神さまが共におられる神秘(29)稲川圭三

自分ではなく、共におられる神さまに重心を置く道

2015年12月6日 待降節第2主日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
人は皆、神の救いを仰ぎ見る
ルカ3:1~6

洗礼者ヨハネに神の言葉が降りました。

「神の言葉が降った」というのは旧約的な表現で、神がその人を召し出し、使命をお与えになることを表す言葉づかいです。ヨハネが神さまと一緒に生きるいのちになったということです。

それでヨハネはヨルダン川地方一帯に行って叫びました。「主の道を整え、その道をまっすぐにせよ」(ルカ3:4)。具体的には、「罪の赦(ゆる)しを得させるために悔い改めの洗礼」(3節)を宣べ伝え、「悔い改めにふさわしい実を結べ」(8節)と叫んだのです。

ルカの福音書はそのヨハネのありさまを見て、「これは、預言者イザヤの書に書いてあるとおり」(4節)と受け取り、イザヤの預言を引用しました。

「主の道を整え、
その道筋をまっすぐにせよ。
谷はすべて埋められ、
山と丘はみな低くされる。
曲がった道はまっすぐに、
でこぼこの道は平らになり、
人は皆、神の救いを仰ぎ見る」(4~6節)

「主の道」とは、イエスさまのことです。ヨハネは、「わたしよりも優れた方が来られる」と言いました(16節)。そのお方に向かう心を整えるようにとヨハネは叫びました。

イエスさまは言われます。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない」(ヨハネ14・6)。この最後の言葉は、ひっくり返して言えば、「私を通って父のもとに行く」という意味です。ですから、私たちはその道を通って、父である神を仰ぎ見、神の救いを仰ぎ見る者となります。

では、イエスさまの道とはどのような道でしょうか。

ルカの福音書では、9章51節から19章44節にかけて「イエスの道」が描かれています。それは「エルサレムにのぼる道」として描かれています。

またマタイの福音書では、イエスさまはご自分の道についてこう言っておられます。「狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。しかし、命に通じる門はなんと狭く、その道も細いことか。それを見いだす者は少ない」(7:13~14)

イエスさまの道とは、狭い門から入る細々とした道です。そしてそれは、ご自分の十字架に向かっていく茨の道です。その道を歩むようにと私たちは呼びかけられています。

では、「滅びに至る広い門、広い道」とはいったい何のことでしょうか。それは、救われているという「手ごたえ」、「納得」、「実感」、「証拠」、そういうものを求める道だと思います。

それに対して、「いのちに通じる狭い門から入る狭い道」とは、主である神さまが私たちと共にいてくださるという神の真実を「信じる」というただ一筋の道です。

救いとは、神さまがすべての人と共にいてくださることに出会わせていただくことだと言ってよいと思います。その実感、納得、手ごたえを求める広い道は、「自分」に重心を置いた「人間の道」です。しかし、神が共におられることを信じるという細い道は、共におられる神さまという「あなた」を信頼し、「あなた」に重心を置く「主の道」です。

イエスさまという道は、人間の中の悪を探し出す道ではありません。私たちの中に悪があっても、そのもっと奥深くに神さまが共におられ、神さまの似姿が刻まれていることを見出してくださる道です。

私たちもその道を歩むようにと促されています。ですから、今日、イエス・キリストと一緒に私たちの心を新しくしていただくようにお願しなければならないと思います。

自分の身の回りにいる人には、「神さまが一緒にいてくださる」という神さまの真実がありますので、それを一番に見る歩みになっていくように努めましょう。

相手の欠点を指摘するために自分の言葉を研ぎ澄ます時間があったら、その時間を、「神さまがあなたと共におられます」と祈る時間に変えましょう。

相手の落ち度を理論化し、整えようとする時間があったら、その時間を、「神さまがあなたと共におられます」と神の真実を認め、たたえる時間に変えましょう。

また、「自分なんかダメだなあ」と自分に向かう時間があったら、「神さまが共におられます」と神さまに向かって祈る時間に変えましょう。

洗礼者ヨハネは根本的な回心を求めました。それはすなわち、「自分」という人間に頼るのではなく、キリストに信頼して生きるようにという根本的な変換です。

私たちも今日、自分の思いや考え、納得や理解によって生きるという古い生き方を捨て、キリストに信頼して生きるいのちとなるように迫られています。すべての人と共におられる神さまを認めて生きる、キリストに信頼して歩む歩みに変えるようにと迫られています。

ご一緒にその道を選び、歩ませていただくよう、私たちの心を新しくしていただきたいと思います。

 






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