【インタビュー】「必要とされていない」と挫折した後、「愛されている」と歌えるように ゴスペル・シンガーのTiAさんに聞く(後編)

前編を読む)

──初めてゴスペルを歌われたのは?

その教会の牧師から「あなたの職業は」と聞かれたので「歌手です」と答えたら、「地元のゴスペル・コンサートがあるから、そこで歌ってごらん」って言われたんです。そのコンサートで歌った「CENTER OF MY JOY」という曲が、私が初めて歌ったゴスペル・ソングです。歌いながら、今までにない感動を味わい、涙が止まりませんでした。

ちょうど同じタイミングで「マクドナルド・ゴスペル・フェスト」への出場も決まりました。2万人も集まるスタジアムで行われる米国最大級のゴスペル大会です。

──初出場で優勝をしたのは本当にすごいですね。

神様に導かれたことと、亡くなった愛犬からのギフトだったと思っています。オーディションで2万人から選ばれてファイナリストになりました。そのフェスのプロデューサーからは、「真似事ではなく、魂から歌うネクスト・レベルの日本人」とコメントしていただきました。

また、「ブルックリンXファクター」という大会にも出場しました。その時の出場者は、アポロ・シアターで何度も優勝している方など、一流の人たちばかりだったんですよ。

その時、審査員の方に言われたのは、「あなたは心で歌っていた」。私が子どもの頃、演歌好きでよく歌っていた母に、「歌は心で歌ってね」と教わってきたのですが、それがここでつながったという感覚がありました。

隣の教会のクワイアーに入って、礼拝にも参加するようになり、昨年の9月に洗礼を受けました。「日本で受けたほうがいいんじゃないか」と言われたのですが、「神様と出会ったハーレムで洗礼を受けたい」と言い張ったら、「じゃあ両方でやろう」ということになって、まずハーレムの教会のプールで洗礼を受けました。それから、クワイアーが日本に行く機会に新潟の日本海でも浸礼を受けました。短期間で2回も受洗するのはちょっと珍しいですよね(笑)。日本での受洗式には、母も参加してくれました。

──TiAさんはゴスペルを通して神様の愛を知ったんですね。

家庭環境の影響もあって、子どもの頃からずっと「私は愛されているんだろうか」、「私は一生愛されない人間なんだ」と思っていました。でも、ゴスペルを歌いながら皆と祈っている時に「あなたは愛されているよ」というメッセージを感じて、寂しかった心が愛で満たされるのを感じました。

それと同時に、家族間のことで、神様に「赦(ゆる)しなさい」と言われた出来事もありました。今までたくさん抱いてきた「赦せない」という思いや憎しみ、悔しさなど、すべて手放して赦した時に、愛であふれていくのが分かりました。「この思いを歌にしたい」と思うようになったんです。

ありのままの自分を受け入れてくれたニューヨークと、導いてくださった神様に感謝しています。

──信仰を持つ前と後では、歌に込める思いは変わりましたか。

大きく変わりました。信仰を持つ前は、感謝とリスペクトを込めてゴスペルを歌っていましたが、今は神様を賛美しながら、自分自身と神様に向けて歌っています。私にとっては歌うことは祈ることであり、祈ることが歌うこと。それが今の私のすべてです。

もう一つ大切なのは、とにかく楽しんで歌うこと。神様も「喜んで賛美しなさい」とおっしゃっています。

ある方に「Trust Your Gift」(神様があなたに与えた賜物を信じて歌いなさい)と言われたことがあります。テクニックではどうしても本場のゴスペル・シンガーたちには敵いません。でも、彼らの真似はできないし、する必要もないと思うんです。アジア人の私は、欧米人とは声質も体形も全然違うけれど、それも面白いポイントの一つですよね。私は私らしく歌うことで届けられるものがあるんじゃないかなと思っています。

──今回発売された「MIRACLE」にはそんなTiAさんの思いが詰まっているんですね。

はい。5年間のニューヨークでの生活をすべて、このアルバムに込めました。初めてハーレムで歌った「CENTER OF MY JOY」や、日本で知って大好きになった「君は愛されるために生まれた」のカバー曲も収録されています。

また、「JOYFUL」というオリジナル曲には、「生きることは歌うこと、歌うことは祈ること」というフレーズがあります。一度は歌うことをやめようと思った自分の中から、こんな歌詞が生まれたことが本当に嬉しかったし、この5年間で、2度と体験できないようなことがたくさん経験できました。つらくて苦しい期間があったからこそ、今がある。そう思うと、ただ感謝の思いでいっぱいです。

──今後の夢はありますか。

まずは、次回の「マクドナルド・ゴスペル・フェスト」に日本人100人で挑戦すること。2万人が集まる会場で賛美するって、すごく特別なんです。あのステージから見る景色をぜひ一緒に見たいと思っていて。これからメンバーを集めたいと思っているのですが、もしも実現したら、私が通っているハーレムの教会でも一緒に歌ってみたいですね。

もう一つの大きな夢は、米国で日本人シンガーとしてゴスペルのアルバムをリリースすること。私自身がゴスペルで救われたように、私がゴスペルを歌うことで誰かの救いになれたらいいなと思っています。

生きていると、つらいことや苦しいことはありますが、「これはきっと神様からのメッセージなんだな」と思います。「次はどんなことが起こるのかな」、「神様がどのように私を運んでくださるのかな」と思うと楽しみですね。

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