インタビュー 聖書

【新春インタビュー】日本聖書協会新総主事・具志堅聖さん 聖書普及と教派を超えたネットワーク形成(2)

投稿日:2020年1月2日 更新日: -

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──具志堅先生は以前、福音派の日本福音同盟(JEA)総主事をされていました。その福音派の教会の多くは「新改訳聖書」を使っていますが、日本聖書協会の聖書は主にプロテスタント主流派とカトリックなどで使用されています。

「聖書協会共同訳」事業を推進してきた前総主事の渡部信(わたべ・まこと)先生も、「ぜひ新改訳側の翻訳者と一緒にやっていきたい」という思いはあったと思います。結局それは叶(かな)いませんでしたが、先々のことは分かりませんから、次の課題となるでしょう。今後、翻訳者の先生たちが引退していくことは「新改訳」も同じだと思うので、10年くらいすると状況はかなり違ってくるのではないでしょうか。

具志堅聖さん

──長らくあった福音派との壁を今後どうしていくのでしょうか。

すでにそのような壁を超えている先生方も多くおられます。これからはその事例を増やし、理解者・協力者の数が増えていくことが、壁をなくしていくことにつながると思います。当協会はエキュメニカルですから、違いはあっても不必要な垣根をなくしていくというのが、私を含めた全体の姿勢です。正教会とも交流を望んでおりますし、カトリック教会にも助けてもらわなければいけないと感じています。

──「キリスト新聞」(キリスト新聞社)と本紙「クリスチャンプレス」(日本聖書協会)の業務提携が先日発表されましたが、メディアとはどういう協力関係をお考えですか。

現時点ではプラットフォームを作って、さまざまなメディアと一緒にやっていくというのがベストではないかと考えています。例を挙げれば、スマホアプリの「スマートニュース」みたいなイメージです。良好な関係の中で、それぞれの特徴を生かしながらニュースを提供し、読者が読むものを選べるような仕組みが望ましいです。

キリスト教専門書店も似たような状況にあります。一般でも書店がどんどん閉鎖されていく中で、課題を克服するためには、協力が必要です。一つの都市に書店が何店かあるとすれば、「全部残せなくても、一つは残そう」というような建設的な話し合いをしていかないと。具体的な提案はまだありませんが、課題であると理解しています。

──聖書のデジタル化が進んでいますが、紙の聖書は今後減っていくのでしょうか。

聖書協会世界連盟の統計によると、聖書の電子化はマイナスの影響ではなく、電子書籍の売れ行きが伸びるとともに紙の本の売れ行きも伸びているというプラスの結果が出ています。特に米国の場合、紙の本の絶対量は確かに減っていますが、紙の本が完全に売れなくなることはありません。ですから、聖書は、紙はもちろんのこと、デジタル(電子)での使用・販売も進めていきます。どちらもニーズがあるからです。それをどのように展開していくかは今後の課題です。紙の本が完全に売れなくなることはありません。

──それはどうしてでしょうか。

デジタルは「情報」で、本は「プロダクト(製品)」だからです。本はプレゼントできますが、デジタルのプレゼントというのは、まだどうもピンときません。本は所有する楽しさや喜びが同時にあるのです。そういう理由で本のニーズはなくなることはないでしょう。ただ一般書店のように、売れる本と売れない本が完全に分かれるということはあると思います。

──「聖書協会共同訳」の翻訳について、神学者の段階では新たなチャレンジがあったのに、結果はそれほど変わらなかったと言われています。

これからも聖書学を研究される学者の先生方が「聖書協会共同訳」について論文を書かれたりすると思います。これまでの議論や批評も含め、それらを蓄積していく準備を私たちは始めています。『New聖書翻訳』という小冊子を出しているので、そこにも提言など書いてもらいたい。そのような学術的研鑽(けんさん)が、結局は聖書翻訳における財産になっていくと思っています。

──ミッション・スクールや教会では、聖書の翻訳が新しくなったからといって、聖書を取り換える体力はないのではないでしょうか。

各教会やミッション・スクールに新しい聖書を利用していただきたいのは山々ですが、その買い替えの判断はお任せするしかありません。私たちは売る側として自信を持って「聖書協会共同訳」をお勧めしますが、「新共同訳」を使い続けたいというところもあり、それは私たちも理解しています。

──新しい聖書に切り替えてもらうために、何か具体的な戦略などはありますか。

販売促進のためのキャンペーンを考えています。話を聞くと、各教会は「先にミッション・スクールが替えてから」、一方、学校は「教会が替えてから」と、お互いに様子をうかがっているところがあるようです。つまり、それぞれに事情があるというのが現状だと思います。現時点では、感謝なことに北陸学院が替えることを決められ、東北学院も興味を示してくださっています。「新共同訳」の時のようなスピード感はないかもしれませんが、動き始めているので、私たちとしてはとても嬉しいです。

──聖書アプリについて教えてください。

「ウェブバイブル」が1月から提供を始める予定です。「聖書協会共同訳」が発売されて1年、これまでは紙媒体のみでしたが、これからはテキスト・データでも読むことができます。また、当協会のホームページの本文検索にも「聖書協会共同訳」が昨年末に加わったばかりです。こちらは、これまでどおり無料で使えます。「ウェブバイブル」は有料ですが、本文検索とは違い、ルビもつきますし、フォントの大きさや行間なども設定できます。

今は教会でも、紙の聖書の代わりにiPadを持ってくる人が増えています。そういう意味でも、もうちょっとこれを工夫して、礼拝やミサの役に立てることができれば、教会の永続性にもつながるのではないかと感じています。

それから、これは私が勝手に言っていることなのですが、私たちの強みは、聖書協会が世界中につながっていることなので、今後、外国人労働者や定住者が増えていく中で、タガログ語など、外国語でデジタル化されたものも必要になるだろうと想定しています。(3に続く)

【「キリスト新聞」との共同取材】

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