自分を支えてくれた杖で福音を伝えたい 三浦綾子召天20周年記念集会

 

三浦綾子召天20周年記念集会(主催:三浦綾子読書会、後援:三浦綾子記念文学館)が19日、御茶の水キリストの教会(東京都千代田区)で開催された。

三浦綾子読書会代表の森下辰衛さん

三浦綾子読書会は2001年に発足し、三浦文学を愛する人々の交流の場として全国各地で集会が開かれている。代表の森下辰衛(もりした・たつえ)さんも、読書会発足間もない頃から参加している一人だ。

「読書会や文学散歩などには、毎年延べ7000~8000人が参加しています。若い方たちにも三浦作品を読んでいただきたいという思いから、ミッション・スクールや教会を中心に、綾子さんの自伝小説『道ありき』を年間1000冊ほど無料配布しています。実際に読んだ方から『感動した』と感想をもらうことも多いんですよ。50年以上前に書かれた作品ですが、本当に良い作品は世代を問わず届くのだなと感じます」

2019年は、綾子さんが亡くなって20年、夫の光世さんが亡くなって5年、さらに夫妻の結婚60年目にあたる。度重なる病と闘いながらも晩年まで執筆活動を続けた綾子さんと、綾子さんを支え、亡くなった後はその遺志を受け継いだ光世さん。プログラムは午前と午後の2部構成で、講演や朗読を通して三浦夫妻の歩みを振り返った。

まず午前の部では、三浦綾子記念文学館(北海道旭川市)で案内人を務める近藤弘子(こんどう・ひろこ)さんが登壇。「40年前に蒔(ま)かれた『泥流地帯』の種」と題し、近藤さんが21歳で『泥流地帯』に出会ってからの半生を語った。同作品は、1926年の十勝岳大噴火を背景に、懸命に生きる人々の姿を描きながら、苦難の意味を問いかける長編小説だ。

また、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団・北見神愛キリスト教会・紋別神召基督(もんべつしんしょうきりすと)教会牧師の日吉成人(ひよし・しげと)さんは、「“思い込み”から“思いやり“へ──『銃口』より」と題して語った。同作品は、綾子さんが小学館の編集者から、「昭和を背景に、神と人間を書いてほしい」とテーマを提示されて書き始めたもの。1940年に起こった思想弾圧事件「北海道綴方(つづりかた)教育連盟事件」に巻き込まれた青年教師の受難と苦闘を描いた綾子さん生前最後の小説だ。

「思い込みや被害者意識を増幅させた結果、互いに銃口を向け合うのではなく、思いやりによってこそ人は生きる。そういう綾子さんの思いが作品の根底には流れているのではないでしょうか。それは令和の時代に入っても変わることなく、大切にしなくてはならないものだと思います」

午後の部では、20年前からホームページ「三浦綾子と旭川」を夫婦で運営している松下真佐子(まつした・まさこ)さんが、綾子さんが亡くなった当時を回想。夫妻は、同読書会設立前から現在まで、綾子さんに思いを寄せる人たちと関わりを持ち続けている。さらに、光世さんの著書『綾子へ』(角川書店)から、綾子さんが亡くなった「十月十二日のこと」が朗読部門メンバーにより朗読された。

上富良野町企画商工観光課の浦島啓司さん

現在、『泥流地帯』の映画化に向けて、舞台となった北海道上富良野町を中心にプロジェクトが進められている。同町企画商工観光課の浦島啓司(うらしま・けいじ)さんがそのPRを行った。

「大長編であり、災害という大テーマ、さらに泥流を映像で表現する難しさなどから、なかなか実現に至らなかったのですが、40年越しの切願が実現に向けて動き出しています。綾子さんは執筆にあたって上富良野の町を入念に取材して、主人公の耕作や福子の家の場所を決めたので、小説をよく読むと、それらが特定できるんです。綾子さんのファンの方には、ぜひ文学散歩も楽しんでいただきたい」

顧問の長谷川与志充さん

集会の最後には、読書会の顧問(前代表)で単立・東京JCF教会牧師の長谷川与志充(はせがわ・よしみつ)さんが読書会発足の経緯について語った。

「どう生きたらいいか悩み苦しんでいた中学生のとき、三浦綾子さんの『塩狩峠』と出会い、この主人公が信じたイエス・キリストを信じて生きていこうと決心しました。

その後、牧師となって東京での開拓伝道を示され、『私にはとてもそんなことはできない』と思ったとき、旧約聖書の出エジプトのことが思い起こされました。モーセは、不可能と思われた出エジプトを、自分の持つ杖(つえ)一つで成し遂げたのです。私にとってのその杖とは三浦綾子さんだと気づきました。

こうして2001年7月に三浦綾子読書会を発足させたところ、東京から全国各地、そして海外へと読書会は増え広がっていきました。これからもその杖で福音を伝え続けていけたらと思います」

記念集会の講演内容が収録されている読書会紀要「綾果」(1冊700円)は同読書会で購入可能。

 






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