コプト正教会は受難週間と復活大祭をどう過ごす?

 

日本唯一のコプト正教会である聖マリア・聖マルコ・日本コプト正教会(京都府木津川市)で4月7日から8日にかけての真夜中、復活大祭(パスハ)を祝った。

プロテスタントやカトリックではその前の週の4月1日がイースターだが、なぜ日にちが違うのだろうか。復活祭は「春分日(3月21日)の後に来る満月の次の日曜日」と4世紀に決められた。その後、16世紀からグレゴリオ暦を用いるようになった西方教会(カトリックやプロテスタント)と違い、正教会では古代のユリウス暦(現在13日のズレがあるので、クリスマスも1月7日になる)を使っており、満月の計算もユリウス暦ではグレゴリオ暦の天文学的な満月の日にちとズレるためだ。

聖枝祭、棕櫚の枝を掲げるモーゼス神父。

その1週間前、他の教派がイースターを迎えた4月1日が、正教会では聖枝祭。キリストがエルサレムに入城した時、人々が棕櫚を敷き詰めて歓迎したので、「枝の主日」「棕櫚の主日」とも呼ばれる。この日から受難週間が始まった。祭壇のカバーも赤から黒に変わる(土曜日深夜からの復活大祭には黒から白に大斎色が変わる)。

洗足木曜日、祈祷者の足を洗うモーゼス神父。

4月5日は受難週間5日目「洗足木曜日」。この日、受難を前にイエス・キリストが弟子の足を洗ったことを記念する。当時、足を洗うのは奴隷の仕事であったため最高の謙遜を表し、イエスが弟子たちをどれほど愛されたかを象徴する行為。それに倣って、司祭が祈祷者の足を洗う。

モーゼス神父がキリストの十字架のイコンに振り香炉で崇敬と祈りの象徴として炉儀を行う。

4月6日は聖大金曜日。この日はキリストの十字架の死を記念する日だ。ゴルゴサ(ゴルゴタ)聖歌を年に1度、この日に歌う。4世紀の教父アタナシウスが古代エジプトの葬儀音楽を参考に作ったという。

ここでコプト正教会について簡単に紹介する。コプト正教会はエジプトで発展したキリスト教の教派。

エジプトの人口は約9300万人(2016年、UNDATA)。その80パーセント以上がイスラム教徒だが、残りはキリスト教徒、特にコプト正教徒がその大部分を占めている。

エジプトのキリスト教の歴史は古く、カイロに次ぐエジプト第2の都市アレクサンドリアは重要な拠点として、エルサレム、ローマ、コンスタンティノポリス、アンティオキアとともに5大総主教座の1つ。伝承では福音書記者マルコが福音を伝えてアレクサンドリア教会を創設し、この地で殉教したといわれている。

そもそもエジプトは、出エジプト記もあるように聖書の舞台。新約でもマタイ福音書は、聖家族がヘロデの手を逃れてエジプトに避難したというエピソードを記している(2:13~15)。

また、マルコ以前にも福音がエジプトに伝わっていたことは、使徒言行録などの記述からもうかがえる。まず、ペンテコステの日にエジプトからやって来たユダヤ人がいたので(使徒2:10)、彼らがキリストの死と復活を伝えただろうことは想像にかたくない。また、「アレクサンドリア生まれのユダヤ人で、聖書に詳しいアポロという雄弁家が、エフェソに来た。彼は主の道を受け入れており、イエスのことについて熱心に語り、正確に教えていた」(18:24)ともある。

さて、451年のカルケドン公会議のときに、アレクサンドリア教会は分離することになった。そこではキリストの受肉について話し合われたのだが、キリストは1つの位格の中に神性と人性の2つの性質があるというキリスト「両性論」が採用された。一方、アレクサンドリア教会は、キリストの神性と人性は分割、融合、変化することなく、合一した「人として受肉した神」とする「合性論」という理解を持っていた。それが、人性は神性に融合・摂取されて単一の性となったという「単性論」と誤解されたこと、さらに当時のアレクサンドリア教会とローマ教会が政治的に対立していたことが原因で分離することになったのではないかと言われている。近年では東方正教会、カトリック、プロテスタントでも、コプト正教会への理解が深まっている。

「コプト」というのは、7世紀にアラビア人が入ってきてエジプトのキリスト教徒のことを「クブト」(qubt)と呼んだことに由来する。この地は砂漠という風土の中で修道制が育まれてきたこともあり、コプト正教会では今もその修道制の伝統が豊かに息づいている。

日本では2004年からコプト正教徒の留学生のための礼拝が持たれるようになり、16年、京都府木津川市に聖マリア・聖マルコ・日本コプト正教会が開設された。

一方エジプトでは、就職や結婚に際して少数派のコプト正教徒は不利な立場に置かれることが多く、キリスト教からイスラム教への改宗や国外移住によってエジプト国内の会員が減少しているという問題がある。

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