【インタビュー】金城学院大学学長・小室尚子さん(3)無意識に男性に依存しない意識を育てる

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──「初の女性学長」として、どんなことを大切にしたいと思っておられるでしょうか。

本学は、学長と理事長はクリスチャンであることという「クリスチャン・コード」があるのですが、それとともに、安倍総理が「女性が輝く社会」と言ってみたり、女性たちが各方面で活躍し始めたりする中で、「今度の学長は女性で」と考えた結果、私に白羽の矢が立っただけのことかもしれません。

小室尚子学長

しかし私としては、本当の意味での女性の生き方を学生たちには身につけてほしいと思っています。明治の初め、女性が男性の付属品のように扱われ、教育もまったく必要とされていない現状を見て、女性の宣教師たちが女子教育をこの国で始めてくれました。女性といえども、神の前に人格を持った一人の人間として育てる教育です。

それがなければ、今のように自立し、責任を持って社会で貢献し、生きていく女性は育ってきませんでした。そういう意味で、自立して生きていく女性を育てるという使命が女子校にはあるし、宣教師たちもそのつもりで女子教育を始めたのではないでしょうか。そういったことをしっかり引き継いでいかなければならないと思っています。

──女子大ならではの役割があるのですね。

欧米の影響を受けて、日本でも女性の地位向上を掲げていますが、実際には、女性を重んじ、敬い、対等に人としてつきあい、仕事をしていくという体制がほとんどできていないと思っています。その状況を変えるためには、一人の人格を持つ女性としてどう生きていくのか、女性の立ち方を学生たちにしっかり教えていくことが大切です。それを身につけさせることが女子大の役割ではないでしょうか。

「共学にしたほうがいい」という話もありますが、そうすると日本では、「自分たちは男性の一歩後ろに下がって、責任があることは男性にやってもらえばいい」という考え方になってしまいがちです。無意識に男性に依存してしまうのです。「男性と張り合え」ということでなく、「男性と対等である意識を持つ」ということです。

アニー・ランドルフ記念講堂の外灯

聖書でアダムとエバが創造されたとき、「人が独りでいるのは良くない。彼にふさわしい助け手を造ろう」(創世記2:18)と神が言われたとあります。この「助け手」という言葉から、「女性は男性の補助的なものだ」と長らく誤解されてきました。しかし、本来のヘブライ語「エゼル」は、「私の助けは主のもとから」(詩編121:2)とあるように神の属性を示す言葉で、「対等に向き合って生きていく」という意味です。神はそういう存在として男と女を造られたのです。

また、最初から「男が造られた」とは書いていません。「アダム」は普通名詞で「人」なのです。土で人を作り、その鼻に命の息を吹き入れ、エデンの園で生きていくようにされ、その助け手として女性が造られたことで、二つの性が生まれました。神は、対等に生きていく者として私たちを造ってくださった。このことを女性はまず自覚しないといけません。

──私たちの聖書の読み方にも問題がありそうですね。

私はフェミニスト神学者ではありませんが、しかし彼らが示してくださったことに大いに教えられました。女性の目線で聖書を読んでみるということです。

たとえば、一人の女が高価な香油をイエスの頭に注ぎかけたという記事があります(マルコ14:3〜9)。それを見た人たち(男性たち)は、「そんなことをするなら、貧しい人に施せ」などと非難しますが、イエス様は「するままにさせておきなさい」とおっしゃいます。この箇所を合理的に解釈する人は、「彼女のしたことは社会では通用しないけれど、それでもイエス様は評価してくれる」となってしまいます。しかし、「するままにさせておきなさい」という言葉を直訳すると、「彼女を解放しなさい」ということなのですね。こういうかたちで自分の思いを表す人を、合理的な考えだけで縛ってはいけないということです。女性目線で読むとき、こういったことが見えてくるはずです。これは大事なことかなと思います。

エラ・ヒューストン記念礼拝堂のパイプオルガン

──最後に、今後の抱負を教えてください。

イエス様は女性のことも男性のことも平等に見ておられます。女性の学長が出たことが珍しく言われるようでは、まだ社会は平等ではないということではないでしょうか。

学長として、自分の中では目指していることはたくさんありますが、少しずつでも学生や教職員の方々と意見の交換をしながら意識改革をしていきたいと思っているところです。そういった意識改革が広がった社会の中で、女性は初めて輝くものになると思います。

 






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