カトリック東京大司教区、キリストの十字架の受難を味わう聖週間、復活の主日のミサも非公開で

 

カトリック東京大司教区の菊地功(きくち・いさお)大司教は23日、「新型コロナ・ウイルス感染症に伴う3月30日以降の対応」と題した文書で、「3月30日(月)以降も、当面の間、東京教区のすべての信徒を対象に、主日のミサにあずかる義務を免除します」、そして「当面の間、不特定多数が参加する公開のミサを原則として中止します」と通知した。

カトリック東京大司教区の菊地功大司教(©古郡美はる)

4月5日(日)の「枝の主日」から、イエスがエルサレムに入城してから十字架につけられるまでの受難を味わう1週間を、カトリックでは「聖週間」と呼び(プロテスタントでは「受難週」)、1年間の典礼暦のクライマックスを迎えることになる。特に9日(木)の「主の晩さんの夕ベのミサ」から「聖なる3日間」が始まり、10日(金)の「主の受難」、11日(土)「復活の聖なる徹夜祭」と、本来なら1年で最も多く人々が教会に集う時だ。そして、12日は「復活の主日」(イースター)。聖週間のために奉仕者の準備を進めていた教会もあった。

その聖週間の典礼についても「すべて非公開とします」とし、「復活祭の洗礼式については、主任司祭の指示に従ってください」と指示が出た。

その代わり、毎週日曜日午前10時からユーチューブでライブ配信されている、東京カテドラル聖マリア大聖堂(カトリック関口教会)での主日ミサを継続するとともに、「聖週間の典礼も配信します」という。

前回、「新型コロナ・ウイルス感染症に伴う3月15日以降の対応」という文書が10日に出され、「3月15日(日)から3月29日(日)まで、東京教区のすべての信徒を対象に、主日のミサにあずかる義務を免除」するとともに、「3月15日(日)以降も当面の間、公開のミサを原則として中止」するとの決定があったが、それが延長されたことになる。

「新型コロナ・ウイルス感染症に伴う3月30日以降の対応」の全文は次のとおり。

新型コロナ・ウイルスによる感染症は世界的な規模で拡大を続け、各地で重篤な症例の報告が相次いでいます。ご存じのように世界各国でも、公開のミサなど教会活動の中止が決められています。

3月19日の政府専門家会議の新たな見解に基づき、3月30日以降の東京教区の対応を以下のように定めましたので、具体的な対策をお願いいたします。

1 3月30日(月)以降も、当面の間、東京教区のすべての信徒を対象に、主日のミサにあずかる義務を免除します。

2 3月30日(月)以降、当面の間、不特定多数が参加する公開のミサを原則として中止します。

3 結婚式と葬儀については、充分な感染症対策をとった上で、通常通り行います。

4 諸行事に関しては、20名程度の小さい集まりを除いて、できる限り延期または中止するようにご配慮ください。実施する場合でも、手指消毒はもとより、換気を充分に行い、互いの間隔を大きくとり、短時間で終了するように心がけてください。

5 聖週間の典礼は聖香油ミサを含めすべて非公開としますが、復活祭の洗礼式については、主任司祭の指示に従ってください。

6 いのちを守るため、特に高齢で持病のある方にあっては、自宅において共同体の祈りに加わるようになさってください。

7 四旬節愛の献金をはじめ、この典礼季節に特別に献金をされてきた方は、個別に主任司祭にご相談ください。

なお、関口教会の信徒の方のご協力を得ておこなっている主日ミサのインターネット映像配信ですが、これを継続するとともに、聖週間の典礼も配信します。

なお映像配信については、字幕などのサービスを常時提供できないこともあります。担当してくださる方にボランティアとしてお願いしていますので、ご理解いただきますようにお願いいたします。

また同日、「聖週間を迎えるにあたって」という文書も菊地大司教は発表し、ユーチューブでも同じ内容の言葉を菊地大司教が語りかける動画が配信されている。「わたしたちは、これまでにない厳しい挑戦を受け続けながら四旬節を過ごしております。感染症の拡大が要因とはいえ、四旬節中にミサにあずかることなく、また御聖体を受けることなく過ごすような事態となってしまったことは、非常に残念ですし心苦しく思っています」、「わたしたちはいま、体験したことのない聖週間と復活祭を迎えようとしています」と、異例の事態の中で共同体として信仰を一つとすることを訴えた。

その全文は以下のとおり。

新型コロナ・ウイルスによる感染は世界的レベルで拡大し、毎日のニュースにおいて国内外における感染者と死者の増加が報道されない日はありません。

亡くなられた方々の安息を祈ると共に、感染された方々、現在治療を受けられている方々の一日も早い回復をお祈りいたします。同時に、対策や治療のために日夜努力されている研究者、医療関係者の方々の超人的な働きには感謝の言葉しかありません。この方々の健康のためにお祈りいたします。

世界的なレベルで感染が拡大する中、世界各国は鎖国のような状況に陥っていますが、このようなときだからこそ、政治のリーダーたちが互いの相違を乗り越えて、信頼の内に協力しあう世界の実現を願っています。また政治のリーダーにあっては、すべてのいのちを守ることを優先され、様々な側面から忘れ去られる人のないように、対策を進められることを願っています。

そして宗教に生きるわたしたちは、祈りの持つ力への信頼を失わず、それぞれの場にいながらも、信仰に結ばれながら、祈り続けたいと思います。

わたしたちは、これまでにない厳しい挑戦を受け続けながら四旬節を過ごしております。感染症の拡大が要因とはいえ、四旬節中にミサにあずかることなく、また御聖体を受けることなく過ごすような事態となってしまったことは、非常に残念ですし心苦しく思っています。

もちろんミサがないことで教会共同体が崩壊してしまったわけではありません。わたしたちは信仰によって互いに結ばれているのだという意識を、この危機に直面する中であらためて心に刻んでいただければと思います。祈りの内に結ばれて、キリストの体をともに作り上げる兄弟姉妹として信仰の内に連帯しながら、この暗闇の中で、いのちの源であるキリストの光を輝かせましょう。弟子たちを派遣する主が約束されたように、主は世の終わりまで、いつも共にいてくださいます。(マタイ28章20節)

この挑戦は、わたしたちに、生活において信仰を意識する機会を与えています。わたしたちはこの困難な時期を、信仰を見つめ直したり、聖体や聖体祭儀の意味についてあらためて学んだり、霊的聖体拝領にあずかったりと、普段はあまり気にとめていない信仰生活を、見直す機会ともしたいと思います。

わたしたちは、ひとりで信仰を生きているのではなく、キリストの体である共同体のきずなの内に結ばれています。いまこそそのきずなが必要です。共同体にあってわたしたちは、すべてのいのちを守るようにと呼ばれています。自分のいのちを守るためだけではなく、互いのいのちを守るために、いまこそ思いやりの心遣いが求められています。様々な立場で感染症と闘っている専門家、病気と闘っている患者、社会的状況や経済的状況によっていのちの危機に直面している人々。すべてのいのちが守られるように、いまこそわたしたちの祈りと心配りが必要です。

東京教区ではこれまで二度にわたる注意喚起を発出し、感染予防を訴えてきました。

また、2月13日の香港教区での公開ミサ中止を受けて信徒の医療専門家と話し合い、2月24日の厚生労働省の専門家会議の見解に基づいて、一回目の公開ミサの中止を決定いたしました。さらに3月9日の司祭評議会での話し合いと、同日の厚生労働省専門家会議の見解に基づいて、公開ミサ中止延長を決定いたしました。

今回の感染症にあっては、感染者の多くが無症状なままで回復していると報告されています。しかし大きな問題は、その感染者の多くが、無症状なまま感染源となり得ることにあります。

厚生労働省の専門家会議は、感染が拡大しやすい環境として次のように指摘します。

「これまで集団感染が確認された場に共通するのは、①換気の悪い密閉空間であった、②多くの人が密集していた、③近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場です」

これまでのインフルエンザ流行対策などでは、熱があったり体調を崩している人が家で療養してくだされば、健康な信徒が教会に集まることには問題がないのですが、今回は、自覚症状がないとしても実は感染している人が存在する可能性があり、その方から、特に高齢で持病のある方に感染した場合、重篤な症状を引き起こす可能性があります。

従って、公開のミサを自粛する一番の理由は、自分が感染しないようにするためではなく、意識しないまま感染源となり、他の方を危険にさらす可能性を避けるためです。

まもなく聖週間がはじまるのを前にして、政府の専門家会議の見解に基づいて東京教区の対応を別途発表いたしました

わたしたちはいま、体験したことのない聖週間と復活祭を迎えようとしています。聖週間の毎日を、どうか大切にしてください。聖週間の聖書朗読を必ずお読みください。祈りを共にしてください。苦難に打ち勝ち復活の栄光に達した主の力に、わたしたちをゆだねましょう。信仰を生きる意味をあらためて見つめ直しながら、一日も早い事態の終息を、いつくしみ深い神である御父に祈りましょう。

聖なる神の御母よ、
あなたの保護のもとにわたしたちは身を寄せます。
試練の中で祈るわたしたちを見捨てないでください。
栄光ある、祝福されたおとめよ、
わたしたちをあらゆる危険から守ってください。
(教皇フランシスコの祈りより)

 






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