関学アメフト部、記者からの質疑応答で「試合前に聖書を朗読する意味は」

 

アメリカンフットボールの日本大と関西学院大の定期戦(5月6日、東京)で日大の選手が関学大の選手に悪質なタックルをして負傷させた問題で、関学大は26日午後、兵庫県西宮市のキャンパスで会見を開き、鳥内秀晃監督(59)と小野宏(ひろむ)ディレクター(57)が出席した。

悪質タックルをした日大選手は22日の記者会見で次のように説明した。「試合前日の練習後、コーチから、『お前をどうしたら試合に出せるか監督に聞いたら、「相手のクオーターバックの選手をワンプレー目でつぶせば出してやる」と言われた。「クオーターバックの選手をつぶしに行くので使ってください」と監督に言いに行け。相手がけがをして秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう』と言われた」「私は監督に対して直接、『相手のクオーターバックをつぶしに行くので使ってください』と伝えたら、監督からは『やらなきゃ意味ないよ』と言われた」「試合当日、コーチに『クオーターバックの選手に突っ込みますよ』と確認したら、『思いきり行ってこい』と言われた。さらに、試合前の整列のときもコーチが近づいてきて『できませんでしたじゃ済まされないぞ。分かってるな』と念を押された」

この日の質疑応答では、記者団から「試合前に聖書を朗読する意味は」という質問が飛び出した。日大の試合前のあり方と好対照をなすからだろう。

──「月刊FACTA(ファクタ)」の宮崎と申します。関西学院大学は大事な試合の前に聖書を朗読したりしていると仄聞(そくぶん)したことがあるのですが、その意味を教えてください。

小野 ご存じのとおり、関西学院大学はキリスト教主義教育に基づいており、そもそも創設者、アメリカのプロテスタントの宣教師(米国南メソジスト監督教会のウォルター・ラッセル・ランバス)が建てた大学ですので、我々の大学の中にそういうことが自然に入っておりまして、我々の中で試合の直前にはお祈りをするということは普通に入っているということになります。

祈りをもって夏練習スタート=2017年8月1日(写真提供:関西学院大学アメリカンフットボール部)

関学大アメフト部「ファイターズ」の公式ホームページ内のブログ「上ヶ原通信」でも、次のような文章が見られる。

「今回の合宿では春シーズンのスタートの意味も兼ねて、初日に『お祈り』を前島先生のもとに行ってスタートしました」(2018年4月7日、2年ラインバッカー繁治亮依君)。前島先生とは、前島宗甫(むねとし)氏(81、日本基督教団牧師を経て、1985年、日本キリスト教協議会総幹事、関学大神学部教授)のこと。部の顧問として試合直前の祈りを10年以上続けてきた。

58分24秒から(THE PAGEの動画)

また、昨春には4年生だったクオーターバックの百田海渡君が次のように書いている。

「『苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む』という聖書の言葉と、『祈りは強い想いである』という言葉を、前島先生から教えていただきました。前島先生は『しんどい時があればその先の希望を見なさい』とおっしゃいました。これまでの練習は、しんどいだけで終わってしまっていたのではないか、もっと高い基準で練習ができたのではないか、と気づかされました」(17年4月4日)

前島氏は『キリスト教学校教育』(04年12月号)に次のように書いている。

「アーメン!」。ロッカールームに響いた声に私の鼓膜は激震した。アメリカンフットボール関西学生一部リーグ戦、全勝同士の関西学院大学と立命館大学の対戦直前のロッカールームである。ウォーミングアップを終えた選手とコーチ、スタッフ百余名が円陣を組む。そこでの聖書朗読とメッセージそして祈りが私の役割である。……この試合前の祈りは伝統的なものだが、部長やコーチが決めたものではない。部員たちが自発的に決めるものである。……

……激しい身体的コンタクトを伴う試合に臨む選手たちは緊張の極限にある。特に今シーズンの優勝の行方を決める全勝同士のライバル対決ともなれば、全員のテンションの高さは半端ではない。クールダウンさせつつモチベーションを降下させないように。彼らの「腑に落ちる」メッセージ、祈りでなければならない。監督と相談して1分30秒と決めているが、誤解を恐れずに言えば、チャペルアワーの30分より「疲れる」1分30秒である。……彼らの目を見返しながら語る。途中で、主将を始め泣きながら祈っている選手たちの様子が伝わってきた。

激戦の末勝った。「勝っても負けても、このゲームが皆にとって生涯の宝になるように」と祈ったのだが、試合後「祈りどおりになりましたね」と弾んだ声が返ってきた。……課外でのキリスト教主義教育の喜ばしい瞬間である。

また、元朝日新聞編集委員の石井晃氏がアメフト部の公式サイトのコラムに次のように書いている。

(2011年)4月3日、シーズンの開幕に当たって、恒例のお祈りの時間が持たれた。式を司るのは部の顧問であり、関西学院の元宗教総主事だった前島宗甫先生である。今春入学したばかりの新入部員を含め、選手や監督、コーチらがグラウンド中央に集まり、前島先生の話に耳を傾ける。

先生は聖書を手に……ファイターズの諸君に、苦難が忍耐を、忍耐が練達を生み、そこから明日への希望が生まれてくる、という話をされた。……僕はキリスト教の信者ではないが、この一節には心を惹かれる。……こういう言葉があると、どんなに苦しい事態に追い込まれたときでも「明けない朝はない」と思って、また頑張る力が湧いてくるのである。

……お祈りの時間は、冒頭の「東日本大震災」の犠牲者を悼む黙祷の時間を含めても10分足らず。けれども、この時間をファイターズの全員が共有することで、チーム挙げて今季に向けた決意を新たにするのである。……

……ミッションスクールとしての関西学院大学ならではの行事であり、ファイターズというチームの背骨を形作るための大切な場面でもある。……新しくチームに参加した新入生たちが、この厳粛な雰囲気の中、武者震いをするような表情で聞いていたのが印象的だった。

ゲーム前、聖書朗読と相手の安全とフェアプレイを願う祈りがなされている関学大アメフト部。そこで育まれる文化の中では、「相手のクオーターバックをつぶしに行け」という指示は出ないだろう。何より、日大アメフト部フェニックスが新体制になって再出発し、「東の日大、西の関学」としてアメフトの大学日本一を決める毎日甲子園ボウルで、フェアプレイのもと競い合う姿が早く見られるよう祈りたい。

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