「星野富弘詩画集カレンダー 花と詩のアート展」川口市で開催中

 

「星野富弘詩画集カレンダー 花と詩のアート展」(埼玉県川口市立アートギャラリー・アトリア)で3日、富弘美術館(群馬県みどり市)館長の聖生清重(せいりゅう・きよしげ)さんが講演を行った。

聖生清重さん

今年、開館28年目を迎えた同館は、風光明媚(めいび)な山中にある。交通が不便であるにもかかわらず、国内外から累計700万人もの人々が訪れているという。

「富弘美術館に訪れると、入り口に立った自分と、出口に立った自分とでは、まったく違う人になったように感じます。それは、富弘作品が放つ『励まし』『やさしさ』『温かさ』が心に触れるからではないでしょうか。今回のアート展でも同じように感じてくだされば」

そうあいさつした聖生さんは、群馬県の山奥の小さな村で富弘さんと一緒に育った。いつも活発でいたずら好き、運動は万能だった富弘さんと、引っ込み思案でおとなしかった聖生さんは親友だった。

中学校の体育教師になってわずか2カ月、富弘さんが24歳の時に事故は起きた。器械体操の部活指導中に富弘さんが着地に失敗し、頸椎を損傷したのだ。一命は取り留めたものの、逆にこのことが富弘さんを苦しめた。首から下がまったく動かず、入院生活は9年に及ぶ。

「私も見舞いに行ったのですが、見るのも話すのもつらくて、何て声をかけてよいか分かりませんでした。昨日まで活発に動いていた体が動かず、ただ天井を見て寝ているばかり。あまりにもそばにいるのがつらくて、見舞いに行く足も遠のいたのですが、いちばんつらかったのは、9年間も付き添っていたお母さんだったのではないでしょうか」

ごはんを口もとに運ぼうとした手が震えて、少し顔についてしまったことがあった。すると富弘さんは、口に含んでいたものを母に向かって吐き出したのだ。長年の闘病でうっ屈した怒りをぶつける相手は母しかいなかった。そして、ごはんを拾い集める母親の背中に向かって、追い打ちをかけるように罵声を浴びせかけた。

「俺(おれ)なんか産まなきゃよかったんだ」

母親は部屋を出て、しばらくして戻ってみると、富弘さんの顔にハエがとまっている。とっさにハエたたきを持ったものの、思い直して、右の手で優しく顔を押さえただけだった。ハエは逃げてしまったが、ざらついた母の手の感触が富弘さんの体全体に伝わった。母はあれほどの言葉を浴びせられ、憎しみの中にあったはずなのに。

「これが母なのだ。これが私を産んでくれたたった一人の母なのだ。この母なくして私は生きられないのだ」

絶望の中にいた富弘さんだったが、病室に届いた励ましの手紙にお礼を書きたいと、口に筆をくわえて文字を書き、見舞いの花を絵にして添えたのが、詩画を描くきっかけとなった。

聖生さんは言う。

「なぜ富弘さんの詩画が人々の心を打つのでしょう。一つは、自然豊かな山村で生まれ育ち、いつも草花が生活の中にあったこと。もう一つは、彼の信仰ではないでしょうか。死にたいと思っていても、心臓は動いている。『自分は誰かに生かされている』という感覚がいつもあったようです。そして、ある日、先輩からもらった聖書を開き、『すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます』(マタイ11:28、新改訳)という聖句に出会って、富弘さんの心に深く刻みこまれたのです」

以来、富弘さんは、「花や木に絵を描かせていただく。私は生かされている」と話し、今もなお創作を続けている。

会場を訪れたクリスチャンの女性は、「川口市で富弘さんの作品が見られる貴重な機会。できれば、若い人や子どもたちにも見てもらいたい」と感想を述べた。

詩画展は8日まで。詳しくはこちら

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