コラム

神さまが共におられる神秘(26)稲川圭三

私と一緒に生きてほしい

2015年11月15日 年間第33主日
(典礼歴B年に合わせ3年前の説教の再録)
人の子は、彼によって選ばれた人たちを四方から呼び集める
マルコ13:24~32

今日読まれたマルコ13章24~32節は「小黙示録」とも呼ばれる箇所で、新約聖書全体の中で最も解釈や理解が難しいと言われています。また、マルコ福音書全体の中で最も長く、イエスさまが弟子たちに語られる箇所です。イエスさまの、愛する弟子たちへの切々とした遺言に近い言葉だと受け取っていいと思います。

マルコ13章は、こう書き出されています。

イエスが神殿の境内を出て行かれるとき、弟子の一人が言った。「先生、御覧ください。なんとすばらしい石、なんとすばらしい建物でしょう」。イエスは言われた。「これらの大きな建物を見ているのか。一つの石もここで崩されずに他の石の上に残ることはない」(1~2節)

それを聞いて弟子たちはイエスさまに、「そのことはいつ起こるのですか。また、そのことがすべて実現するときには、どんな徴(しるし)があるのですか」と尋ねました(4節)。その問いに対する答えが今日の箇所です。イエスさまは、「その日、その時は、だれも知らない」とおっしゃいます(32節)。

「どんな徴があるのですか」という問いに関しては、こうおっしゃっています。「戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞いても、慌ててはいけない。……あなたがたはすべての人に憎まれる。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる」(7~13節)。そうして、「このような苦難の後、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は空から落ち、天体は揺り動かされる」(24~25節)。このようなことが起こるのを見たら、「その日、その時」が近いと悟りなさい、と言っておられます。

イエスさまがおっしゃった「その日、その時」が、「神殿が崩壊する時」なのか、「ご自分のいのちの死の時」なのか、「世の終わり」なのか、よく分かりません。それで、この箇所は難解だとよく言われているのです。

でも、中心的なことはただ一つです。この後、14、15章には、イエスさまの「受難と死」へと続いていきますが、そういう流れでイエスさまが語られるメッセージの中心は、「天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない」(13:31)です。

では、天地が滅びても決して滅びることのない「わたしの言葉」とは何でしょうか。

「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(マタイ28:20)。この言葉に結ばれて生きるように、と言われているのだと私は思います。

自分のまわりに何かを脅かすような出来事があっても、あなたがたを騙(だま)そうとする者があっても、戦争や災害のことを聞いても、あなたがたを迫害する状況があっても、「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」という真実に結ばれて生きてほしい。そういうイエスさまからの切なる呼びかけを今日、私たちは福音として聞いています。

イエスさまは今日もすべての人と共にいることを望み、信じる者たちと一緒にいてくださいます。イエスさまが一緒にいてくださることを子どものように受け取ったなら、自分の中に決して滅びることのない神さまを受け取って生きることになります。そして、自分以外のすべての人の中に永遠のいのちの神さまがいらっしゃる真実を受け取って生きるいのちになります。

これが「キリスト者」です。キリスト者とは、ギリシア語で「クリスチアノイ」、「キリストに倣う者」という意味です。いわば「キリストの弟子」です。

「私は信じているから、私は滅びない」。そのことを信じるだけでは、キリストの弟子ではありません。キリストはご自分の永遠のいのちだけを信じたのではないからです。すべての人と共に神がおられるのを信じ、その真実にすべての人を出会わせるために働かれたお方だからです。

自分だけでなく、ほかの人も決して死で滅ぶようないのちであってはならない。永遠に生きなくてはならない。だから、そのことを告げ、人にも祈る者、それがキリストの弟子です。私たちはみんな、キリストの弟子となるように呼ばれています。

教会の暦の終わりの時にあたって、今一度、私たちは振り返ってみたいと思います。自分のいのちが何に根差し、何に向かっているのか。いつかは滅びるものに向かっているのか、そういうものに引っ張られてしまっているのか。そうではなく、天地が滅びても決して滅びることのないお方に結ばれ、そのお方に目を向けて生きているのか。

「わたし」に結ばれて生きるようにとイエスさまは切に望まれます。そういう弟子になって、人にもその真実を告げますように。そういう共同体が立ち上がっていきますように。今日、私のいのちの中にイエス・キリストのいのちが立ち上がりますように。一緒にお祈りをしたいと思います。

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