【あっちゃん牧師のおいしい話】第9回 伊達巻 齋藤篤

八日がたって割礼の日を迎えたとき、幼子はイエスと名付けられた。
新約聖書 ルカによる福音書2章21節前半(聖書協会共同訳)

皆さん、新年あけましておめでとうございます。
本年も、コラムを介したお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

皆さんは、お正月の三が日をどのようにお過ごしでしたでしょうか。いつもとはひと味違ったお正月を迎えられたのではないかと思います。僕も今年は実家のある福島県に帰らず、自宅でゆっくりと過ごすことができました。普段は元日恒例の、この地域にある教会が合同で開催する元日礼拝に出席するのですが、今年はそれも無しとなり、まさにステイホームのお手本のような生活をしていました。

欧米では、日本で言う年明けのイメージは、クリスマス・イブに込められていたというのが、私がドイツに住んでいたときの印象でした。ですから、1月1日を迎えるというのは、日本よりはずっと淡白だったような気がします。大晦日の夜に花火をあげて、1日は休みですが、2日から通常通りの業務が再開するといった感じです。

そんななかでも、1月1日を教会の世界では長いこと「キリスト命名祭」と名付けて、そのための礼拝をおこなってきた歴史があります。その根拠とは、生まれて八日目に、赤ちゃんはイエスと名付けられたという、ルカ福音書の記述です。クリスマスと定めた12月25日から数えて8日目が、1月1日だと言うのです。実際に、イエスが12月25日に生まれたなどということは、聖書のどこにも書かれていないのに、人間の都合で決めてしまったクリスマスの日付にならって、キリスト命名祭というのも、なんか不思議な気分にさせられます。しかし、積極的に受け止めれば、このような行事を通して「へぇ。イエスって生まれて8日目に名付けられたんだ」ということが分かれば、覚えやすい日付とからみ合わせて知ることのできるマメ知識なのかなと思ったりしています。

さて、モノの由来ということで言えば、今回のテーマは「伊達巻」です。

かまぼことならんで、お正月料理に欠かせない代表的なアイテムである伊達巻ですが、なかなか好き嫌いの差がある食べ物なんじゃないかなと思ったりもします。僕も小さい頃は、甘いんだかしょっぱいんだか、よく分からない怪しい食べ物というイメージがありました。しかし、今となってはあの甘じょっぱさがたまらない大好きな一品に。

教会のお隣は八百屋さんなのですが、年の瀬も迫ったころ、店先に並んだのはお正月料理の数々。かまぼこ・きんとんなどなどあるなかで、ありました~。伊達巻伊達巻!迷わず1本を購入。家に持ち帰ると妻ちゃんのひと言。「本当にあつしくんって伊達巻好きだよね~」と。実は妻ちゃん、伊達巻がそんなにお好きでないのです。そんな妻ちゃんの視線をよそに、ひとり伊達巻をおいしくかじる僕。この光景も我が家恒例の正月風景となってしまいました。

しかし、食べるだけでは芸がない。今年は「伊達巻」を雑学してみようと思い、いろいろ調べていたら面白いことが次々と分かったという訳です。

まず、なぜ伊達か?諸説あるようですが、伊達と言えば戦国時代から江戸時代はじめにかけて歴史を飾った伊達政宗(だてまさむね)を思い出される方が多いのではないかと思います。伊達政宗は派手な人物で有名ですが、その派手さが伊達巻のかたちと色にあるということで、伊達巻と言う名前になったとか、伊達政宗本人が好んで食べていたとか、いずれにせよ、伊達政宗にちなんでいるというのが共通した見解であるようです。伊達家は僕の故郷である福島県北部に位置する信達(しんたつ)地方(現在の福島市・伊達市・伊達郡)を地元とする武将でした。小さい頃から、伊達という名前に親近感を感じていた僕にとっては、なんとも嬉しい話であったりします。

そして、それよりも興味深いのは、伊達政宗自身はキリスト教に深い関心を持つ人物であったということです。1613年、スペインとの直接貿易を交渉するために「慶長遣欧使節」が欧州に向けて出発しました。フランシスコ会宣教師のルイス・ソテロ、仙台藩士支倉常長(はせくらつねなが)らが、ときのスペイン国王フェリペ3世、ローマ教皇パウロ5世に謁見(えっけん)しました。そのときに携えた書状が今でも残されているわけですが、そこには伊達政宗本人が洗礼を受けることを希望しており、東北地方にキリスト教を伝えたいといった内容が記載されているのです。ことの真実はどうか分かりませんが、伊達政宗とキリスト教の関係というものをうかがい知ることができるわけです。結局、徳川将軍家によるキリスト教の禁教と鎖国によって実現はしませんでしたが・・・。

しかし、そのときはキリスト教が日本で広まることがなかったとしても、伊達巻の原型となる料理は、長崎を通じてその後の日本の食文化に新たな一品を加えた。そして、キリスト教に関心を抱いていた伊達政宗にちなんだ名前が付けられて本日にいたっている。そんな歴史を思い描きながら、今年の伊達巻は美味さひとしおだったということで、今回はおしまい。

それでは、次回お目にかかりましょう!

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