【インタビュー】テコンドーのメダリストで牧師の岡本依子さん(後編)

前編を読む)

──信仰告白をしてから、人生は変わりましたか。

まったく違います! それまでは自分で考えて、自分で結論を出して生きる、みじめな生き方をしてきましたが、すべての答えを持っていて、私を愛して祝福したい方と一緒に生きる人生とでは、天と地ほどの差があります。

岡本依子さん

以前は、自分が成し遂げないと何も得られないから、ひたすら頑張って生きてきましたが、今はすべてをイエス様が持っておられるから、「この方と生きる人生を生きたい」と思うことができます。

トップ・アスリートになればなるほど、失敗を自分の責任として捉えます。自分で決めた目標に向かって、自分の力で成し遂げようとするから、苦しい。自殺しようとまでは思いませんでしたが、「できれば早く死にたい。それができたら楽なのになあ」と思っていました。「いつも明るく笑って、肯定的でいなければいけない」と思っていましたが、それも自分の力でやろうとしていたので、すごくしんどかったです。

──同じように苦しんでいるアスリートの方も多いのでしょうか。

そう思います。自分で考えて辿(たど)り着いた答えのために、自分の力だけで何かをやろうとするとき、人は「自分」という限界の中で苦しむしかありません。神様がおられる世界はまず、「あなたは今のままで価値がある」という前提です。それを受け入れると、「自分で何とかしなくては」から、「今の自分にすべてを与えてくださった神様に感謝し、喜びを表現したい」と思うようになります。自分の人生にとっても、人類史上最高にラッキーなことは、福音を聞いて受け入れたことです。

──12年にJTJ宣教神学校牧師志願科を受講してからは宣教師として仕え、さらに昨年は牧師按手(あんしゅ)も受けられていますね。

08年の北京オリンピックに出場した際、1回戦で敗退しました。本当は金メダルを獲って「神様が私にメダルを獲らせてくれました」と言いたかったのですが、口では「神様に栄光を」と言いながらも、自分のことを思っていたかしれないなという気持ちもありましたね。

そんな私に対して、韓国から応援に来てくれていた母教会の牧師先生が「神学校に行きなさい」と言ってくれたのです。世の中的には失敗した私に対して、神様は「私のために働きなさい」と言ってくださっている。偉大な神様のお仕事を、私のような者に任せようとしてくださる。これからは、こんな私でも主にお仕えできるのだと嬉しく、感動しました。

昨年の牧師按手は、イスラエルの建国70周年記念のツアーに参加した際、成田空港で突然決まったんです(笑)。私が神学校の先生に、「韓国に母教会がある私が、日本で牧師按手を受けるにはどうしたらいいですか」と相談したら、「エルサレムで受けたらいい」と言ってくださって。

イスラエルの建国記念日だった4月19日(ユダヤ暦のため毎年変わる)に、エルサレムでイエスが埋葬された「園の墓」で、30人くらいの、それもいろいろな教派の牧師先生に祈っていただき、牧師になることができました。

──現在は牧師として活動するほかに、テコンドー道場「ドリーム・テコンドー・スクール」を運営するなど、後進の指導にも力を入れておられますが、これからのことについて教えてください。

スポーツ・ニュースを見ていると、私たちのテコンドー協会だけではなく、最近、いろいろな問題が起こっていますよね。本来、スポーツは、神様が私たちの人生を豊かにするために造ってくださったものです。それを、「このスポーツで結果を出すための人間を育てる」という視点になってしまうと、歪みが生じたり、苦しむ人が出てきたりします。私自身もかつてはその一人でした。

パワー・ハラスメントなども問題になっていますが、スポーツ選手は、残した成績によって周りからの扱いが変わってしまう。たとえば、オリンピックでメダルを獲った選手と、獲れなかった選手を思い浮かべると、その差が分かりやすいのではないでしょうか。

「自分が神様から造られて、愛されているかけがえのない存在である」ということを選手たちに徹底して知ってほしいです。コーチが選手を愛し、成績よりも彼らの人生を大切にしてあげれば、選手たちは必ず豊かな人生を生きることができます。

かつて活躍したアスリートが、違法薬物使用など、犯罪に手を染めてしまうこともあります。彼らは自分がどれだけ大切な存在かが分からなくなっていると思います。現役時代に素晴らしい成績を残しているということは、人の何倍もの努力をしてきたはずです。でも、自分がそのままで愛されているという土台がしっかりしていないと、過度の努力は人格を歪めて、結局は自分や周りの人を傷つけてしまいます。

私は、神様の本当の愛に救われましたから、同じアスリートとして、そのように傷ついた人に重荷があります。私自身も同じように苦しんできました。成績だけが自分の生きる目的になるのではなく、夢や喜びの力で努力することを学び、「人生を豊かにする」という本来のスポーツの意味を回復させるために、オリンピックでいただいたメダルは生かしていきたいです。だから、テコンドーの組織も、神様の栄光が現れる組織にしたいです。問題が明るみに出たこともチャンスだと信じています。

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