神戸国際支縁機構、トルコ沖地震を支援 孤児への関心が宗教間の対立を取り除く

昨年10月末にトルコ、ギリシャ沖のエーゲ海で、マグニチュード(M)7・0の地震が発生し、トルコだけで100人以上が犠牲になった。その支援活動に当たった神戸国際支縁機構(神戸市垂水区)の理事長・岩村義雄(いわむら・よしお)さんが、今回の被災地での経験について、「キリストはキリスト教だけのものではない」と題した報告書を作成した。

避難所の母と子。(写真提供:神戸国際支縁機構)

神戸国際支縁機構は、2001年に神戸国際キリスト教会(神戸市垂水区)牧師の岩村さんが中心となり、任意団体として設立。11年に社団法人となった。海外ボランティア活動のほか、東日本大震災、九州北部豪雨など国内外の支援活動も展開している。17年には、がんのため逝去した妻・カヨ子さんの名を冠した「カヨ子基金」(英語名「Kayoko Fund」)を設置し、ネパール、バヌアツ、ベトナムなど、海外の被災地で親や住居を失った子どもたちを継続的に支援している。すでに9カ国に児童福祉施設を設置、運営する。

岩村さんらは、昨年11月22~26日に、トルコ西部イズミル県バイラクル地区の被災現場や避難所を訪れ、日本全国から寄せられた手作りマスク約200枚を届け、倒壊したビルなどを視察した。また、イズミル総合市長のソイヤー氏を表敬訪問し、阪神・淡路大震災をはじめこれまで日本が経験してきた被災をとおして、子どもたちの教育の大切さについて1時間にわたって面談。孤児たちのための養護施設建造の協力を求めた。

被災地では、孤児がいないかを尋(たず)ね回り、避難所では霊的ケアをするイスラーム教の聖職者に出会っている。その時の現地のようすを次のように記している。

「家、家族、職場を失った人々の心についてケアするのは、専門家ではなく、もっぱら宗教者に委ねられていました。キュア(治療)は医師が避難所に常駐しています。・・・幼い子どもには、どんな逆境も楽しい場所となります。しかし、食べ物がなくなると、子どももひもじさを乗り越えるためにどんな手段をもとります。大人の責任は大きいです」

ケアに携わるイスラーム教聖職者(写真提供:神戸国際支縁機構)

出国前、イスラム教圏であるトルコについて、テロや新型コロナなどを危ぶむ声があったことや、キリスト教会の牧師がイスラム圏を訪問することを、他の牧師たちから無謀だと言われたことが報告書の中で明かされている。しかし、実際のトルコではそのような心配は全くなく、孤児のためのボランティアに対する歓迎ぶりは想像以上のもので、現地メディアからも取材が相次いだという。

トルコ訪問をとおして岩村さんは、パレスチナ、シリアなど危機を孕(はら)む地域で果たす宗教の役割は大きいと実感したと力を込める。さらに、次のように述べ、孤児への関心が、国家・民族・宗教間の対立を取り除くことを訴える。

「政治家ではなく,民間外交を通じて,働きかけることにより,和解へと歩めるでしょう。とりわけ子どもたちの世界には損得の打算,戦略,狡猾な駆け引きはありません。孤児支援のはたらきは不信の壁を取り除きます」

今後、イスラーム教の宣教師,ユダヤ教のラビとの鼎談(ていだん)も予定しているという。岩村さんたちは、それぞれの宗教の経典を超えた「共生」に向けて、「かたつむりのように,少しずつ,歩み出している」ところだ。

 






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