【毎週日曜連載】神さまが共におられる神秘(106)稲川圭三

聖霊──すでにいただいている真実に出会わせてくださる方

2017年6月4日 年間第1主日
(典礼歴A年に合わせ3年前の説教の再録)
聖霊を受けなさい
ヨハネ20:19~23

今日は「聖霊降臨」の祭日を迎えています。今日までが「復活節」で、明日から「年間」という時期になります。

「その日、すなわち週の初めの日の夕方」とあります(ヨハネ20:19)。「その日」とは、イエスがすでに復活しておられた日の夕方という意味です。

イエスはどこに復活されたのでしょうか。弟子の中、すべての人の中に共にいてくださる神さまの真実の中に復活されたのです。

それにもかかわらず、「弟子たちは、ユダヤ人を恐れて、自分たちのいる家の戸にはみな鍵をかけていた」(19節)。

私たちはどういう時に恐れて、閉じこもったり、人に会いたくなくなったりしてしまうでしょうか。「自分の中にはもう何もない」という時、人に会うことが怖くなり、外に出ることができなくなります。

弟子たちは「あなたはメシアです。神の子です」と心から信じながらも、イエスが十字架にかけられる時には見捨ててしまったのです。

しかしイエスは、弟子たち一人ひとりの中に神のいのちがあることを見る人でした。地上で共におられる時、「罪人」と言われていた人の中に神のいのちを見ました。徴税人、娼婦など、人から後ろ指を指される人の中に永遠の神のいのちがあることを見ました。

それを見て、告げて、何とかして出会わせようとされた方がキリストです。しかし、この方は十字架につけられました。しかし十字架の上でも、自分を殺そうとする者の中にも神のいのちを見て祈り、死に、復活されたのです。

そして、人に会うことを恐れて閉じこもっている弟子たちのただ中に立たれ、「あなたがたに平和があるように」と言われました(19節)。

平和とは何か。聖書で言う「平和」とは、「神が共にいて、何も欠けることなく完全に満たされている」という真実のことです。

「自分の中には何もなく、イエスを見捨てて、もう自分は終わってしまった」という思いのそのただ中にイエスは立って、「あなたがたに平和があるように」と言われました。「あなたの中には何もないのではなく、神が共におられる」と告げたのです。

すべての人間の中に神さまが一緒にいてくださいます。そして、「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」(マルコ1:11)という呼びかけを受けているのです。

私たちはそういう呼びかけより違う呼びかけに耳を傾けてしまう存在なので、そのことに出会えません。しかしイエスさまは、「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」と言われる神さまが自分の中にいて、一心同体で生きてくださっていることをよく分かっていました。

何よりもイエスが洗礼を受けて聖霊を注がれた時、天の御父が一緒に生きてくださることに出会わせてもらったのです。そして、「何とかしてこのことをすべての人に告げなければならない」と、弟子も取って寝食を共にし、彼らにはことさら念入りに告げたのです。

でも、イエスが十字架にかけられた時、弟子たちはそのことが分からず、みんな逃げてしまいました。

イエス・キリストのこの「救い」のわざは失敗したのですか。失敗ではありませんでした。

イエスはこの地上で生きておられる時、人間の中に神のいのちがあることを見ました。十字架の上でも見ました。そして、その真実に結ばれて死に、その真実の中で復活しました。弟子たちの中に、私たちの中にイエスは復活してくださったのです。

今日、注がれる聖霊とは、その真実に出会わせてくださる霊です。聖霊は、今までなかったものを何か付け加える方ではないのです。すでにいただいている真実に深く出会わせていただく働きのお方です。

神さまは、創造の初めから人間と一緒にいてくださるお方です。そしてイエスは洗礼の時、霊が鳩のように天から降って、「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」という声を聞き、そのすでにある真実に出会わせていただいた。イエスは聖霊によってそのように出会わせていただいたのです。

ちょうどそのように、復活のキリストも私たちに聖霊を注いで、もうすでにいただいている真実に「出会わせるよ」とおっしゃるのです。

そして、「父が私をお遣わしになったように、私もあなたがたを遣わす」(21節)と言われました。「その復活の真実を告げるようにあなたがたを派遣する」と言われているのです。

神さまは共におられます。キリストはその中に復活しておられます。だから、その真実に気づかせていただいたなら、その良い知らせを人にも告げるようにと私たちは命じられているのです。

そのことを「そうなんだ」と分からせていただくのは、洗礼によっていただく聖霊の恵みになります。そのことに出会わせていただいたなら、人にも伝えて生きるいのちになっていきますよう、ご一緒にお祈りをしたいと思います。

 






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