【「キリスト新聞」との共同インタビュー】最初の告発をした小柳敦史氏 深井智朗氏の研究不正について語る(2)

 

──日本基督教学会のほうでは、どのような対応だったのでしょうか。

2018年1月頃、私の京大時代の指導教員でもあった芦名定道(あしな・さだみち)学会誌編集委員長(京都大学大学院文学研究科教授)に連絡して、「学会誌で書評を担当した本について、放置してはいけない問題が発覚し、ここまで調べたので、問題提起をする機会をいただきたい」と伝えました。それを受け、学会三役で相談された結果、公正を期するため、「日本の神学」誌上での公開された質疑応答というかたちで掲載されることになりました。

編集委員会が深井さんに質問状を送り、『日本の神学』が9月に刊行されるのに合わせて回答を依頼しました。書評が載ったのが5年前にもかかわらず、問題提起をする場を与えてくれたことはとてもよかったと思っています。

小柳敦史氏

──深井さんの回答にはどのように思われましたか。

非常に問題のある回答が寄せられたので、とても残念でした。推測ですが、編集委員会も、学会員から質問があり、それに対して学者が答えるのですから、嘘偽(うそいつわ)りのない回答が来るものと思って、公開質問状の対応を取ったのだと思います。

ただ、いま振り返れば、この問題がここまで大きく取り上げられる前に、私の質問や深井さんの回答について第三者が検討し、学会としての結論を出してもよかったのではないかと思います。あのような回答が載せられて、それで終わりでは、非常に中途半端な感じが残ってしまいます。

──今回の東洋英和女学院の対応については、どのように思われましたか。

ホームページで公開されているものを見る限りでは、しっかり調べていただいたなと思っています。私も東洋英和の調査委員会からヒアリングを受けましたが、その時に、「週刊新潮」や「朝日新聞」など一般メディアが取り上げる前から、「キリスト新聞」の記事がきっかけで調査をすることになったと聞いています。

東洋英和の調査内容については結果しか知りませんが、私が疑念に思っていたことが解明されたと思っています。ただ、カール・レーフラーが書いたとされるタイプ打ちの原稿が調査委員会には提出されていますが、その原稿を東洋英和ではどのように判断したのか、明確には分かりません。

私の理解では、あれは、ウムラウト(変母音)の対応がない、ドイツ語圏ではないところのタイプライターを使って、誰かが慌(あわ)ててヴォルフハルト・パネンベルク(ドイツの神学者)などの書いたものを切り貼りして打ったものでしょう。それ以上のことは断言できません。

──それは、深井さんがゼロからカール・レーフラーという人物を創作したということですか。

深井さんが自分の考えを頭の中でまとめたということで言えば、ゼロからではありません。つまり、パネンベルクの邦訳書から情報を持ってきて、それを組み替え、カール・レーフラーが書いたものとしたということです。

──『ヴァイマールの聖なる政治的精神』の中でカール・レーフラーが出てくるのはせいぜい4頁ほどですから、レーフラーを登場させなくてもあの本は書けたのではないかと思ってしまうのですが。

書けます。「戦後、パネンベルクという神学者はこういうことを言った」と書けばいいのであって、そこではカール・レーフラーの存在は本質的なことではないんです。トレルチの家計簿についても、本当に深井さんが弁明したようなプロセスで書いたなら、そう書けばいいんです。名前は出せないが、ミュンヘンの知り合いがこういう資料を持ってきてくれて、議論をしながら「こういう資料ではないか」という話になった、とすればいい。

深井さんは嘘に嘘を重ねてしまっているので、逆にどこまで遡(さかのぼ)れば信じることができるのか、分からなくなってしまいましたよね。おそらく、今回対象となった二つの文章だけに問題があるわけではなく、もっと以前から問題はあったはずです。(3に続く)

【こちらもご覧ください】キリスト新聞「研究者の誠実さを問う 深井智朗氏への「公開質問状」書いた小柳敦史氏インタビュー〝学会・出版社の責任は重大

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