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フェリス女学院大学学院長の鈴木佳秀氏、『VTJ旧約聖書注解 出エジプト記19~40章』刊行

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フェリス女学院大学学院長の鈴木佳秀(すずき・よしひで)氏による『VTJ旧約聖書注解 出エジプト記19~40章』(日本キリスト教団出版局)が4日、刊行された。前半の『出エジプト記1~18章』が昨年11月に出て1年弱。日本語で書き下ろす聖書注解シリーズ「出エジプト記」が完結した。

鈴木佳秀著『VTJ旧約聖書注解 出エジプト記19~40章』(日本キリスト教団出版局)

鈴木氏は1944年、熊本県生まれ。高校1年の時に受洗。68年、国際基督教大学教養学部卒業。72年、同大学院教育学研究科修士課程修了。旧約学者である関根正雄が教える東京教育大学大学院で学び、75年に文学研究科博士課程単位取得満期退学。82年、米国クレアモント大学大学院博士課程修了、宗教学博士(旧約聖書学専攻)。新潟大学教養学部助教授、同大人文学部教授を経て、99年、同大人文学部長、2005年、同大学院現代社会文化研究科長を歴任。09年に定年で同大名誉教授になるとともに、15年まで敬和学園大学長。その後、現職。

著書に『申命記の文献学的研究』(日本キリスト教団出版局、1987年)、『旧約聖書の女性たち』(教文館、93年)、『アブラハム──約束を背負わされた父と子』(新潟日報事業社、2003年)、『ヘブライズム法思想の源流』(創文社、05年)がある。

鈴木佳秀氏

この注解シリーズの大きな特徴は、日本語で考える現役の研究者が書き下ろすので、翻訳と違って分かりやすいことだ。これまで注解書といえば翻訳物が多く、日本人によるものは『新共同訳聖書注解』(日本キリスト教団出版局)や『新聖書注解』(いのちのことば社)などはあったが、半世紀前に書かれたものもあり、そういう意味で待望の日本発の注解書が誕生したことになる。また、この注解書で提示される聖書本文も、著者による翻訳である点も注目されるところ。

出エジプト記は、モーセの生い立ちから始まる物語として親しまれている前半と違い、シナイ山にモーセたちが着いて十戒を授けられる20章以降は、さまざまな神の掟(おきて)が続く。32章で、モーセが留守の間、イスラエルの民が金の子牛を礼拝し、怒ったモーセが十戒の刻まれた石の板を粉々に砕くという事件があるものの、35章からはまた細かい幕屋建設についての文章になる。

30代の鈴木氏が米国クレアモント大学大学院に留学中、その24章12節以下の幕屋設営をめぐる箇所を学ぶことになったという。「なぜこんなつまらない(!)テキストを使うのか、とその時は正直に思った」と鈴木氏も打ち明けるとおり、日本人クリスチャンでこの箇所を読みこなしている人は少ないだろう。ところが、そのゼミにユダヤ教のラビ夫人が参加しており、彼女はこの「幕屋の伝統」の箇所がいちばん旧約の中で気に入っていると言い切ったのだ。なぜなら、「礼拝に関わる大切な伝承を、先祖たちが忠実に守り語り伝えて来たからこそ、今日でも私たちはその伝承のとおりに祭りを祝っているのです。それが今、そのまま聖書に残されているから重要なのです」と答えたという(316~317頁)。

「(20章)2節の『わたしはあなたの神ヤハウェ』という宣言は、イスラエルの子らや民を対象とする表現でなく、聞き手である『あなた』に直接語りかける様式を取っている。それも神ヤハウェが、自ら『あなたの神』であると宣言しているのである。出エジプトの出来事が語られるその流れの中では、個人的な関わりの中で初めて親しく語りかける様式での宣言である。そのことに比類なき特徴がある。これまでにない、全く新たな関係の樹立に向けた、ヤハウェ自身による意志の表明である」(30頁)

「出エジプト記が語るのは、ヤハウェが『あなたと共にあろうとする』(3:12)という意志を持った神で、その意志はモーセを通して語り伝えた律法に聞くことで成就するということである。律法に聞き従うことを通して、ヤハウェの臨在がイスラエルの子らの間で成就するのである。それによって、イスラエルの子らもまた、『あなたと共にあろうとする』という意志を持った神ヤハウェとの出会いを、モーセと共に経験するのである」(313頁)

私たちも礼拝やディボーションにおいて、「あなたと共にあろうとする」神から、「あなた」と直接語りかけられる経験をしているだろうか。ぜひ出エジプト記後半の幕屋についての記述を学ぶことで、礼拝とは何かを深く知りたいものだ。

VTJ/NTJは全83巻(旧約聖書48巻、新約聖書35巻)を予定しており、第1回配本『ガラテヤ書簡』(浅野淳博著)が昨年10月に刊行されたのを皮切りに、今後、年4冊前後を出し、20年後の完結を目指す。

鈴木佳秀著
『VTJ旧約聖書注解 出エジプト記19~40章』
日本キリスト教団出版局
2018年10月4日初版発行
A5判上製・336頁
通常価格4400円(税別)
シリーズ刊行開始記念特価3800円(税別、2019年3月31日まで)

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雜賀信行(さいか・のぶゆき)

雜賀信行(さいか・のぶゆき)

「クリスチャン・プレス」編集長。カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。2001年からキリスト新聞社をはじめ、キリスト教出版社を中心に書籍や雑誌の編集を数百冊手がけてきた。著書に『人生が変わる聖書のことば60』(いのちのことば社)、『牧師夫人新島八重』『キリシタン黒田官兵衛』『宮沢賢治とクリスチャン』などがある。

2018年11月17日 患難との戦い(フィリピの信徒への手紙 1:12-20)
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兄弟たち、わたしの身に起こったことが、かえって福音の前進に役立ったと知ってほしい。

つまり、わたしが監禁されているのはキリストのためであると、兵営全体、その他のすべての人々に知れ渡り、

主に結ばれた兄弟たちの中で多くの者が、わたしの捕らわれているのを見て確信を得、恐れることなくますます勇敢に、御言葉を語るようになったのです。

キリストを宣べ伝えるのに、ねたみと争いの念にかられてする者もいれば、善意でする者もいます。

一方は、わたしが福音を弁明するために捕らわれているのを知って、愛の動機からそうするのですが、

他方は、自分の利益を求めて、獄中のわたしをいっそう苦しめようという不純な動機からキリストを告げ知らせているのです。

だが、それがなんであろう。口実であれ、真実であれ、とにかく、キリストが告げ知らされているのですから、わたしはそれを喜んでいます。これからも喜びます。

というのは、あなたがたの祈りと、イエス・キリストの霊の助けとによって、このことがわたしの救いになると知っているからです。

そして、どんなことにも恥をかかず、これまでのように今も、生きるにも死ぬにも、わたしの身によってキリストが公然とあがめられるようにと切に願い、希望しています。

(フィリピの信徒への手紙 1:12-20)

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