コラム

神さまが共におられる神秘(47)稲川圭三

ただ一つの「正しさ」につながれて

2016年3月20日 受難の主日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
父よ、わたしの霊を御手にゆだねます
ルカ23:1~49

主イエスさまの受難の出来事が読まれました。最後に百人隊長という異邦人が、「本当に、この人は正しい人だった」と言いました(ルカ23:47)。

聖書の中で「正しい」というのは、神さまのことです。神さまただおひとりが正しい方で、その方に従い、一緒に生きることだけが正しさなのです。

人から「正しい」と認めてもらうことに正しさがあるのではありません。そのことをイエスさまは知っておられました。だから、十字架の上で黙っておられたのです。

「お前がユダヤ人の王なら、自分を救ってみろ」(37節)。「今すぐ十字架から降りるがいい。それを見たら、信じてやろう(正しいと認めてやろう)」(マルコ15:32)。そう人々は言いましたが、それに応えることはありませんでした。

イエスさまは、ご自分のうちに神さまがおり、ご自分も神さまのうちにおられるという一致の神秘を完成してくださいました。それゆえ私たちも、イエスさまのいのちをいただき、神と人がひとつになる交わりのうちに入れていただきます。

イエスさまは洗礼を受けたとき、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が天から聞こえました(マルコ1:11)。そのように言ってくださった御父のまなざしで、イエスさまは一人ひとりの人間を見られていたのではないでしょうか。そして、そのまなざしで見てもらったたくさんの人が救われました。

「ああ、私は、自分のいのちのいちばん奥にあるのは悪だと思っていた。でも、違う。いのちの最も奥底にあるのは神さまのいのちなのだ」。イエスさまにそのように見ていただいた人は救われ、新しくなっていきました。

そして、今度はその人もイエスさまのまなざしで人を見て、「あなたのいちばん奥にあるのは悪ではなく、神さまのいのちなのだよ」と人を見るようになっていきます。

イエスさまは、その正しいお方と一緒に生きることこそ正しさであることを知っていました。人がそれを正しいと認めなくても、正しいお方と一緒に生きることをお選びになりました。なぜなら、自分を正しいとしてくださるのは、人間ではなく、共にいてくださるお方の真実であることをご存じだったからです。

今日の福音の中で、イエスさまは十字架の上で祈っておられます。「父よ、彼らをお赦(ゆる)しください。自分が何をしているのか知らないのです」(34節)

「父よ、彼らをお赦しください。自分の最も奥深くに神さまのいのちがあり、神さまが一緒に生きてくださっているという真実を知らないのです」と祈られたのだと私は理解します。

イエスさまは十字架の上で、自分を殺そうとする者の中にも神さまのいのちがあることを見、その祈りの中で「神が共におられる」という真実に結ばれ、「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます」と(46節)、ご自分を神さまにつながれました。

「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分のもとへ引き寄せよう」(ヨハネ12:32)とイエスさまはおっしゃいました。すべての人の中にある「神が共におられる」という真実をひとつに束ねてご自分に結びつけ、ご自分と父である神に引き寄せてくださったのだと思います。それが、イエスさまの死と復活という救いの出来事でした。

その救いの出来事によって、イエスさまの十字架を通して、私たちのうちにおられる神さまの真実を神さまのもとにもうすでに引き上げていただいています。だから私たちは、そのことを気づかせていただいて、イエスさまと一緒に、出会う人間の中に神のいのちを見いだして生きるようにと呼びかけを受けています。

今日から聖週間が始まりました。全世界の教会がイエスさまの受難と復活を祝う週です。それは、イエスさまがなさったことをただ私たちが見守ることとは違います。

イエスさまの十字架にあずかるとは、イエスさまと一緒に生きることです。自分を馬鹿にし、傷つける者の中にも、神のいのちがあるという真実を受け取って、イエスさまと一緒に祈ることにほかなりません。

イエスさまだけが十字架の上で祈られるのではありません。イエスさまは、「目を覚まして(一緒に)祈っていなさい」と言われました(マルコ14:38)。そのイエスさまの十字架の祈りに、私たちも心を合わせたいと思います。自分を迫害し、自分と敵対する者の中にも神さまが共におられることを見て祈ること。それこそが、キリストに従う者がすべきことです。

互いに敵対し合う相手の中にも神が共におられる真実と「正しさ」を見いだし合うこと。これが「聖週間」の意味になります。

イエスさまが負ってくださった十字架を傍観するのでなく、その祈りの中に私たちもつながって歩むように、ご一緒にお祈りをしたいと思います。

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