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性的虐待に対応するための全世界の司教協議会会長会議 日本でもさまざまな対応

投稿日:2019年2月18日 更新日: -

 

聖職者による性的虐待と隠ぺい問題への対応を協議するため、全世界のカトリック司教協議会会長による会議が、21日から24日まで4日間、バチカンで開かれる。教皇フランシスコが全世界の司教協議会会長を招集するものだ。

バチカンにあるサンピエトロ大聖堂(写真:Jraytram)

教皇フランシスコは1月27日、「世界青年の日」パナマ大会の帰りの機内で、この会議には三つの課題があると語った。まず、虐待された子どもたちが経験したひどい苦しみについて司教たちに自覚を促すこと。次に、聖職者による虐待の訴えを受けた時にどのように対応すべきかを司教たちに教えること。そして、この問題の対処の手順について、すべての司教協議会に理解が確実に及ぶようにすることだ。

米国ボストン大司教区のジョン・ゲーガン神父が30年にわたって130人もの児童に性的虐待を行い、大教区の責任者がそれを隠ぺいしてきたことを、ボストン・グローブ紙が2002年に報道した。その顛末(てんまつ)を描いた映画「スポットライト──世紀のスクープ」が15年に公開され、第88回アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞。事件の詳細は2003年ピューリッツァー賞公益部門を受賞した同タイトルの邦訳書籍(竹書房)に書かれている。

それをきっかけに世界各地で同様の事件が次々に明るみに出された。昨年8月には、ペンシルベニア州最高裁判所が州内のカトリック教会で起きた1000件以上の性的虐待を調査し、300人以上の司祭の実名とともにその結果を公表した。

これを受けて教皇フランシスコは昨年8月20日、12億人のカトリック信者に宛てた異例の「神の民への書簡」を発表した。

「わたしは、弱い立場に置かれている子どもや大人に安全を提供し、彼らが傷つくことのないよう守るために、さらには『いかなる違反も容赦しない(ゼロ・トレランス)』という考え方を広め、罪を犯した人と隠ぺいした人すべてに説明責任を果たさせるのに欠かせない措置を実践し保証するために、世界のさまざまな場所で活動や取り組みが行われていることを知っています。切実に必要とされているこうした活動や制裁を実践するのが遅れてしまいました。しかしわたしは、思いやりに満ちたより良い文化を今現在と未来の社会に保障するために、それらが役立つと確信しています」

日本では2002年6月、定例司教総会でこの問題について討議し、「子どもへの性的虐待に関する司教メッセージ」を出した。そこにはこのように書かれている。

「私たち司教は、日本において教会のために働く人々が誠実であり、献身的であると確信しています。しかし、不幸にして日本の教会において聖職者、修道者による子どもへの性的虐待があったことが判明いたしました。私たちはこの点に関してこれまで十分に責任を果たしてこなかったことを反省します。私たち司教は、被害者の方々に対し誠実に対応するとともに、その加害者である聖職者、修道者に対しては厳正に対処いたします」

2003年2月、日本カトリック司教協議会はカトリック中央協議会の社会福音化推進部内に「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」(責任司教:松浦悟郎、担当司教:平賀徹夫)を設置した。

翌年、「カトリック新聞」(2004年10月30日付)の一面広告に「セクシャル・ハラスメントに関する意識調査および実態調査アンケート」を掲載するなど、全国アンケート調査を実施した。110件(女性86人、男性21人、無回答3人)の回答のうち68%が「教会共同体の中でセクハラがあると思う」と答え、「身体的接触の強要」が17件(女性16人、男性1人)あった。「身体的接触の強要など深刻なケースの加害者の多くは聖職者である。被害者の多くは女性。男性や子どものケースも2例ある。告解の場、黙想の面接、仕事場など、密室の場が殆(ほとん)どである」(小冊子「セクシャル・ハラスメントに気づくことから」)

2013年には、「教会が子どもの権利を守るために──聖職者による子どもへの性虐待に対応するためのマニュアル」を発行し、無料で配付している。

教皇フランシスコは、教皇庁に新しく「児童を守るための委員会」を設立し、全世界の教会がこの問題に真摯(しんし)に向き合うように促した。そして、全世界の司教団に向けて、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるよう通達。日本の司教団はこの日を四旬節第2金曜日と決め、2017年3月17日に第1回目のミサ(式次第)などを行った。

文藝春秋」3月号には、『消された信仰』(小学館)を書いたノンフィクション作家の広野真嗣氏が「カトリック神父『小児性的虐待』を実名告白する」という記事を寄稿している。児童養護施設「東京サレジオ学園」(東京都小平市)でトマス・マンハルド神父が性的虐待を行っていたことや、現在でも疑惑をかけられている元司教のことなどが書かれている。マンハルド神父の犯罪については、同学園で中学時代を過ごした花村萬月氏が小説『青い翅の夜』(文藝春秋)に描いている。

プロテスタントでもさまざまな性的虐待事件が起きている。事件化したもの以外にも教会内での性的虐待はあるが、それはごく限られており、むしろ性倫理に関しては真面目すぎる教会が大半といえる。一方、被害者を装った狂言によって教職者を陥れるようなケースもある。こうした事件以後、主要な教団ではセクシャル・ハラスメント対策がなされるようになった。

本来、キリスト教会は、コルベ神父やマザー・テレサなどに代表されるように、キリストに従った、神と人に仕える生き方を多くの人に伝えてきた。たとえごく一部のスキャンダルが教会全体の信用を失墜させたとしても、被害者のプライバシーを最大限守りながら、早急にこの問題を明らかにして、負の連鎖を断ち切る必要がある。その真摯な姿勢こそ、教会の社会的信用を回復させる道なのではないだろうか。

日本基督教団九州教区 セクシュアル・ハラスメント事件の解決を願う(2005年6月25日)

同セクシュアル・ハラスメント防止策・対応措置に関するガイドライン

日本基督教団セクシュアル・ハラスメント防止規則制定巡り議論(2006年3月18日)

日本聖公会京都教区 H元牧師、少女性的虐待事件への2001年当時の教区の対応についての調査報告書

日本ホーリネス教団K元牧師 性加害事件検証報告

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