コラム

神さまが共におられる神秘(45)稲川圭三

「子よ」と呼ばれる理由は、人間にはない

2013年3月10日 四旬節第四主日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
お前のあの弟は死んでいたのに生き返った
ルカ15:1~3、11~32

イエスさまが「放蕩(ほうとう)息子」のたとえを話したのは、ファリサイ派や律法学者に向けてでした。彼らが神さまのまなざしについて勘違いしていることをはっきりと分からせるためです。

このたとえに登場する父親は「神さま」を表しています。神さまがどういうふうに人を見ているかを教えているんですね。神さまにとって人間はみんな「ご自分の子ども」です。放蕩の限りを尽くして無一文になって帰ってきた息子にも「いちばん良い服を持って来て、この子に着せ(なさい)」と言い(ルカ15:22)、兄にも「子よ、お前はいつもわたしと一緒にいる」(31節)と呼びかける方なのです。

「子よ」と呼ばれることについて、人間の側には理由はありません。神さまの側に理由があります。

それなのにファリサイ派や律法学者は、イエスさまのところに「罪人」と呼ばれる人々が近寄ってきたのを見て、「あの人たちは神さまのところに一緒にいる資格がない」と思いました。

徴税人や罪人が皆、話を聞こうとしてイエスに近寄って来た。すると、ファリサイ派の人々や律法学者たちは、『この人は罪人たちを迎えて、食事まで一緒にしている』と不平を言いだした。(1〜2節)

もし私たちが出会う人一人ひとりに「神さまがあなたと共におられます」と祈り合う間柄だったら、イエスさまはこんなたとえ話をする必要はありませんでした。

みんな神さまの子どもだから、悪いところや足りないところもあるけれど、「神さまがあなたと共におられます」と祈り合ったらいいのです。自分が嫌いな人にも「神さまがあなたと共におられます」と認めて祈ればいいと思います。

でも、「絶対にいやだ」「認めない」という私たちに向けてイエスさまはこの話をなさっているということです。

このたとえ話のお兄さんは、帰ってきた弟の中に「神さまが共におられる」なんて認めなかったと思うんです。

「このとおり、わたしは何年もお父さんに仕えています。言いつけに背いたことは一度もありません。それなのに、わたしが友達と宴会をするために、子山羊一匹すらくれなかったではありませんか。ところが、あなたのあの息子が、娼婦どもと一緒にあなたの身上を食いつぶして帰って来ると、肥えた子牛を屠(ほふ)っておやりになる」(29〜30節)

「人に」神さまが共におられると認めないとき、「自分に」神さまが共にいてくださることも認められなくなってしまうんですよ。

お父さんはお兄さんにこう言います。

「子よ、お前はいつもわたしと一緒にいる。わたしのものは全部お前のものだ」(31節)

でも、お兄さんはこの真実に出会えない。だから、弟に「神さまがあなたと共におられる」とも言えないし、言えないから出会えない。

しかし、弟はお兄さんに「神さまがあなたと共におられます」と言えると思います。だって、散々放蕩の限りを尽くして帰ってきて、「こんな自分を『子よ』と呼んでくれるなら、周りの人をみんな『子よ』と呼ぶのは当たり前だ」と思ったんじゃないでしょうか。

では、お兄さんはなぜ共にいてくださる神さまに出会えないか。お兄さんは「自分には資格十分」と思っていたからではないでしょうか。このお兄さんは、自分が持っていると思っている資格という「自分」に立っていて、「子よ」と呼んでくださる神さまのところに行けないので、神さまに出会えないのではないかな。

これは「息子に甘い父親」という話じゃないんです。神さまは私たちを「子よ」と呼ぶお方だとイエスさまは教えています。

私たちが「子よ」と呼ばれる理由は、人間の側にはありません。神さまの側にあるんです。それは、神さまがそう呼んでくださるということです。私たちの側に理由はありません。

だから、私たち「人間の側」に立っていたら、その真実には出会えません。自分の資格とか、そんなどうでもいいものはその場に置いておいて、ポンと「神さまの側」に行かなくては。私たちが勘違いを捨てて、そのことに私たちが出会うために、イエスさまは今日のたとえを話されました。

だから、お互い私たちはただ、出会う人に「あなたは神さまの子です」、「神さまがあなたと共におられます」と祈り合うだけ。それだけが私たちに必要なことなのではないかと思うんです。それ以外に何もないんじゃないかな。

ここに集まっておられるみなさん。お互いに「神さまがあなたと共におられます」と祈り合う間柄になるように、神さまはいつも私たちに望んでくださっていると思います。そして、このミサから派遣されていくそれぞれの生活の場で出会う人に「神さまがあなたと共におられる」という平和を祈りを告げ知らせる者となるよう、神さまは私たちに望みをかけておられるのだと思います。

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