【イースター・メッセージ】神さまが共におられる神秘(48)稲川圭三

私たちの中に立たれる方

2016年3月27日 復活の主日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
主が墓から取り去られました
ヨハネ20:1~9

みなさん、主のご復活、おめでとうございます。

週の初めの日、朝早く、まだ暗いうちに、マグダラのマリアは墓に行った。(ヨハネ20:1)

夜が明ける前にお墓に行くことは通常ないと思います。それなのになぜマグダラのマリアは暗いうちにお墓に行ったのでしょうか。

ユダヤ人は、「日が沈むと翌日が始まる」と考えました。イエスが十字架の上で亡くなられたのは金曜日の午後3時ごろ、安息日の前日です。そして、日没とともに安息日が始まりました。安息日は何か動き回ったりすることもできなくなってしまいます。それでイエスは日が沈む前に大急ぎで墓に葬られたのです。

金曜日の夜から土曜日の朝まで安息日は続きました。そして、土曜日の日が沈むと安息日が明けるので、婦人たちは店に行き、もっと念入りに愛する者の遺体の処置をするため、香料などを買ったに違いありません。

しかし、電灯のない時代なので、夜の間は身動きができません。それで婦人たちは夜が明けるのを「今か、今か」と待ち、矢も盾(たて)もたまらず、まだ薄暗いうちにお墓に行ったのです。そして、愛するイエスのお体をもっと丁寧に葬りたいと思った。

ところが行ってみると、お墓の入り口をふさぐ大きな石が脇に転がしてあり、中にはイエスの遺体がありませんでした。途方にくれたマリアは、ペトロとイエスの愛しておられた弟子のところに走って行きました。そして、「主が墓から取り去られました。どこに置かれているのか、わたしたちには分かりません」と言ったのです(2節)。

ペトロともう一人の弟子は、マグダラのマリアに言われて、墓まで走って行きました。

身をかがめて中をのぞくと、亜麻布が置いてあった。(4~5節)

フランシスコ会聖書研究所訳は、この新共同訳より、私たちにその様子をすっきりと理解させるような訳になっています。

身をかがめてのぞき込むと、亜麻布が平らになっているのが見えた。

そして注には、「『亜麻布』は、恐らく長い一枚の布で、頭の所で半分に折り、遺体を包んだものであろう」と書いてあります。その亜麻布がぺたんと平らになっていたのです。

イエスの頭を包んでいた覆いは、亜麻布と同じ所には置いてなく、離れた所に丸めてあった。(7節)

ここもフランシスコ会聖書研究所訳ではこうなっています。

イエスの頭を包んでいた布切れが、亜麻布と一緒に平らにはなっておらず、元の所に巻いたままになっていた。

「イエスの頭を包んでいた布切れ」というのは、どうも亡くなった方の口が開かないよう、ぐるぐるっと巻いた布のようです。その布は亜麻布のように「ぺたん」とはしておらず、輪の形のまま、平らになった亜麻布の中に残されていました。

ところで、少し前に「イエス、ラザロを生き返らせる」(11:38~44)という箇所があります。イエスの友人ラザロが死んで4日経ってから、イエスが墓の中に向かって、「ラザロ、出て来なさい」と声をかけると、ラザロは手と足を布で巻かれたまま出て来ました。「顔は覆いで包まれていた。イエスは人々に、『ほどいてやって、行かせなさい』と言われた」とあります(44節)。

ラザロは甦(よみがえ)りましたが、布に包まれたままでした。そして、またいつかは再び死んで葬られることになったでしょう。

しかし、イエスは墓穴の中に亜麻布を残しています。それは、ただ「亡くなったものが生き返る」というのとまったく違った次元のいのちとして「復活された」ことを表しているのだと思います。

マグダラのマリアは、イエスがどこにいるのか分かりませんでした。その後、お墓の前で泣いていたマグダラのマリアに向かってイエスが、「婦人よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか」と声をかけますが(20:15)、この時もイエスだとは分かりません。またお墓のほうに目を向けてしまいます。

しかし、それがイエスだと分かる時が来ます。それはイエスが「マリア」と呼んだからです(16節)。こういうふうに私を呼んでくれる人、「あなただ」と分かりました。マリアはその後、イエスと一緒の向きで生きるいのちになっていったのだと思います。

イエスは死んで復活されました。そのお方は今日、私たち一人ひとりと一緒にいてくださいます。ですから、そのお方に結ばれる時、私たちはすでに復活といういのちに結ばれて生きる者となります。そのことをただただ受け取らせていただいたらよいのです。イエスさまが死んで復活されたのは、私たちが復活するためです。

今日、復活であるキリストが、私たち一人ひとりの中に、まぎれもなく一緒にいてくださいます。その真実を、ただただ、何の値も払わずに受け取らせていただくのが、復活のお祝い日である今日、私たちがするべきことです。

 






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