インタビュー 学校

一人ひとりの子どものいのちを生かす教育を目指して 自由学園理事長の村山順吉さんに聞く(前編)

 

自由学園(東京都東久留米市)は1921年、羽仁(はに)もと子・吉一(よしかず)夫妻によって創立されたキリスト教主義の学校だ。学校名は、「真理はあなたたちを自由にする」(ヨハネ8:32)に由来。幼児生活団(幼稚園)から最高学部(大学部)まで、すべての校舎や寮が約3万坪の敷地内にあり、各学年1クラス約40人、全校で約800人の生徒が学んでいる。

創立以来、「24時間の生活すべてが勉強」という教育方針のもと、食事づくりやキャンパス内の清掃、管理などを生徒自身が行う「自労自治」の伝統が受け継がれている。また毎朝、授業の前には礼拝の時間が持たれているという。

2017年に理事長に就任した村山順吉(むらやま・じゅんきち)さん(日本同盟基督教団・小平聖書キリスト教会員)は、幼児生活団から男子部高等科までの15年間、自由学園で学んだ。音大でピアノを専攻した後、37年間にわたってキリスト教主義の聖学院に勤務し、聖学院小学校校長、同大学児童学科教授・学科長や子育て支援センター長も務めてきた。その中で、「自由学園で学んだことが大きく生かされた」と語る村山さんに、自由学園での思い出や児童教育への思いについてお話しいただいた。

村山順吉理事長

──自由学園に入学されたきっかけは?

私には生まれつき「小耳症」という障がいがあり、右の耳が聞こえなかったし、形もおかしかったんですね。そのことでいやな思いをするんじゃないかと心配した両親が、「心ある学校はどこだろう」と探していた時に出会ったのが自由学園です。

ところが、当時の幼児生活団は目白にあり、私が住んでいた国分寺から遠いという理由でいったんは断られたそうです。それを父が「何とか入学させてください」と泣きながら手紙を書いて通わせてもらえることになったと、後から知りました。

──通い始めて、いかがでしたか。

学校の先生や友だちにも恵まれて、「なぜ順ちゃんがそんな目にあわなきゃいけないんだ」と泣いてくれるような優しい子ばかりでした。6年生で耳の手術をした時も、担任の先生が親身になってくださり、あたたかい環境で成長させてもらえたことは本当にありがたかったと思っています。初等部(小学校)の頃から男子部(中学・高校)に憧れていて、「卒業したら男子部に行くぞ」と決めていました。

自由学園女子部校舎(食堂)

──男子部の新入生は、自宅が近い人も全員、1年間、寮生活をするとのことですが、いかがでしたか。

朝5時半に起床し、食堂のまわりに全員並んで乾布摩擦(かんぷまさつ)から1日が始まります。それが終わったら、2分以内に着替えて支度をしないと、寮長室に連れて行かれて怒られるんです。今は時代も変わって、下級生が上級生に意見を言えるようになり、互いを思いやれる環境になりました。

自由学園の勉強の仕方はとてもユニークで、男子部ではまず聖書と賛美歌を入れる革袋を作ります。それができたら、寮(現在は教室)で使う勉強机と椅子、脇箱(物入れ)を作りました。

そのとき先生に言われたのは、「一人で作るんじゃない。バディ(相棒)と組んで、二人で二つのものを作るんだ」ということ。木工の基礎を学びながら、協力して作り上げることを生活の中で学んでいたんですね。この時に作った机と椅子、脇箱は今も自宅に保管しています。

ほかにも授業の中で腕時計やエンジンの組み立て・分解に取り組んだこともありました。自分たちでやりたいことを見つけ、分からないことは協力しながら解決していくという学び方は、生徒たちの団結力を自然と増してくれます。

自由学園女子部講堂

──女子部では、自分たちで食事を作っているとのことですが、男子部ではどうですか。

男子部では、保護者のみなさんのご協力のもと、毎日、手作りの食事をいただいているのですが、週に一度、高等部2年生が食事を作る日が設けられています。また、寮の朝食は毎日、生徒が自炊しています。

「産業」の授業では、養豚や養魚、果樹、畑などの班に分かれて、それぞれ生き物や作物を育てます。収穫した野菜や果物は食事に出るんですね。

養豚班が育てた豚も、やがて食肉になり、翌日の食事には大きな豚カツが出されました。本当においしかったんですが、「食べられないよ」という養豚班の友だちの言葉は重みがありました。「豚のいのちをいただいている」ということはもちろんですが、育ててくれた友だちの気持ちを思うと、食べる時に「少しも無駄にしてはいけない」ということを学びました。だから今でも、食べ物が残ると、非常に心が痛みます。

その後、「音楽を学びたい」と外の大学へ進学したのですが、そこの学食のうどんを食べたとき、「自由学園でどれほどきちんとした食事をさせてもらっていたか」と、改めて身にしみて分かりました。(後編に続く)

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