ロッカー牧師が世界の人々との出会いを語る 『すべての壁をぶっ壊せ! Rock’n牧師の丸ごと世界一周』

 

日本福音ルーテル教会の4人の牧師が2013年に結成したバンド「牧師ROCKS」。そのリーダーでベースとボーカル担当の関野和寛(せきの・かずひろ)氏(日本福音ルーテル東京教会牧師)が月刊伝道新聞「こころの友」(日本キリスト教団出版局)に連載中だ。そのタイトルも「ロッケン牧師の歌舞伎町の裏の教会からゴッドブレス!」。

先月、これまでの記事に書き下ろしと旅の写真を加えた著書『すべての壁をぶっ壊せ! Rock’n牧師の丸ごと世界一周』(同)を出版した。世界各国を旅した関野氏が、その先々で起こるハプニングや人々との出会いを、ユーモアを交えつつ、心が温かくなる言葉で綴(つづ)っている。

『すべての壁をぶっ壊せ! Rock’n牧師の丸ごと世界一周』(写真:日本キリスト教団出版局提供)

1980年生まれの関野氏がロックと出会ったのは中学3年生の頃。高校、大学時代を通して音楽に明け暮れ、将来はプロのロッカーになりたいと思っていた。しかし、進路を考え始めた青山学院大学3年生のとき、重度障がいのある妹が危篤状態に。何もできずに混乱していた時、旧知の牧師が神戸から駆けつけ、祈ってくれたという。それを通して家族が勇気づけられたのを見て、「ロッカーも牧師も、メッセージを伝える仕事に変わりはない」と、大学卒業後、日本ルーテル神学校に進み、2006年に牧師になった。

関野氏は冒頭で次のように語る。

「日本の常識は世界の非常識と揶揄(やゆ)されるが、きっと俺(おれ)たちは暗黙に押し込められた狭い常識の中に閉じ込められている。日々過剰なほどに周りとの同一化を求められ、職場、家庭、学校、さまざまな場所で周りに気を遣(つか)いまくり、顔色をうかがい、神経をすり減らしている。そんな日々に疲れ果てたなら、Rock‘n牧師と旅に出よう」(9頁)

同書の中でいちばん印象的な出会いは、タンザニアでマサイ族の青年と物々交換をしたことだという。関野氏が腕に巻きつけていた携帯用の虫よけとトラの牙を交換したのだ。互いの国にいなければ、その価値が分からないもので、どちらが得をしたのか分からないが、「互いの違い過ぎる違いを楽しんで受け入れ合うことが人類の未来に求められている」(71頁)。

著書を片手に笑顔の関野氏=6日、日本福音ルーテル三鷹教会(東京都三鷹市)で

近年、関野氏がどうしても行きたかった国の一つはインド。実際にマザー・テレサが設立した医療施設も訪問したが、その現場は想像を超えるものだった。

「どこかきれいな病院で、静かにシスターたちが行きかう場所だと思っていましたが、そこは怒号が飛び交い、まさに戦場でした。それでも、これがここにおいての『愛のかたち』なのだと思ったんです」と関野氏。

ラオスに旅をした際には、カンボジア人牧師と一緒だった。カンボジア語とタイ語、英語の3カ国語を見事に話すので、その理由を聞くと、「カンボジアの悲惨な歴史の中で生き抜くために得た知恵だ」と言われたという。

「語学力や職能がある者だけが国際人になるのではない。大きな苦しみから立ち上がり、それでも光を求めて立ち上がる者が国籍、言葉、国境、そしてすべての壁を越えていくのではないだろうか」(63頁)

関野氏自身も、自分のまわりに壁を作り、それに苦しむこともあるという。忙しい毎日の中でストレスをためてしまうことも。

「そんな時は、キックボクシングがストレス発散法の一つ。疲れていても、体を動かすと、さっぱりする」

「牧師ROCKS」のライブで演奏する関野氏(左)=6日、日本福音ルーテル三鷹教会(東京都三鷹市)で

この本を出版している日本キリスト教団出版局は、おもに同教団の著者の本を扱うが、関野氏はルーテルで、編集を担当した市川真紀氏はカトリック信徒。エキュメニカルな1冊という点でも「壁をぶっ壊した」と言えるだろう。

「市川さんは、俺のまだ気づいていないさまざまな部分を引き出してくれた。一つの章に、おそらく10時間以上の時間をかけて編集をして、何度も校正を重ねてくれた。熱心な編集者がいたからこそ、できた1冊」

最後に読者へのメッセージを聞いた。

「いろいろな壁に囲まれている人たちに読んでもらいたい。一つ一つのエピソードは、見開き2ページで読めます。どこから読み始めてもいいので、電車の中やちょっとした休憩時間などに興味のある章から読んでもらえれば」

 






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