大人は子どもに何ができるか『奪われる子どもたち──貧困から考える子どもの権利の話』出版記念フォーラム

 

富坂キリスト教センター編『奪われる子どもたち──貧困から考える子どもの権利の話』(教文館)の出版記念フォーラム(主催:富坂キリスト教センター)が2月24日、YMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)で開催された。刊行に関わった8人の研究者が、子どもの現状とその取り組みについて専門的な立場から語った。

左から、今井誠二さん、前田美和子さん、坪井節子さん、西島央さん、糸洲理子さん、宮本みち子さん、浜田進士さん、小見のぞみさん。

富坂キリスト教センターでは、「子どもの貧困とキリスト教」研究会を3年前に発足させ、子どもシェルター活動など、さまざまな活動を通して、子どもの惨状を浮き彫りにしてきたが、同書はその成果をまとめたものだ。

登壇したのは、青少年の自立を支える奈良の会副理事長の浜田進士(しんじ)さん(1章)、千葉大学名誉教授の宮本みち子さん(2章)、沖縄キリスト教短期大学教員の糸洲理子(いとす・あやこ)さん(3章)、青山学院大学教員の西島央(ひろし)さん(4章)、カリヨン子どもセンター理事長で弁護士の坪井節子さん(5章)、広島女学院大学教員の前田美和子さん(6章)、尚絅(しょうけい)学院大学教員で牧師、仙台夜まわりグループ理事長の今井誠二さん(7章)さん、聖和短期大学教員の小見(こみ)のぞみさん(8章)。

富坂キリスト教センター編『奪われる子どもたち──貧困から考える子どもの権利の話』(教文館)

まず、それぞれが担当した各章について短く説明がなされた後、パネル・トークが行われた。

1章「子どもには守られるべき権利がある」を担当した浜田さんは、子どもの権利条約について語った。

2章「子どもの貧困の実態と社会政策」担当の宮本さんは、「これまでの社会保障制度は子どもの貧困を保障しておらず、また家族のきずなが弱くなっている」と指摘する。

3〜5章では、年代ごとで子どもに何が起きているかが書かれている。

3章「ウチナーンチュが語る沖縄の『子どもの貧困』」担当の糸洲さんは、沖縄での保育の現状と、園児がどう社会を捉えているかを伝えた。

4章「『貧困』は子どもの将来にどう影響するのか」担当の西島さんは、中学生が豊かな人間関係を築くために部活動があるという。

5章「今晩、泊まるところのない子どもたち」担当の坪井さんは、傷ついた子どもたちとどのように歩んできたかを語った。

6章「人はパンだけで生きるものではない」担当の前田さんは、スピリチュアル・ペインについて触れる。「自分の信じていたこととの関係が断絶したことで、居場所が見いだせなくなる子どもがいます。物質的なことを支援するだけでは、子どもたちが求めていることを見落としてしまうのでは」

7章「子どもを受け入れるイエス」担当の今井さんは、「子どものように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない」(マルコ10:15)という聖句から次のように問いかけた。「居場所のない子どもを受け入れなくて、どうして神の国に入ることができるでしょうか。寄るべない子どもたちを受け入れずに、どうしてキリスト教だと言えますか」

司会を務めた小見のぞみさん。

最終章の8章「社会関係資本のワンピースになる」担当の小見さんは、子どもの権利条約が示す「生きる、育つ、守られる、参加する」ことができる社会を創(つく)るための道筋について述べた。「それぞれの大人が社会関係資本の一つのピースとして子どもを育てる何かになれないでしょうか。その道を示してくれるものが、キリスト者なら聖書です」

パネル・トークでは「遊び」が一つのキーワードとなった。浜田さんは、「遊ぶ中でスピリチュアル・ペインが緩和されるのでは」と話し、坪井さんは、「生きる気力のない子どもは、幼い時に我を忘れて大人と遊んだ記憶がありません」と説明した。西島さんは、「学校と家庭のつながりが希薄な現在、部活動の場は、遊びが通用する部分として残っている」と語る。糸洲さんは、「園児にとって大切なのは、大人に強要されず、自分の好きな遊びをすることです」と述べ、小見さんは、「キリスト教保育には可能性があります。遊ぶことを神学的にどう考えるかを今後の宿題にしたい」という。

続いて今井さんがこう述べた。

「大人の貧困の問題と子どもの貧困の問題は連続しています。ホームレスになった人の話を聞くと、ほとんどの人が子どもの頃に、力になってくれる大人がいませんでした。だからこそ教会は、イエスにあって共に生きるということを実践していかなければ。クリスチャンはもっとこのことを前面に出して活動してもいいと思います」

次のような前田さんの言葉が印象的だった。

「『失敗する自分でも大丈夫だ』と思えることが、生きる力につながっていきます。それはキリスト教の愛につながるものだと感じています」

富坂キリスト教センター編『奪われる子どもたち──貧困から考える子どもの権利の話』
2020年2月20日初版発行
教文館
1800円(税別)

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