神さまが共におられる神秘(32)稲川圭三

共におられる主を思いめぐらして生きる

2015年12月27日 聖家族の祝日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
両親はイエスが学者たちの真ん中におられるのを見つけた
ルカ2:41~52

今日は「聖家族の主日」を迎えています。聖家族とは、イエス、マリア、ヨセフの家族のことです。聖家族を模範として生きるようにと私たちは教えられています。それは、お互いがお互いの中に神さまの神秘を見いだし合って生きるという関わりのことです。

今日の福音は、12歳の少年イエスの出来事です。この箇所を聞くと、いつも私は思い出すことがあります。

父は毎週、雨が降ろうが雪が降ろうが、子ども5人と妻である母を教会に連れて行ったのですが、ふだんの生活の中で聖書の言葉を口にすることの一切ない人でした。

ある日、父が一度だけ、聖書に関連して発言したことがあり、それが今日の箇所についてでした。ミサから帰ってきて、父がこう言ったのです。「いくらイエスさまが神さまだからといって、両親にああいう言い方をするのは、やっぱり良くないと思うよ」

イエスさまはまだ12歳の子どもなのに、親に心配をかけておいて、「どうしてわたしを捜したのですか。わたしが自分の父の家にいるのは当たり前だということを、知らなかったのですか」(ルカ2:49)と言ったからです。

でもこれは、イエスさまが両親に対して小生意気(こなまいき)なことを言ったという意味で書かれているわけではありません。実はこの言葉は、ルカ福音書でイエスさまの第一声なのです。

この第一声は、ルカの神学の中で大切な意味を持った言葉として取り扱われ、場面が構成されているということを理解しておく必要があります。

今日の箇所を注意深く読むと、いくつかのキーワードが浮かび上がってきて、「もしや?」と分からせていただくことがあります。それは、イエスさまが見失われるということです。

親類や知人の間を捜し回ったが、見つからない。そして、見つかるのは「三日の後」です(46節)。「神殿」(同)で見いだされました。これは、イエスさまが3日の後、見いだされるという「復活」のテーマを前もって表している箇所だと言われています。

ところで、復活の物語の中に、今日の言葉と非常によく似た言葉を発見します。それは天使の言葉です。

復活の日、婦人たちが朝早く墓に行って、イエスの遺体を見いだせなかったとき、天使が現れ、こう言いました。「なぜ、生きておられる方を死者の中に捜すのか。あの方は、ここにはおられない。復活なさったのだ」(24:5~6)

12歳の物語では、捜したけれども見つからなかったが、父の家である神殿で見いだすというテーマになっています。そして、「両親にはイエスの言葉の意味が分からなかった」と書かれています(2:50)。

「言葉」と訳されている単語は、ギリシア語では「レーマ」という単語です。「言葉」という意味もあれば、その言葉が表す「出来事」という意味もあります。

両親にはイエスのこの出来事が分かりませんでした。しかし、「母はこれらのことをすべて心に納めていた」とあります(51節)。これが今日、聖家族の主日に私たちがいただく大切なメッセージではないでしょうか。

イエスさま、そして神さまはすべての人と共にいてくださいます。それが神さまからの言葉であり、神さまからの出来事です。

私たちにはそのことがよく分からないかもしれません。でも、心に納めて、思いめぐらして生きる。神さまからの言葉と出来事を心に納めて生きる。

「納める」とは「ディアテレーオー」という単語で、「守る」という意味があります。出来事を心に納めて、大切に守って生きるのです。これが私たちに与えられた、聖家族という関係性への大切な指針ではないでしょうか。

今日は、今年最後の日曜日になります。この1年、さまざまな出来事がありました。世界でも、日本でも、そしてもっと身近に具体的に自分の周りでも、思いがけないこと、思いもよらないこと、自分には望ましくないこと、どうしてと思えるようなことがあったかもしれません。

しかし、神さまは共にいてくださるという「真実」です。そのことの意味が分からないでいることも、私たちにもたくさんあるでしょう。

でも、「神さまが共にいてくださる」という神さまからの出来事に信頼を置いて生きる歩み、これが私たちを「聖家族」という関係に導く大切な道案内ではないかと思います。

主である方が共におられます。そのことに信頼を置いて、この1年を感謝し、また、すぐ近くに始まる新しい1年が祝福に満ちたものになりますように祈りましょう。

人間の目には、希望すべきことよりも、不安に思える事柄が多いかもしれません。しかし、主である方が共にいてくださるという出来事を思いめぐらして生きる者となりますように。教会が神のいつくしみを表すものとなりますように。ご一緒にお祈りしたいと思います。

 






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