WCC創立70周年に教皇フランシスコがジュネーブ訪問「自らの利害を優先して教会が分裂した」

 

世界教会協議会(WCC)の創立70周年を祝うため、ローマ教皇フランシスコ(81)は21日、スイスのジュネーブに日帰りで訪問した。

握手する教皇フランシスコとWCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事(写真:Albin Hillert /WCC)

ジュネーブは、ジャン・カルヴァンが宗教改革を行った、プロテスタントにとって重要な都市。そこにローマ教皇が公式訪問するのは、カトリックとプロテスタントなどを橋渡しする重要な意義を持つ。教皇は2016年10月31日の宗教改革記念日にも、スウェーデンでルーテル世界連盟の指導者と共に、翌年の宗教改革500年に向けての記念礼拝に参加した。

教皇はローマのフィウミチーノ空港をアリタリア航空教皇専用機で飛び立ち、午前10時過ぎ、ジュネーブ・コアントラン国際空港に到着。アラン・ベルセ・スイス連邦大統領らが出迎えた。その後、空港の近くにあるWCC本部、エキュメニカル・センターに移動し、記念礼拝に出席した。

記念礼拝には、WCCに加盟する諸教会の代表者およそ230人が出席。教皇は、「霊の導きに従って歩みなさい」(ガラテヤ5:16、25)というパウロの言葉を取り上げてメッセージを語った(以下、「バチカン放送局」参照)。

「歩みには努力が必要。目的地に向かうためには、他の多くの道をあきらめ、迷子にならないよう記憶をよみがえらせ、謙遜(けんそん)に後戻りし、旅を共にする人々を気づかわなくてはならない。その歩みは、いわば絶えざる自己の回心だ。

神はアブラムに、生まれ故郷を離れ、ご自身に信頼して歩むよう召されたが、モーセやペトロ、パウロも、そして主の友であったすべての人々は、歩みのうちに生きた。歩む存在である人間が、自分の中に閉じこもることは、召命に反する。

聖霊の導きに従うとは、この世の虚栄をはね返すことであり、奉仕の論理を選び取り、赦(ゆる)しにおいて前進することだ。過去のキリスト者の分裂を振り返ると、その原因は、共同体内に入り込んだ虚栄のメンタリティーや世俗の論理のためだった。イエス・キリストの代わりに自分たちの利害を優先させ、聖霊の導きではなく肉に従った結果、そこに分裂が生まれた。

WCCがこれまで大きく貢献してきたエキュメニカル運動は、聖霊の恵みによって立ち上がったもの。イエスの御旨に従い、聖霊の導きのもとに歩み始めたエキュメニズムにおいて、自己本位な態度に陥ることがあってはならない。

エキュメニズムのこうした歩みは、自らの共同体だけの関心事を守らないので、この世の目には骨折り損のように見えるかもしれない。エキュメニズムとはいわば『損失の中の大事業』だが、その損失とは、『自分の命を救いたいと思う者は、それを失うが、わたしのために命を失う者は、それを救うのである』(ルカ9:24)とイエスが説いた、福音的な意味での損失だ。

エキュメニズムの歩みの明確な目的は『一致』であり、その反対は、争いや破壊に導く『分裂』の道だ。主は私たちを、平和に導く『一致』の道へと招き続ける」

祝福を祈る教皇フランシスコ(写真:Albin Hillert /WCC)

教皇はその後、17キロほど離れたボセーにあるWCCのエキュメニカル研究所を訪問し、WCC代表たちと昼食を共にした。午後には再びエキュメニカル・センターに戻り、WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事や中央委員らと会談。午後5時半、ジュネーブ空港に直結したパレクスポ・コンベンションセンターでミサを行い、約3万7000人が集まった。こうしてジュネーブでの全日程を終えた教皇は、午後8時、ローマに向けて出発。同日深夜、バチカン(ローマ教皇庁)に戻った。

WCCは1948年に設立された機関で、分裂する教会を統一しようとする「エキュメニズム(教会一致運動)」を推進してきた。ジュネーブ本部に約100人のスタッフを置き、世界各地のプロテスタント教会や正教会などが加盟している。ローマ・カトリック教会は正式なメンバーではないが、約50人のオブザーバーを派遣している。

ローマ教皇のWCC訪問は今回が3回目。1969年にパウロ6世、84年にヨハネ・パウロ2世がそれぞれ訪れている。

 






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