潜伏キリシタンのよすがを東京でも 江戸殉教者巡礼

 

「江戸殉教者巡礼2018」(カトリック麹町教会主催)が1日、行われた。参加したのは、関東近県からの信徒、修道女など約90人。

約90人が参加した「江戸殉教者巡礼2018」

「潜伏キリシタン遺跡」というと、世界文化遺産に登録されたばかりの長崎を中心とした九州地方に広がっているイメージだが、東京、神奈川、千葉、茨城などにも、彼らの信仰の痕跡をうかがえる場所がある。今回は、都内に残る遺跡を巡った。

「都旧跡 元和キリシタン遺跡」の碑

まず、港区三田にある「札の辻(ふだのつじ)」。ここは、江戸時代、東海道から江戸への正面入り口であったことから、通行人の多い三辻(三差路)の一角を利用して高札が掲示された場所だ。

1623年12月4日、イエズス会士のデ・アンジェリス神父、フランシスコ会士のガルペス神父、旗本のジュアン原主水胤信(はら・もんど・たねのぶ)をはじめ、約50人がこの小高い丘で殉教した。火刑を一目見ようと何千人もの見物客が集まったという。この20日後のクリスマスイブには、その妻や子ども24人と、彼らをかくまった13人が処刑にされた。その後もここでは何度もキリシタンが見せしめのために殺されている。

「徳川3代将軍家光が元和9年(1623)10月13日、江戸でキリシタンを処刑したことは徳川実紀によって知られている。処刑された者はエロニモ、デアンゼルス神父、シモン、遠甫、ガルウエス神父、原主水ら50人で、京都に通ずる東海道の入口にある丘が選ばれたと、パジェスの『日本キリシタン史』にあるが、その他は恐らくもとの智福寺のあった西の丘の中腹の辺であろうと考えられる。その傍証としては智福寺開山一空上人略伝記にこの地が以前処刑地で長い間空地となっていたが、そこに寺を建てることは罪人が浮かばれると考えたとあることなどがあげられる。なお、寛永15年(1638)12月3日にも同じ場所でキリシタンらが処刑されている」

現在は開発が進み、三田ツインビル西館(ラ・トゥール三田)が建てられているが、その広場の奥まった高台に「元和のキリシタン殉教碑」がある。ここで祈りと賛美をささげ、静かなひと時を持った。

次に向かったのは、札の辻から南に2キロほどのところにあるカトリック高輪教会。ここには、さまざまなキリシタン遺物や、江副陸愛(えぞえ・たかよし)氏が描いた「江戸大殉教図」、聖堂前庭には「江戸の殉教者顕彰碑」(札の辻にあったものを移した)がある。

江副陸愛氏が描いた「江戸大殉教図」

同教会には「原主水の最期のことば」として、このような言葉が掲げられていた(出典:『隠れたる江戸のキリシタン遺跡』1929年発行)。

「我は、徳川家康の旗本に其(そ)の人ありと知られたる原主水なり。真の教えたる公教を奉じ、自ら天主の誡(いまし)めを守り、人にも勧めしが為(ため)に嫌忌(けんき)せられ、罪なくして、配所の月を見ること久し。其(その)間また、百端の責を受けて、遂(つい)に不具の身となる。看(み)よ、我が指は断たれてなし、足は筋を断たれて萎(な)えたり。然(しか)れども、未来を助かる道を得たれば、いささか憂(うれ)ふる心なし。今また基督(キリスト)のために死する時来たり。天国に行くことを喜びつつ、進んで刑場に着す。是(こ)れ、我が勝利を得たるにて此(こ)の上なき幸福なり」

「江戸伝馬町牢御椓場(おたくば)跡」の石柱。御椓場とは打ち首(斬首)されるところ。

次に向かったのは、小伝馬町にある牢屋敷跡。東京メトロ日比谷線の小伝馬(こでんま)町駅を出てすぐのところ、2618坪(約8639平方メートル)もの敷地面積にいくつもの木造建築が建ち並び、その周囲には高さ4・5メートルの土壁、さらにその外側には濠(ほり)も設けられていたという。

日本人として初めてエルサレムに行き、ローマで司教に叙階され、禁教下の日本に戻って殉教したペトロ岐部(きべ)も、ここに入れられていた。彼は1630年、16年ぶりに帰国してから、多くの信者が逃れた仙台藩に行って布教していたが、39年に見つかり、江戸に送られた。遠藤周作『沈黙』にも出てくる棄教した宣教師フェレイラから信仰を捨てるよう説得されるが、逆に彼に信仰に戻るように勧めたという。

激しい拷問を受けても棄教することなく、穴吊りの刑に処せられても、隣にいる信徒を励ましたとして、ついには穴から引き上げられ、腹をあぶられて殉教した。

大安楽寺の塀にある「江戸伝馬町処刑場跡」の碑

牢獄のあった跡地には現在、寺や公園などがある。子どもたちの笑い声が響き、人々が思い思いの時間を過ごすこの場所で、かつてそのような凄惨(せいさん)な処刑が行われたとは、誰も想像できないだろう。

一行はその後、カトリック浅草教会に向かい、ミサをささげてから巡礼は解散となった。

この夏、強い信仰を持った先人に思いを馳(は)せ、その史跡を巡ってみてはいかがだろうか。

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