【米クリスチャニティ・トゥデイ】説教者はポスト・キリスト教社会に影響を及ぼせるか

 

ポスト・キリスト教社会の英国では、宗教的なテーマであれ、一般的なテーマであれ、人々が演説に耳を傾けるという文化は失われている。ロイヤル・ウエディングでのマイケル・カリー首座主教の説教は、予想外にも多くの人の心をつかんだ。多数の英国人にとってロイヤル・ウエディングで最も意外だったのは、説教が人種問題に関する全国規模の対話につながったということだ。人々はこう反応した。「説教が人を惹(ひ)きつけることができるなんて、誰が想像しただろう」

マイケル・ブルース・カリー首座主教(写真:Beth Crow)

現在、キリスト教会の内外において説教は、その質も意義も低く評価されがちだ。カリー主教の説教に対する英国メディアの典型的な反応は、そのよい例といえる。「ガーディアン」紙のある執筆者は正直にも、「まさか感動するとは思わなかった」と書いた。

「インターネットのおかげで、例外的に優れた賜物を与えられたごく少数の説教者の説教にあっという間にアクセスできるようになったので、人々の説教全般への不満が増した」という考えがキリスト教界にはあるようだ。スーパースター・レベルで説教できる説教者など、身近にはあまりいない。それでもなお私たちは、達成不可能な水準を説教者に要求してしまう。2018年現在、説教全般への関心は薄いにもかかわらず、自分の行っている教会の牧師ではない、ごく少数の説教者に夢中になるクリスチャンは多い。

T・デイヴィッド・ゴードン著『ジョニーはなぜ説教ができないか』(邦訳なし)は、「現代の説教は特に優れたものではなく、教会員の大半は期待してもいない」という考えを示した。ゴードンによれば、典型的な21世紀の説教は「まとまりがなく、明瞭でもなく、聖書にうまく関連づけられていない」ものだ。

ゴードンはその理由をこう説明する。「メディアが変わったことで、現代ではよい説教者の養成がきわめて難しくなったためだ」と。電話、ショート・メッセージ、急ごしらえの電子メールなどでコミュニケーションがなされる世の中で、今日の説教者はまともな著述というものを知らずに育っている。ゴードンの考えによれば、現代の説教者の多くは、文章を読んだり、きめこまやかに文章作成したりすることを学ばずに育っているのだ。その結果、彼らは言葉をいい加減に用い、文章を読んでも、何が大切で、何が大切でないかを見分けることができない。彼らは聖書を理解しようとあがき、正確で説得力のある言葉を用いて分かりやすく核心を述べる能力が自分には十分に備わっていないことに気づくのだ。

ヘルマン・バーフィンク(写真:Contemporary photograph)

1世紀前、オランダ改革派の神学者ヘルマン・バーフィンク(1854~1921)は、同じように悲観的な立場から説教に取り組んだ。バーフィンクは、カンペン神学校とアムステルダム自由大学の教義学の教授で、その改革派教義学の著書は広く読まれている。

バーフィンクの生きていた頃のオランダは、急速に世俗化していた。バーフィンクが生まれる6年前、オランダでは自由主義に基づく新憲法改正が行われ、それまで社会の主流派だったオランダ改革派教会はその力を失い、オランダは自由主義の世俗国家となった。バーフィンクの生まれた環境は、教会のライバルである世俗社会が、競って社会の公的領域に場所を確保し、影響力を増そうとしていた時代だった。

これはつまり、大衆の声がさまざまな媒体を通して拡散するようになったということを意味していた。政党や新聞などが出現し、世俗的な知識人、小説家、漫談家といった、大衆の面前で話をする新しい種類の人々が目立つようになったのだ。このように急に溢(あふ)れ返るようになった大衆の声について、かつてバーフィンクは次のように書いている。「今日では、説教者は教会の中よりも外のほうに多い」

バーフィンクは、こうした(聖俗の)主導権争いが繰り広げられていたこの時代の典型的な説教がよいものだとは思っていなかった。しかし、彼が19世紀の説教に関して指摘していた問題は、平均的な説教者の読み書き能力や表現力とは無関係だった。(次ページに続く)

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