コラム

神さまが共におられる神秘(10)稲川圭三

ご自分を食べさせることを知っておられた

2015年7月26日 年間第17主日
(典礼歴B年に合わせ3年前の説教の再録)
イエスは座っている人々に、ほしいだけ分け与えられた
ヨハネ6章1~15節

説 教

今日の福音は、ガリラヤ湖のほとりの出来事です。イエスは小高い丘に登って弟子たちと一緒にお座りになりました。

イエスは目を上げ、大勢の人々がご自分のほうに来るのをご覧になって、弟子のフィリポに、「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだろうか」と言われました(ヨハネ6:5)。

「こう言ったのはフィリポを試みるためであって、御自分では何をしようとしているか知っておられたのである」とあります(6節)。

なんだかイエスさまが意地悪を言っている(笑)ようにも受け取られるかもしれませんが、そうではありません。先に「問い」を立てておくと、その後、その問いに対して「あ、こういうことだったのか」と理解が深まるのです。問いがないまま何か物事を体験するより、先に問いがあって、その中で出来事を体験していくことは、物事を深く分からせるためにとても大切なことです。

「その数はおよそ五千人であった」とありますが(10節)、当時は女や子どもは数えずに男だけを数えるという習慣でした。ですから、おそらく5000人の倍くらいの人がいたと思われます。大相撲が行われる両国国技館の収容人数が約1万人ということですから、満員御礼になっている時の人の数がイエスさまのもとに押し寄せたと考えたらいいかもしれません。

イエスさまが「この人たちに食べさせるには、どこでパンを買えばよいだろうか」と聞くと、フィリポは「めいめいが少しずつ食べるためにも、二百デナリオン分のパンでは足りないでしょう」と答えました(7節)。1デナリオンは1日分の給料だったので、200日分、7カ月分の給料を払っても、みんながちょっとずつ食べるためにも足りないということになります。つまり、「そんなの無理です。できません」という意味の答えでした。

イエスさまは「御自分では何をしようとしているか知っておられたのである」とあります。つまり、5つのパンと2匹の魚というごくわずかなもので、すべての人を食べさせるということを知っていたということです。でも、イエスさまがなさろうとしていたのは、ただ人々にパンを食べさせることだけではありませんでした。

イエスさまはこう言われました。「人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」(マタイ4:4)。生きるためにパンが必要です。でも、人間はパンだけで生きるいのちではなく、神の口から出る言葉である「永遠」によって生きるいのちです。

イエスさまは、この永遠のいのちのパンを食べさせたいとお考えになっていました。そして、そのようになさろうとしていたことをご存じだったのです。

イエスさまはパンも食べました。でも、パンだけでなく、神の言葉を食べて生きている方でした。真のいのちを生きているお方でした。だから何とかして、すべての人に神の言葉を食べさせたかったのです。

すべての人に神の言葉を食べる力を与えるために、イエスさまがお考えになったのは、神の言葉を食べる力を持っているご自分のいのちを食べさせることでした。今日もミサで「皆これを取って食べなさい。これはあなたがたのために渡される私の体である」と言ってパンを食べさせられます。

このパンを食べるとき、食べられたイエスさまは、私たち一人ひとりと一緒の向きで生きるいのちになってくださり、食べる私たちは、食べられたイエスさまと一緒の向きで生きるいのちになるのだと思います。

「御自分では何をしようとしているか知っておられた」とは、その人たちにパンを食べさせることもそうですが、もっと奥深くは、「いずれ私がこのいのちをすべての人に食べさせることになる」と知っておられたということだと思います。

そして、それが実現したのは、イエスさまが死んで復活された後のことです。「これを私の記念として行いなさい」と命じられたミサを通して、弟子たちを通して人々にパンを食べさせ、食べた人の中にイエスさまのいのちが同じ向きで立ち上がって生き、一緒に生きるいのちになることを実現なさいました。

復活されたイエスさまがどこかに離れて、何かくつろいでいらっしゃるとは、私にはまったく思えません。神さまと完全に一致して、私たち一人ひとりと一緒にいるいのちになってくださっている。そうでないはずがない。そうではないなどということがあろうか、いや、あってはならないと思います。

今日も、一緒に生きてくださるイエスさまと共に生きる者になりますように。ご一緒にその恵みを願って、この感謝の祭儀をおささげし、そして今日、神さまと一緒に生きる恵みを、家族と一緒に生きる恵みを、お友達と一緒に生きる恵みを感謝したいと思います。

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