インタビュー

【インタビュー】日本聖書協会総主事を今年度で退任する渡部信氏

 

今年度をもって日本聖書協会総主事を退任する渡部信(わたべ・まこと)氏に話を聞いた。

──これまでの働きを通してのご感想を。

本当に長いようで短い21年間でした。1998年、日本聖書協会から招聘(しょうへい)状が届いたとき、私は聖書協会の活動についてまったく知らなかったので驚きました。このように教会の一牧師として伝道していた者が、大切な聖書普及事業を任せられ、長きにわたり多くの方にご支援いただいたことを心から感謝しています。3年任期制で何度も契約更新をし、21年間も継続して働くということは、理事会・評議員会、そして職員の協力なくしてはできませんでした。

──印象に残った出来事はありますか。

就任して間もなく、2000年に「聖書普及活動125年記念式典」と「キリスト降誕2000年東京大聖書展」の開催を任されました。東京周辺の諸教会と諸団体のご協力を得て、東京オペラシティを会場に、「大聖書展」では約4万人の方々が訪れてくださいました。特に死海写本の断片5つをイスラエル政府の協力により貸し出していただけたことは奇跡で、この聖書展が最初で最後の大きなイベントだったと思います。

2009年の「日本プロテスタント宣教150年記念大会」も印象に残る一つです。前回の100周年大会は日本キリスト教協議会(NCC)が主催したのですが、それ以降、プロテスタント教会は大きく3つに分かれてしまい、協力関係を失いました。そこでNCC系と日本福音同盟(JEA系)、日本リバイバル同盟(NRA系)の代表者に相談し、聖書協会が事務局を担って、2日間で約2万人の方々が一緒になって信仰宣言を行うことができたことは感謝でした。私たちの主は「キリストにあって一つ」であることを証ししたモニュメント的出来事だったと思います。

2018年の新翻訳聖書(聖書協会共同訳)完成も、15年にわたるプロジェクトでしたが、「今後、学識者や人材の育成、財政力を伴うこのような翻訳事業は当面できないかもしれない」という危機感があったので、大きな事業だったと思います。特に150人近い翻訳作業に携わった先生方には感謝しています。

昨年、広島での9条世界宗教者会議で

──聖書翻訳事業で苦労したことは?

日本聖書協会は、ほかのキリスト教会や団体と同様、戦後、海外からの支援金で運営されていました。1969年に経済的に独立しましたが、順風満帆ではありませんでした。聖書館ビルの建つ銀座は借地でしたし、1階の書店もテナントに貸し出し、事務所スペースを縮め、関西支社も閉鎖し、また不動産を売却した時代もあります。その結果、私が就任する直前の1997年に日本聖書協会は、聖書館ビルの底地を国から買い受ける決断をしました。

その翌年に総主事となった私が最初に始めた仕事は、3億円を目標とする「聖書普及事業開始125年記念募金」でした。毎月第2月曜日には祈祷会を開き、役員と職員が一丸となってその達成に努め、赤字体質から黒字体質に変えていきました。ともすると法人の財政は、赤字の責任を誰も取らないまま放置されやすいのです。本来の使命を達成するためには、公益部門と収益部門のバランス、そして人件費、運営経費、事業費の均等なバランス、この財政規律を遵守することを聖書協会の黄金律としてきました。

2011年の東日本大震災の後、聖書館ビルから大きなテナントが退室しました。築86年を経たビルなので、耐震補強工事もきちんと行っていましたが、まったく借り手がない状態が1年間続き、困ってしまいました。そんな財政破綻直前に、「ぜひ貸してほしい」との依頼が舞い込んできたのです。神様はご自身の御言葉、聖書普及事業を守られること、私たちの祈りに応えてくださり、すべてが主のご計画の内にあることを知ることができ、心から感謝しました。

──聖書普及事業の中で腐心されたことは?

聖書は万人に届けるものですから、教派の垣根や地域を超え、また世界の国々にも聖書頒布活動は及びます。現在まで、「新共同訳」だけでも約1300万部頒布されました。また、「聖書と音楽の出会い」プログラムを17年間かけて47都道府県で開催し、地方の教会の方々との連携を大切にしてきました。海外支援についても、過去20年間で約80カ国に約6億円、日本ろう福音協会には1億円近い献金を行いました。これらは皆さまからのご協力なしには実現することができませんでした。

最近では、文書伝道の灯りを絶やさないためにキリスト教書店に注力したり、キリスト教視聴覚業務の支援、「クリスチャン・プレス」の設立など、微力ながらメディアを通して将来のキリスト教界の発展につながることを願い、補完的な役割も考えています。

2012年、公益財団法人から一般財団法人へ移行したことも大きな決断でした。欧米のように献金だけでは成り立たない日本の聖書普及事業ですので、収益事業がなければ聖書協会そのものが消滅してしまいます。そのため、一般財団法人移行後は、多額の公益目的支出額を生み出せるような方法で聖書普及事業を進めなくてはなりません。より企業的なセンスが求められる時代となりました。

米国「クリスチャニティー・トゥデイ」訪問時。左から渡部氏、社長のハロルド・スミス氏、右端が理事長のジーン・ハーベッカー氏。

──キリスト教ニュース・サイト「クリスチャン・プレス」を始めたのはなぜですか。

3年前の米大統領選で「フェイク・ニュース」や「ツイッター」という言葉を聞いたとき、メディアの危機を感じました。ソーシャル・メディアは便利であると同時に、だれでも匿名の発信者になり、受信者になりうる危うさもあるからです。

「クリスチャン・プレス」は、「あいさつ」や「報道理念」にあるように、教派を超えた、偏見のない、正確性のある報道機関の必要性を痛感して創設したものです。1年間で、微力ながら月6万以上のアクセスがあるサイトに成長しました。時間や手間を考えても、ウェブ上の広がりには印刷物はとてもかないません。多くの方々に毎日、「クリスチャン・プレス」ならではの情報をお届けする所存です。皆さまの応援をお願いしたいと思っています。

──最後に、次世代へ贈る言葉を。

「10年ひと昔」から「3年ひと昔」へと、社会の変化する速度は増しています。私は8年間にわたり聖書協会世界連盟の理事として世界の国々を見てきましたが、各国の成長は驚くほどに速く、どこの国の人々もたくましく必死で生きています。私は戦後すぐに生まれた団塊世代なので、貧しい時代も、高度経済成長期のモーレツに働いた時代も、バブル経済がはじけて失敗した時代も、デフレによって失われた20年も、急速に進むITといったデジタル時代も見てきました。そんな私の目からは、日本は内向きのガラパゴスと化して、世界から取り残されようとしているように見えます。

私の言動はラディカルすぎるかもしれませんが、特に若い方々には海外に出て、世界のスピード基準に追いつくように頑張ってほしいと思います。神様はどのような境遇の時代でも「御言葉」によって処する力を与えられると信じるからです。

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