素直に聖書を読み取る大切さ 青野太潮氏が東京バプテスト神学校で夏期公開講座

 

東京バプテスト神学校(坂元幸子校長、東京都文京区)は8月14〜16日、日本バプテスト連盟・茗荷谷(みょうがだに)キリスト教会の礼拝堂で夏期公開講座を開催した。新約聖書学を専門とする西南学院大学名誉教授で、日本新約学会前会長の青野太潮(あおの・たしお)氏の講義を108人(ライブ受講者も含む)が受講した。

青野太潮氏

「聖書学は新約聖書をどう読むか──新約聖書学からのアプローチ」と題し、「どう読むか、聖書──福音の中心を求めて」、「受肉論をどう読むか」、「贖罪を、そして復活をどう捉えるか」、「イエスとパウロ」と、全5回の講義が2時間ずつ行われた。そこでは、福音の中心は「インヌマエル」(神われらとともにいます)にあることや、「十字架につけられたままのキリスト」こそ、まさに「復活のキリスト」なのだといったことについて、次のように語られた。

「イエスは、『十字架の逆説』に通底している『神の無条件で徹底的な赦(ゆる)しの福音』を宣べ伝え、そしてそれを生き抜かれたのであり、それゆえにこそ十字架の死へと追いやられたのです。しかし神は、イエスのその福音とイエスの生の全体に対する『神からの全き肯定』としての『復活のいのち』をイエスに与えられたのです。私たちはしばしば、『イエスは十字架にかかって贖罪の死を死なれたが、3日目には復活された』とか、『十字架と復活によって神の愛は示された』などと一息に言いますが、この『十字架』と『復活』の間の『内的な神学的連関』については、もう一度しっかりと考え抜く必要があるのではないでしょうか」

集中して講師の話に聞き入る受講生たち。

講義の後、青野氏に話を聞いた。

──講師をされていかがでしたでしょうか。

東京バプテスト神学校から招きを受けて、最初はたいへん驚きました。2013年に西南学院大学神学部を定年退任したので、ある程度の時間的余裕があり、ほぼ完全原稿を全員に用意して講義に臨みました。これは自分のためということもありますが、受講生の皆さんが分かりにくかった時に、後でチェックできるようなものを作りたいと思い、かなりの時間をかけて作成しました。皆さんが本当に熱心に聴いてくださって、とても感謝しています。

──講義の中で、大学の神学と教会の神学の乖離(かいり)についても話されました。

大学という時には、もちろん神学部のことを考えていますが、神学部は牧師・司祭になるための場なので、そこで展開される議論は当然、信徒のことを考えて、信徒にも分かる展開がなされるべきなのに、往々にしてそういうことが十分に配慮されないまま、いわゆるアカデミックな議論になり、二つが乖離する結果になっているのではないか、ということです。ただし、それが信徒にとって非常に重要な事柄を展開しているのならば、どんなに難解な論文であっても、それは教会と乖離しているわけではありません。

──神学と教会の乖離をなくすにはどうしたらよいでしょうか。

神学部で学んだ神学生たちは、牧師・司祭となって信徒のところに出ていきます。要するに、大学の神学と信徒をつなぐ橋渡しをするのは彼らです。ですから、彼らが信徒にその意味を伝えるためにも、神学はきちんと意味が通じるものでなくてはなりませんし、彼らも真剣に深く神学を学ばなくてはなりません。キリスト教神学は、主として「教会を通して信徒が生き生きと生きていく助けになる」という意味での聖書解釈なので、そこに重点は置かれるべきでしょう。

青野太潮氏

──青野先生の聖書解釈はしばしば「新しい見方」という言葉で紹介されますが、それについてはどう思われますか。

そうおっしゃっていただくのはありがたいことですが、別に新しい見方をしているわけではありません。聖書に書かれていることを素直に読み取っていく。他の学問における文献学と同じです。聖書に何が書いてあるのか、「教会の信仰」という色めがねをかけないで見ていくと、今までの信仰が突き崩されてしまうようなことが実際には書いてあります。たいていは「これはこういうふうに読むべきです」みたいに教えられていますから、「疑問を抱いたらいけない」と思って読んでいるだけです。ですから、文献学の基本に立ち返って、何が書いてあるのか、まず素直に読むことが大切です。できれば、すでに解釈が入っている翻訳ではなくて、ギリシア語原典をコツコツと読んでいきたいものですが、そうすると、これまでの長い伝統を打ち破るような新しい発見があります。

たとえば、文語訳聖書に「十字架につけられ給(たま)ひしままなるイエス・キリスト」(ガラテヤ3:1)とありますが、ほとんどそれは無視されています(最近の聖書協会共同訳でも「十字架につけられたイエス・キリスト」)。しかし原語のギリシア語では、過去形ではなくて、継続を表す現在完了形の分詞が使われています。そうすると、「十字架につけられたままの状態でいる」ということになります。ただ、あまりにも伝統の力が強いので、それに逆らって何かを言うのは、かなりの覚悟がないとできません。それは、どの共同体でも同じだろうとは思いますが。

私は自分が絶対だなどとは決して思っていませんが、もしも「十字架につけられたままのキリスト」というふうに新しく理解できたなら、もっと僕らは、たとえば自然災害との関わりにおける神理解においても、解き放たれてより自由にされていくのにな、という思いは持っています。

同講座の続編として、12月26、27日には冬期開講講座が行われる。講師は、2018年まで西南学院神学部教授を務め、現在はバプテスト東福岡教会牧師の松見俊(まつみ・たかし)氏。同講座と同じテーマを組織神学の視点から読み解く。

 

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