【最終回】神さまが共におられる神秘(110)稲川圭三

 

私の安らぎを与えたいので、一緒に歩んでほしい

2017年7月9日 年間第14主日
(典礼歴A年に合わせ3年前の説教の再録)
私の軛(くびき)は負いやすく、私の荷は軽い
マタイ11:25~30

「すべて重荷を負って苦労している者は、私のもとに来なさい。あなたがたを休ませてあげよう」とイエスさまは言われます(マタイ11:28)。

イエスさまが私たちに「休ませてあげよう」とおっしゃるのは、ご自身がその「休み」にあずかっておられたからです。それは、天の父である神さまと一つになって生きるという「休み」「安らぎ」でした。

神さまとの一致は、知恵ある者や賢い者には隠されていて、幼子のような者にお示しになられたとイエスさまは言われます(25節)。

「幼子のような者」とは誰でしょうか。まずイエスさまです。そして、父である神さまも「幼子のような者」ではないでしょうか。

「父は、悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださる」(5:45)

このようにイエスさまは言われました。つまり父である神さまは、ご自分のいのちも注いでおられる方なのです。

神さまは、私たちが生きるために、ご自分のすべてを私たちに注いでおられます。人間の創造の初めから、ご自分のいのちの息を吹き入れてくださっています。そういう幼子のような方ではないでしょうか。

さて、「すべてのことは、父から私に任せられています」とイエスさまは言われます(27節)。

「任せられています」という言葉は、もともとのギリシア語では「パラディドーミ」という単語で、ほかの箇所では「引き渡す」と訳されていて、イエスさまが息を「引き取られる」という箇所も「パラディドーミ」でした。

つまり天の父である神さまは、私たちにご自分のいのちを引き渡されているのです。そしてイエスさまも、ご自分のいのちを父である神さまに引き渡しておられる。そういう一致を生きておられました。

「父のほかに子を知る者はなく、子と、子が示そうと思う者のほかに、父を知る者はいません」と言われます(同)。

父である神さまは、子であるイエスさまと完全に一致して、知っておられました。また子であるイエスさまも、完全に一致して知っておられました。そして、その「知る」という出会いを「子が示そうと思う者に示してくださった」というのが今日の福音です。

「子が示そうと思う者」とは誰のことでしょうか。それはすべての人です。イエスさまは、すべての人の中に父である神さまが生きておられることを知っておられました。そして、そのことを認めて生きてくださいました。

イエスさまはご生涯のすべてで、父である神さまが人間の中にご自身のいのちを引き渡しておられることを見て、告げてくださいました。

でも私たちは、告げられるだけでは分かりません。それでイエスさまは、みんなが知ることができるように、十字架の上で死に、復活されたのです。

イエスさまは十字架の上で、自分を殺そうとする者の中にも、父がご自分のいのちを引き渡しておられることを知り、その真実の中に結ばれ、そこで死に、復活されました。今やすべての人の中に父である神がご自分のいのちを引き渡しておられ、その真実の中にキリストが復活しておられます。

今日、キリストがすべての人の中に復活して一緒にいてくださるので、「そのお方と一緒に生きるように」と呼びかけを受けています。キリストと一緒に生きるとは、人間の中に神さまのいのちが引き渡されていることを見て歩むことだと思います。

イエスさまが「負うように」と言われた軛(くびき)とは、首を横につなげて、隣にイエスさまが負ってくださる軛ですが、自分の今までの歩みを考えてみたら、いろいろな人に助けられて歩んできたと思わざるを得ません。小さいころ悪くならなかったのは、一緒に家族がいて、何か言葉を超えた絆(きずな)でつながっていたからではないかなと思います。

私は5人きょうだいですが、恩師の下山正義神父さまは母に、「よくお前のところの子どもたちはグレなかったな」と言われたそうです。母は時々、「今日は教会行きたくないなあ」と思っても、父は単純で熱心な人なので、「俺は行くぞ」と言って、家族を教会に連れて行ったのです。

目に見えない軛を一緒に負ってくださるのはキリストです。でも具体的には、私たちの周りで一緒に歩いてくれる人を通してキリストが現れています。そのことに心を開いて、自分の周りにいる人に「神が共におられます」と認めて祈るようにとイエスさまは教えておられるのだと思います。

「一緒に歩くことを通してしか私の安らぎは共にすることができない」、「物のように与えることはできない」、「だから一緒に歩んでほしい」という切なるキリストのお願いなのだと思います。ご一緒にお祈りをしたいと思います。

 






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