良心を働かせて生きたい 「牧師といのちの崖」上映会と藤藪庸一さんの講演会

 

ドキュメンタリー映画「牧師といのちの崖」(加瀬澤充監督)の上映会が13日、日本バプテスト連盟・常盤台バプテスト教会(東京都板橋区)であった。その後、その映画に描かれた藤藪庸一(ふじやぶ・よういち)さんが「崖っぷちからの救い──あなたをあきらめない」と題して講演した。

藤藪庸一さん

藤藪さんは、日本バプテスト教会連合・白浜バプテスト基督教会(和歌山県白浜町)で牧師をしながら、高さ5、60メートルの三段壁(さんだんべき)で自殺しようとした人を助け、支援する活動を行っている。

崖の上には、「いのちの電話」と教会の電話番号が記された看板が立っている。生きる希望を失い、追い詰められてこの場所まで辿(たど)り着いたものの、どうしても飛び降りることができなかった人から、藤藪さんのもとには連日のように電話がかかってくる。

三段壁(写真:663highland)

藤藪さんは1999年に同教会牧師に就任した際、前任の江見太郎(えみ・たろう)牧師(著書『涙をもうぬぐって──いのちの電話は鳴りやまず』いのちのことば社)からこの活動を引き継ついだ。これまでに900人以上の自殺志願者を保護したという。帰る場所がない人には、教会で寝泊まりをしてもらい、藤藪さんが運営する配達弁当店「まちなかキッチン」で働きながら自立を目指す。

この映画では、三段壁で藤藪さんと出会い、「もう一度、生きる目的を見つけよう」と奮闘する人々や、その一人ひとりと真剣に向き合いつつ、さまざまな問題に葛藤する藤藪さんの姿が描かれている。

講演会では、「寄り添うことを考える」をテーマに語られた。

「私たちの周りでは、多くの人が自ら命を絶っています。そして、その周りにはたくさんの関係者がいます。亡くなった方には伝えきれなかったかもしれないけれど、その人はどれだけ愛され、どれだけ大きな存在で、どれだけ尊いいのちだったか。だからこそ関係者の方は、その死を受け止めきれず、苦しみます。同じような苦しみを味わう人を減らすためにも、私たちは、目の前の困っている人や苦しんでいる人に手を差し伸べるべきではないでしょうか」

また、善いサマリア人のたとえ(ルカ10:25~37)から、すべての人の心にある「良心」や、それを妨げる「罪」について話をした。

「皆さんは、泣いている子どもや、困っているお年寄りを見かけたら、『かわいそうに』と感じるのではないでしょうか。その『かわいそう』と感じる心が良心です。

でも、その人が困っていると分かって、『かわいそうに』と思っても、サマリア人のように具体的にその人に関わるには、越えなければいけない壁がありますよね。『自分がやらなくても誰かがやるだろう』とか、『今、自分には用事があるから無理だ』とか。厳しく聞こえるかもしれませんが、こんなふうにいろんな言い訳をして良心に従わないことが罪なんです。良心を働かなくさせる言い訳をあたかも正しいと思わせてしまうのが罪の働きだと思うのです。

実は僕自身もまったく同じ者です。三段壁から人を連れて帰る時も、自宅の場所がこの人に知られてしまうとか、毎回、迷いや葛藤があります。

藤薮さんの著書『あなたを諦めない──自殺救済の現場から』(いのちのことば社)も販売された。

神様は人間を創(つく)った時に、良い心も与えてくれました。しかし、アダムとエバが神様との約束を破ったとき、人間の中には罪が入った。だから、良い心が働く時には同時に罪も働きます。罪はしつこくて、正しいと思える言い訳をたくさん用意して、良心が痛まないようにする。そうやって良心に従わずに生き続けると、心がどんどん鈍くなってしまうんです。その生き方は、自分のことだけを愛し、自分のことだけを考えるということではありませんか。

私たちは、良心を働かせて生きていきたい。もしもあなたの前に『相談に乗ってほしい』、『話を聞いてほしい』という人がいたら、自分は選ばれたと思って、とにかく最後まで話を聞いてあげてください。そのとき、時間が取れなかったら、都合のいい時間を伝えて、その日はあなたから連絡を取ってほしいんです。

ただし、一人で背負う必要はありません。最後まで話を聞いても、答えが見つからなかったら、サマリア人が宿屋の主人に協力を頼んだように、信頼できる人に相談しましょう。そうして、その人を支える人を増やしていくことができたら、みんなでその人に関わることができるのではないでしょうか」

三段壁で出会ったある男性が、一人の若い女性と出会ったことがきっかけで生きる気力を取り戻し、病気で亡くなる直前に救いに導かれ、「これで安心して死ねる」と息を引き取ったエピソードなども語られた。

会場となった常盤台バプテスト教会の近くを走る東武東上線は、人身事故が多いことでも知られる。このことに胸を痛めていたという同教会の友納靖史(とものう・やすし)牧師は、このように語って会を締めくくった。「藤藪先生のお話や映画を通して、多くの方々とこの問題を共有したいという思いから、今回の上映会と講演会を教会員が企画しました。現在、悩んだり苦しんだりしている方がおられたら、ぜひお近くの教会へ行くきっかけにしていただけたら」

翌日の常盤台バプテスト教会の礼拝説教。ノンクリスチャンが多く参加し、説教に涙する人もいた。

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