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樋口進氏、「聖書協会共同訳」について語る(4)

投稿日:2018年8月30日 更新日: -

 

新翻訳聖書セミナーが6月24日、松山ひめぎんホール(愛媛県松山市)で開かれた。そこで、「聖書協会共同訳」についての講演を、翻訳者・編集委員である樋口進(ひぐち・すすむ)氏(夙川学院院長)が行った。その内容を連載でお届けする。

樋口進氏=6月24日、松山ひめぎんホール(愛媛県松山市)で

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4 実例(1)

「新共同訳」と比べて、「聖書協会共同訳」がどのような訳になるのかの例をいくつか紹介しましょう。

創世記1:27

新共同訳では「神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された」と訳されています。ここで「かたどって」と訳されている語「ツェレム」は「かたち」という名詞です。

「聖書協会共同訳」では、「神は人を自分のかたちに創造された。神のかたちにこれを創造された。男と女に創造された」と適切に訳されました。「口語訳」では「神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された」と訳され、「新改訳2017」でも「神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして人を創造し、男と女に彼らを創造された」と適切に訳されています。

七十人訳では「エイコン」と訳され、これは新約でも「かたち」と訳されています。ちなみに、ラテン語では「Imago Dei」(神の像)といいます。

創世記2:7

「新共同訳」では、「主なる神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった」と訳されました。「聖書協会共同訳」では、「神である主は、土の塵で人を形づくり、その鼻に命の息吹を吹き込まれた。人はこうして生きる者となった」と訳されました。

ここは、原文は「YHWH・エロヒーム」ですが、旧約には「アドナイ・YHWH」(発音はアドナイ・エロヒーム)という表現も多く出ます。「新共同訳」では、どちらも「主なる神」と訳されていますが、「聖書協会共同訳」では「YHWH・エロヒーム」は「神である主」、「アドナイ・YHWH」は「主なる神」と区別して訳されました。ちなみに、「新改訳2017」でも「神である主」と適切に訳されています。

「YHWH」(神の名)は「アドナイ」(「わが主」という意味)と発音されますが、「アドナイ・YHWH」のときは、「アドナイ・アドナイ」でなく、「アドナイ・エロヒーム」と発音されます。そして日本語聖書の多くでは、「主」と訳されます(「岩波訳」では「ヤハウェ」)。ただ1箇所、創世記22:14だけは、原音表記で「ヤハウェ・イルエ」と記されています。

「聖書協会共同訳」では「土」と「人」に脚注があり、ヘブライ語では「アダマ」と「アダム」の語呂合わせになっていることが示されています。

創世記2:12

「新共同訳」では、「その金は良質であり、そこではまた、琥珀(こはく)の類(たぐい)やラピス・ラズリも産出した」と訳されていますが、最近の研究成果により、「ブドラク」は「琥珀」ではなく、「ショーハム」も「ラピス・ラズリ」ではないことが明らかにされました。そのため「聖書協会共同訳」では、「その地の金は良質で、そこではまた、ブドラク香やカーネリアンも産出した」と訳されました。ただ、宝石の同定はなかなか難しいようです。

創世記2:24

「新共同訳」では、「こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる」と訳されました。「イッシャ」は「女」とも「妻」とも訳されますが、「フェミニズムの視点から、ここは夫婦ということが意識されているので、『その妻』と訳すのが適切である」という意見が出されました。そこで「聖書協会共同訳」では、「こういうわけで、男は父母を残して、妻と結ばれて一体となる」と訳されました。ちなみに「新改訳2017」では、「それゆえ、男は父と母を離れ、その妻と結ばれ、ふたりは一体となるのである」と適切に訳されています。

創世記3:16

「新共同訳」では、「神は女に向かって言われた。『お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め/彼はお前を支配する』」と訳されています。原文は、「あなたのイッツァボーン(苦しみ)とあなたのヘローン(身ごもり)」で、必ずしも二詞一意ではないという意見があります。「岩波訳」では「あなたの労苦と身ごもり」となっています。

フェミニズム的視点では、「身ごもり」は苦しいけれど、他方、祝福でもあるという意見だというのです。「聖書協会共同訳」ではこの意見を反映して、脚注にそれを別訳として載せました。「神は女に向かって言われた。『私はあなたの身ごもりの苦しみ(別訳「苦しみと身ごもり」)を大いに増す。あなたは苦しんで子を産むことになる。あなたは夫を求め、夫はあなたを治める」。

それから「イシャーク」は、正確には「あなたの夫」で、一般的な「男」(新共同訳)ではありません。ここもあくまで夫婦の関係を言っており、一般の男を求めるというのではないので、「あなたは夫を求め」と訳されました。(つづく

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