などあらゆる再生可能エネルギーに満ちあふれていることを伝え、経済最優先のエネルギー政策からの転換を求め、今なお、強いられたヒバクによって痛み、脅かされている命と連帯してゆくことを表明する。

以下は声明文の全文。

「私たちは、日本における全ての原子力(核)技術からの速やかなる撤退を求めます」
2021年3月11日・福島原発事故から10年を経ての声明

(1) 福島原発事故後の今
我々は第54回定期総会において「我が国の原子力行政を憂慮し『無核・無兵』社会を目指すことを求める声明」を採択し、日本の原子力政策に対して否ととなえた。しかし、原子力行政は変わらず、2011年3月11 日に起きた東京電力福島第一原子力発電所事故(以後「福島原発事故」と呼ぶ)は、原子力災害における、人類至上未曾有の大惨事・公害事件に至った。我々はこの事故をとどめることができなかった責任を痛切に感じ、さらに、なかなか希望が見いだせない中にあって福島の諸教会の方々と言葉を交わし、ともに祈りながら歩んできた。福島原発事故から10年を経て、ここに改めて我々の言葉を紡ぐこととする。
政府は一切言及しないが、10年を経て今日なお「原子力緊急事態宣言」発令中であり、事故収束は全く目処 が立たない。トリチウム汚染水は日々増える一方であり、その海洋投棄が目論まれている。これは海洋放射能汚染であり、我々は断じて許容できない。福島原発事故の一義的責任は、一企業と、それを国策として推進してき た国に存する。このことによって、多くの人々が生活を奪われ、住み慣れた大地を追われ、帰りたくとも帰れな い現状が、今も進行中であり、放射能に汚染されたままの大地が広がっている。我々はこの現実から目をそらし てはならない。
「絶対安全」「経済に必要」という「神話」に彩られてきた日本の原子力政策は、福島原発事故において崩壊し た。にもかかわらず、事故後は、「ヒバク安心神話」がつくられ、福島原発事故に伴うヒバクの問題、生活破壊の問題は、まるでなかったかのごとくに軽視され、ヒバクのリスクを考えて「自主避難」を決断した人々は置き去 りにされたままである。それにも関わらず各地で原発が再稼働され続けてきた。一方で深刻な現実は進行してい る。事故に伴う溶融燃料(デブリ)および、使用済プールからの使用済み燃料の搬出は、3号基の燃料搬出は完了したとはいえ、1・2号基の撤去作業は未だ手つかずのままである。また「帰還困難区域」が設定されたまま、 広範な高線量ヒバク地帯が未だに依然と存在するにもかかわらず、驚くべきことに、この地域を貫く高速道路や 鉄道は再開されてしまっている。うずたかく積まれた危険な「放射能除染土」は放置されたままである。また、 旧「避難指示」区域内において、小中学校などが再開されている。そのさい日本国政府が根拠としている「許容年間ヒバク20ミリ㏜」は、2011年5月23日に意図的に引き上げられたものであり、「公衆の許容年間ヒバ ク量は1ミリ㏜」とする国際基準から見ても、「ヒバク安心神話」がいかに欺瞞に満ちたものであるかということ は明白である。2021年1月15日には「福島県は事故の発生時に18歳以下だった県民を対象とする検査で、 甲状腺がんと診断された人が昨年 6 月末時点で累計202人となった」と報じられた(時事通信社)。内閣府は「(小児甲状腺ガンについて)事故との因果関係はない」としているが、これは「100万人に1人か2人の発症率」 (鈴木真一福島県立医大教授・2012年9月12日「福島民報」)という従来の通説とも矛盾している。さら に事故収束にあたる労働者たちは、ヒバクを強いられながらの作業を日々余儀なくされており、その現場にはアジア各国からの技能実習生も動員されている。より弱い立場の人々に、より多くのヒバクが強いられているとい う、福島原発事故後の、「あってはならない現実」を見過してはならない。
(2) 破綻した「核燃料サイクル」
日本の原子力政策は、その始まりから一貫して、使用済み燃料を再処理し、プルトニウムやウランを取り出す 「再処理工場」と、使用したプルトニウムの量以上のプルトニウムを生み出すという「高速増殖炉」を擁する、 「核燃料サイクル」を目指してきた。このため各地の原発で使用された「使用済み燃料」は使用済み燃料プール に留め置かれ、このうちの一部は英国と仏国の再処理工場に再処理を委託してきた。ところが1993年に着工 した六ヶ所再処理工場は、28年を経て未だ完成を見ない。さらに国は、2016年に高速増殖炉「もんじゅ」 廃炉を決定した。「サイクル」が「サイクル」しなくなり、原発を推進する計画も完全に破綻し、いわば原発自体 が必要なくなったのである。この間、日本のプルトニウム保有量は増え続け、2018年末時点で45.7トンと なった(内閣府報告)。これは長崎型原爆に換算すると、6千発相当にあたる量である。
「核燃料サイクル計画」が一向に進まない中、国は、当初の計画にはなかった、プルトニウム燃料を使用する 「プルサーマル発電」導入を目指すようになった。これに対して、良識ある科学者らは「石油ストーブの燃料にガソリンを使うような危険な事だ」(藤田裕孝元慶應義塾大学教員など)と語り、市民と共に、重大な事故に至る 可能性が高くなると警鐘を鳴らし続けてきた。加えて言えば、「プルサーマル」で生じる使用済みプルトニウム燃料は、六ヶ所再処理工場では「再処理」できない。よって、よりやっかいな「核のゴミ」を増やすこととなる。
核の技術には「平和利用」も「軍事利用」もなく、表裏一体である。破綻したにも関わらず、日本が原発と再処理、プルトニウムにこだわり続ける事が、「核武装が目的ではないのか?」という世界からの疑念を生み出し、 特に東アジアにおける平和的共存の歩みにとって脅威となるであろう。このことは平和と共生を求め続けてきた、 我々キリスト者の歩みとも反する。
(3) 未完の技術
原子力(核)の技術は、今に至るまで、そのプロセスで排出される「核のゴミ」を処理できない「未完の技術」 であり続けてきた。「核のゴミ」は比較的安全な線量に減るまで 10 万年かかるとされ、あらゆる命からの完全隔 離を要する。原子力(核)の技術は、経済を何よりも最優先する、今の世代が生み出した「核のゴミ」を後世代 に背負わせる、極めて自己中心的で無責任な、技術と呼べない技術である。
 「核のゴミ」の最終処分案として国は「地下埋設処分計画」を進めてきた。2020年10月には、北海道寿 都町・神恵内村が、処分地選定の第1段階となる文献調査の受け入れを表明した。原発立地地域となった過疎地 域が“交付金漬け”となり、地域が分断されてきたのと同様、電力による利便は都会が享受し、やっかいなものは、 過疎地に押しつけ、お金で黙らせようとする傲慢な構図がここにもある。「地下埋設」であっても、そもそも日本 に「絶対安全な場所」などない。福島原発事故後、原発の運転差し止め判決が各地で相次いだ。2015年4月、 福井地裁による関西電力高浜3・4号基への再稼働を禁じる仮処分決定。2020年1月、広島高裁による四国 電力伊方3号基運転差し止め判決。2020年12月、大阪地裁による関西電力大飯3・4号基への原子力安全 委員会の設置許可申請取消し判決。これらの判決はいずれも、福島原発事故の大きな犠牲の経験を踏まえたもの であり、活断層、大陸プレート、火山帯がひしめき、地殻変動が盛んな、さらには気候変動に伴う自然災害の激 甚化とも相まって、日本には、原子力施設が稼働し、地下埋設処分できる安全な場所などない事の証左である。 よって、我々は、政府および各電力会社に対して、全ての原発の稼働を即刻停止し、「核のゴミ」の処分方法に関 して、あらゆる英知を結集させることを強く求める。
(4) 全ての核の技術からの撤退を訴える
我々は、命よりもお金を優先し、日本の原子力政策を推進してきた政財官学マスコミなどからなる「原子力ムラ」の傲慢を糾弾すると共に、日本における全ての原子力(核)技術からの速やかな撤退を求める。被爆者である哲学者・森瀧市郎は「平和利用」と「軍事利用」とに関わらず、「核と人類は共存できない」と語った。我々は、 もうこれ以上、他者の、しかもより弱い立場の命の犠牲の上にしか成り立たないこのシステムを明確に拒絶する。 近年、SDG’sの名の元で再び、核発電に光を当てようとする動きも見られるが、これも明確に拒絶する。
同時に、以下の点を我々は心に刻む。この技術を生み出した背景には、他者をむさぼり、より強く、より多く、 より豊かに、今さえ良ければそれでいいという価値観の中に浸ってきた私たち自身がある。原子力(核)の技術 を手放すことを求める我々は、我々自身の価値観や、生き方をも方向転換しなければならない。我々は、神の創 造し給うこの地上は、太陽・地熱・風力・水力・波力などあらゆる再生可能エネルギーに満ちあふれていることに、とりわけ福島原発事故以後、気づかされてきた。我々は一刻も早く他者を犠牲とするエネルギー政策からの転換を求める。「うめいている一つの被造世界」の中に共に生かされてある私たちは、科学技術を無批判に受け入れ、これにひれ伏してはならず、主なる神の前にあって謙虚に生きなければならない。そして今なお、強いられ たヒバクによって痛み、脅かされている命と連帯してゆくことをここに表明する。
「被造物がすべて今日まで、共にうめき、共に産みの苦しみを味わっていることを、 わたしたちは知っています。」(ローマの信徒への手紙8章22節)

                      2021年3月11日
日本バプテスト連盟公害問題特別委員会

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