松任谷正隆さん「主の祈りで聖書の時代と私たちがつながっている」映画「パウロ──愛と赦しの物語」

 

映画「パウロ──愛と赦(ゆる)しの物語」(アンドリュー・ハイアット脚本・監督)公開初日の3日、音楽プロデューサーの松任谷正隆(まつとうや・まさたか)さんのトーク・イベントが東京のヒューマントラストシネマ渋谷で開催された。

この映画は日本公開に先駆け、今年のイースターに全米公開された。「パッション」(2004年)でキリストを演じたジム・カヴィーゼル(49)が福音書記者ルカ。パウロ役にはジェームズ・フォークナー(69)。パウロに協力する夫婦で、プリスカ役はジョアンヌ・ウォーリー(53)、夫アキラはジョン・リンチ(56)が演じている。

物語の舞台は紀元67年、皇帝ネロがキリスト教徒を迫害していたローマ。街を大火が襲い、放火の首謀者としてパウロが牢獄に入れられ、死刑の宣告を受けてしまう。

ここへ至るまでにパウロは、さまざまなことを経験してきた。ある時はサウロとしてクリスチャンを執拗に迫害した。そしてその後、回心し、その時から今度はパウロ自身が迫害されるようになっていく。

獄中でパウロは、看守と福音書記者ルカと語り合う。看守は、この男がどうしてローマ帝国に影響を及ぼせたのかを知りたいと、パウロに興味を持つ。一方、忠実な世話人であるルカは、初代教会の歴史である「使徒言行録」を執筆していた。

ネロの迫害は激しさを増し、アキラとプリスカ夫妻にかくまわれたキリスト者にも危険が及んでいく。それでもパウロは、暴力に打ち勝つことができるのは愛だけだと伝える。

処刑の日が近づくにつれ、パウロは自分の罪を神が赦してくれるのか葛藤するようになる。そして、ついに神の恵みを覚え、こう告白するのだ。「罪が増したところには、恵みはなおいっそう満ちあふれました」(ローマ5:20)。

松任谷正隆さん(右)と牧師の波多康さん=3日、ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)で

上映を終え、松任谷さんと聞き手の波多康(はた・やすし)さん(ビサイドチャーチ東京牧師)が、満席の観客が待つ会場に拍手で迎えられた。波多さんは、妻でシンガー・ソングライターの松任谷由美さんのクリスマス・ディナーショーで聖書のメッセージを伝えたこともあるという。

松任谷さんはクリスチャンではないが、音楽を始めたきっかけが、教会のキーボード奏者から演奏を習ったこと。また、クリスマス・ディナーショーで聖書の言葉を引用したりするなど、キリスト教と関わりがあることから今回招かれた。

由実さんも、実家の裏にあるカトリック八王子教会の幼稚園に通い、キリスト教系の立教女学院中学・高校の出身。「映画を2回見て、そのうちの1回は妻と一緒に観ました。実は結婚式もキリスト教式でやったので、4回ほど事前の授業(結婚講座)を受けたこともあります。つらかったけど(笑)」と松任谷さんは会場の笑いを誘う。

「この映画に関しては、突っ込みどころもありましたが、映画の大事なことは何かというと、リアリティーがあること。

実は私たちの家では毎日お祈りしているんですよ。食事の前にもします。クリスチャンじゃないのにおかしいでしょ? 映画の中でも『主の祈り』を祈るシーンが出てくるけど、それを見た時、ご飯の前に祈っている自分たちとつながっていると思ったのです。信じる人がいて、今もその宗教が続いている。それはあまりにもリアルですよね。

キリスト教を信仰している人は世の中にたくさんいます。宗教は持っていないと言いながら、私自身の中にもどこか神様を信じているところがある。何か信じないと、やっていけないところがあるじゃないですか」

松任谷さんが「映画の最後のほうのシーン、(ある人物が登場するところで)泣きました。泣くシーンはほかにもいっぱいありますが……。だから、何回か観たほうがいいかも。3回ぐらい」と言うと、波多牧師が「5回は観たほうがいいですね」と観客に語りかけた。そこですかさず松任谷さんが、「あんまり押しつけないほうがいい。映画でも言ってたじゃないですか、『信じろと誰が言った?』って」とツッコミを入れ、会場は笑いに包まれた。

映画は全国で順次上映する。詳しくはホームページを。

松任谷正隆さん(右)と牧師の波多康さん=3日、ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)で

「パウロ──愛と赦しの物語」に寄せられたコメント

松任谷正隆さん。

僕はキリスト教信者ではありません。ですから、この映画については、どうせ啓蒙的なものだろうという先入観もあったし、実際にいくつかのシーンでは悪態をつきながら観ました。あり得ないだろう、と。

しかし、いくつかのシーンで不覚にも涙を流してしまった。観終わったときには感動さえしてしまったのです。

で、なぜだろう、と考えました。この映画は聖書のどおりなのかもしれないし、脚色がされているのかもしれない。信者でない僕には分かりません。けれど、リアルなことが一つだけあります。それは、その教えが今まで続いていて、そしてそれを信じている人たちが大勢いるということです。そのことが僕を感動させ、そして涙させたのだと思います。

「信じろと誰が言った?」というパウロの台詞(せりふ)があります。そうだよな、というのが僕の正直な感想です。

また、叔父がカトリック司祭だという俳優・歌手の中村雅俊さん。

人生で何がいちばん大切か。どんどん問いかけてくる。この映画は、人生を生き抜くための教科書。まさにバイブルだ。

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